トム・ホランドだけではない!ニコラス・ケイジのスパイダーマンもお忘れなく!『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の監督がスパイダーマン映画の可能性を広げる?
『スパイダーマン:ブランド・ニューデイ』の予告がついにリリースされました。この予告から読み取れることはまた後日書くとして、今回は他のスパイダーマン映画にまつわる話題をとりあげようと思います。
ちなみに『スパイダーマン:ブランド・ニューデイ』の予告編がこのタイミングで発表されたのは、SF映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の公開にあわせたと言われています。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は大変すばらしい作品でした。
本作の中身もさることながら、ここで注目したいのはこの映画のメガホンをとったフィル・ロード&クリス・ミラーという監督コンビです。というのも彼らが今後のスパイダーマン映画まわりのキーマンになっていく可能性が高いのです。
このコンビはスパイダーマンのアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』(原題・2027年公開予定)の監督でもあり、もうすぐ配信されるニコラス・ケイジ出演のスパイダーマン系ドラマ『スパイダー・ノワール』のショウランナーです。
いみじくもソニーピクチャーズ(SPE)の幹部トム・ロスマンが「『ヴェノム』等これまでSPEが作ってきたスパイダーマン系の映画群であるSSUを新体制で仕切りなおす」と発言しており、恐らくこの新体制とは“フィル・ロード&クリス・ミラーの下で”と思われます。
というわけで今回はこうしたスパイダーマン系映画のふりかえりと今後について考察してみましょう。なおこのコラムの内容はSPE等から公式発表されているものではありません。あくまで筆者の考察です。
スパイダーマンはディズニー/マーベルではなくソニーの映画
先ほど“スパイダーマン系の映画群であるSSU”という書き方をしましたが、まずここからおさらいしましょう。スパイダーマンはマーベル・コミックのキャラクターであり、SPEはスパイダーマンおよびスパイダーマンのコミックに出てくるキャラクターの実写映画化権を持っています。
しかしながらマーベル本体はディズニー傘下の会社となり、ディズニー/マーベルはアベンジャーズを核とするMCU/マーベル・シネマティック・ユニバースを展開しています。実はSPEがスパイダーマンの映画化権を手に入れたのはマーベルがディズニーグループになる前だったのです。だからSPEはMCU以前にトビー・マグワイヤの『スパイダーマン』3作、MCUと並行する形でアンドリュー・ガーフィールドの『アメイジング・スパイダーマン』2作を公開します。
従ってコミックではスパイダーマンとアベンジャーズが共演しますが、映画ビジネスの方ではスパイダーマンはSPE、アベンジャーズはディズニーなので一緒になることはできなかった。でもファンとしてはスクリーンでスパイダーマンが他のヒーローと共演するところを観たいですよね。
そこでSPEとディズニー側が話をして、実写のスパイダーマンはビジネス的にはSPEのものですが、MCUのヒーローの一人としてMCU映画にも出演できるようになりました。
逆にSPEの作るスパイダーマン映画にはMCUのキャラが登場することも可能になりました。その最初の試みがMCU『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』でした。スパイダーマンことピーター・パーカーを演じるのはトム・ホランドです。
以後、このトム版のスパイダーマンは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『スパイダーマン:ホームカミング』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に登場します。
物語的にはどれもMCUの話ですが、商売的には『スパイダーマン~』とつく作品はSPEの映画、それ以外はディズニー映画なのです。言い方を変えればSPEはトムホのスパイダーマンをMCUに派遣させている形になります。
【動画】トビー・マグワイア版スパイダーマン
【動画】アンドリュー・ガーフィールド版スパイダーマン
【動画】マルチバースを超え、トビー、アンドリュー、トムのスパイダーマンが共演した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
MCUとSSUという2つのマーベル映画世界
あくまでこれは実写映画におけるお約束事なので、
①スパイダーマンのアニメ映画についてはSPEはMCUとは別に自由につくることができる
②スパイダーマンのコミックに登場するキャラの映画化権もSPEはもっているのでそれらの実写映画化もMCUとは別に展開することが可能なわけです。
この①の方針で作られたのが『スパイダーマン:スパイダーバース』を起点とするアニメ映画であり、②の路線で生まれたのがトム・ハーディ出演の『ヴェノム』を皮切りとする映画群です。
【動画】SSUを代表する『ヴェノム』シリーズ
『ヴェノム』以降は『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』『モービウス』(ジャレッド・レト主演)『マダム・ウェブ』(ダコタ・ジョンソン出演)『ヴェノム:ザ・ラストダンス』『クレイヴン・ザ・ハンター』(アーロン・テイラー=ジョンソン出演)となります。わかりやすく言うと「ウルトラマンを登場させないでバルタン星人が主役の映画を作る」みたいなシリーズです。
この②の路線はMCUと区別するためSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)と呼ばれます。ちなみに『モービウス』ぐらいまではこれらはSPUMC(ソニー・ピクチャーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター/Sony Pictures Universe of Marvel Characters)とも呼ばれていました。
実際、当時筆者が書いたコラムを読み返してみるとSPUMCという言葉を使っています。将来的にスパイダーマンを登場させたいという思いからSSUというくくり方にしたのかもしれません。ただSSUのこの6作は『ヴェノム』シリーズを除いて興行的にもふるわなかったので、ここを見直したいというわけです。
SSUのキーマンが変わる?
