【カンヌ国際映画祭2026】「ある視点」部門でオーストリア映画『Everytime』が最高賞――岨手由貴子監督は惜しくも受賞ならず
現地時間5月22日(金)、第79回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査結果が発表された。今年はオーストリア映画『Everytime(原題)』が最優秀作品賞、ネパールのトランスジェンダー映画『Elephants in the Fog(原題)』が審査員賞に輝いた。
「ある視点」部門は、新鋭の作家や革新的な作品にスポットを当てている。日本からは岨手由貴子監督の『すべて真夜中の恋人たち』が出品されたが、惜しくも受賞を逃した。

カンヌ「ある視点」部門結果発表!オーストリア映画『Everytime』が最高賞
最優秀作品賞を受賞した『Everytime』は、オーストリアのサンドラ・ウォルナー監督による、喪失をテーマにしたヒューマンドラマ。夏休み中を過ごしていた一家がある悲劇をきっかけに、大きく変化していく人生や家族関係に向き合う姿を描いている。
同部門の審査委員長を務めた俳優レイラ・ベクティは、同作について「悲しみという生々しい体験を描いた作品で、私たちの心を深く揺さぶった」と称賛した。
ウォルナー監督は、「一風変わったアイデアを守り続けてくれる、映画業界の人々に感謝します」とスピーチ。「AIが“似たようなもの”を大量生産するために使われる時代だからこそ、いつまでも心に残るような、どこか突飛で心に残る発想を追い求め続けたい」と語った。
審査員賞を受賞した『Elephants in the Fog』は、アビナッシュ・ビクラム・シャー監督の長編デビュー作。ネパールで法的に認められている「第三の性」に属する人々のコミュニティを通じて、南アジアにおけるトランスジェンダーの受容を描いている。
審査員特別賞には、ルイ・クリシー監督による手描きアニメーション映画『Iron Boy(原題)』が選ばれた。フランスの田舎町に暮らす11歳の少年が主人公の作品で、この映画祭期間中にソニー・ピクチャーズ クラシックスが北米・中南米の配給権に加え、インドおよび東南アジアのテレビ放映権を獲得した。
クリシー監督はピクサーで長年アニメーターとして活躍しており、『ウォーリー』(2008年)や『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009年)などに参加した。本作が単独監督デビュー作となる。
最優秀男優賞は、ラフィキ・ファリアラ監督作『Congo Boy(原題)』で主演を務めたブラッドリー・フィオモナ・デンベアセットが受賞。内戦下の中央アフリカ共和国において、音楽で成功を夢見る才能豊かな少年を演じた。
最優秀女優賞は、コスタリカを舞台にした家族ドラマ『Siempre Soy Tu Animal Materno(原題)』のマリナ・デ・タビラ、ダニエラ・マリン・ナバロ、マリアンヘル・ビジェガスの3人が共同受賞を果たした。
また、今年のカンヌで大きな話題を呼んだジョーダン・ファーストマン監督作『Club Kid(原題)』は受賞を逃した。一方で、同作は批評家から絶賛され、A24が1,700万ドル(約27億円)で買い付けるという大きな成果を挙げた。そのため、審査員は「すでに十分な成功を収めている」と判断したのかもしれない。
▼第79回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 受賞結果一覧
■ある視点賞(最優秀作品賞)
『Everytime』サンドラ・ウォルナー監督
■審査員賞
『Elephants in the Fog』アビナッシュ・ビクラム・シャー監督
■審査員特別賞
『Iron Boy』ルイ・クリシー監督
■最優秀男優賞
ブラッドリー・フィオモナ・デンベアセット(『Congo Boy』)
■最優秀女優賞
マリナ・デ・タビラ、ダニエラ・マリン・ナバロ、マリアンヘル・ビジェガス(『Siempre Soy Tu Animal Materno』)
※為替レートは2026年5月23日時点の数値で換算しています。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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