SPEのスパイダーマン映画およびSSUのキーマンの一人がアヴィ・アラッドというプロデューサーです。
彼はもともと「トイビズ」というおもちゃ会社のCEOで、「トイビズ」がマーベルのアクション・フィギュアを出していたことからマーベル・エンターテインメントの要職につき、マーベルの映画部門マーベル・スタジオを立ち上げた人物。したがってMCUが本格化する前の初期のマーベル原作映画(20世紀フォックス版のX-MENやファンタスティック・フォー)、トビー版&アンドリュー版スパイダーマン、『アイアンマン』までは関わっています。
マーベル・スタジオ自体はこの後ケヴィン・ファイギが仕切っていくわけですが、アヴィ・アラッドはスパイダーマン映画にはその後関わり続けています。なのでトビー版&アンドリュー版スパイダーマンが、マルチバースという設定を使ってトム版スパイダーマンと共演するMCU映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のエンド・クレジットにアヴィ・アラッドへの謝辞が出るのは、彼がやはりスパイダーマン映画の実現に対し貢献した人物だからです。
従って一連のSSUも彼がプロデュースしています。この先もなんらかの形で関わるでしょうが、やはり事実上のキーマンはフィル・ロード&クリス・ミラーに移っていくと思います。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の成功でこの2人の評価および業界への影響力は増すでしょう。さらにこの2人がアニメ『スパイダーバース』シリーズを成功させているのに加え『スパイダーノワール』を任されているというのが大きなポイントです。筆者はこの『スパイダーノワール』にこそ次のSSU成功の鍵があると思っています。
スパイダー・ノワールがSSUを成功に導く?
『スパイダー・ノワール』とは、Prime Videoにて5月27日から配信予定の実写ドラマです。我々の知る世界や今までのMCUとSSUとは別の世界(別バース)の、1930年代のNYを舞台に、蜘蛛の力を持ったハード・ボイルドな私立探偵が活躍する犯罪アクション。2009年に刊行されたコミック「スパイダーマン・ノワール」がベースです。
ここでいうノワールとは1940-50年代のハリウッドで作られたフィルム・ノワールというジャンルに由来します。モノクロの犯罪映画、ハード・ボイルド映画、ギャング映画等の総称です。
マーベルは自分たちのキャラがもしこういうフィルム・ノワールの世界にいたら、という発想でコミックのミニ・シリーズを展開。そこで生まれたのがこの「スパイダーマン・ノワール」だったわけです。従ってカラーではなく白黒コミックの形で発表されます。そして2018年のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の中にこのノワール版のスパイダーマンが登場。その時声を担当していたのがニコラス・ケイジです。
今回の『スパイダーノワール』はこのアニメで再び注目されるようになった“ノワールなスパイダーマン”に着想を得て、ニコラス・ケイジ出演で新たに実写ドラマ化しようという試みです。
【動画】『スパイダーノワール』予告編(カラーとモノクロの2バージョンで配信)
ドラマ自体楽しみですが、ここで期待したいのはこの『スパイダー・ノワール』が成功したらSPEとフィル・ロード&クリス・ミラーはこうしたスパイダーマン物を次々と展開していくのではないかということです。
アニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズのおもしろさは、様々な世界にその世界(バース)毎のスパイダーマンがいる、ということです。すでにこのアニメではスパイダーグウェン、スパイダーマン・インディ、スパイダーパンク、スパイダーマン2099、スパイダーウーマン等の魅力的な“スパイダーマンたち”が登場しています。
彼ら一人一人を主人公にした実写ドラマないし映画が作られてもおかしくありません。MCUに登場するのはあくまで“ピーター・パーカーがその正体のスパイダーマン”ですから、それとは違うスパイダーマンなら混乱しないでしょう。
またヒーロー名(タイトル名)を今回のように『スパイダーマン・ノワール』ではなく『スパイダー・ノワール』みたいにすれば(つまり“スパイダーマン”とうたわなければ)問題ないでしょう。
期待したい実写版スパイダーグウェン
そうかつてのSSUがスパイダーマンのコミックに出てくる様々なヴィランを軸に展開したのであれば、新しく始まるとされるSSUは様々なバースのスパイダーマンで作られていくのではないかということです。
個人的に期待したのがスパイダーグウェンの実写版。これはある世界ではピーター・パーカーではなく彼のソウルメイトであるグウェン・ステーシーが“スパイダーマン”として活躍しているという設定です。
このグウェンというキャラはアンドリュー版の『アメイジング・スパイダーマン』2作ではエマ・ストーンが演じ(この映画では彼女はスパイダーグウェンにはなりませんが)、アニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズではヘイリー・スタインフェルドが声をあてています。
【動画】『スパイダーマン:スパイダーバース』に登場するスパイダーグウェン
実写化されたらこの2人のどちらかにぜひこの役を演じてほしいです。
いかがだったでしょうか?今年は『スパイダーノワール』が配信され、夏にはMCU版/トム・ホランド版最新作『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026年7月31日日米同時公開)、来年は『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース(2027年6月18日全米公開予定)』とスパイダーマン・ブームです。
また、トム・ハーディも参加するヴェノムのアニメ映画の噂もあります。こうした中、新たなるSSUの発表を待ちたいです。ちなみに筆者はSSU6作の日本語吹替版の監修をさせていただきました。なのでこのSSUというシリーズにとても思い入れがあるのです。
杉山すぴ豊 アメキャラ系ライター
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