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【レビュー】『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』興行収入100億円突破!なぜハマる?ちいかわ初体験だからこそ衝撃だった“かわいいと残酷”な世界【※一部ネタバレあり】

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『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』レビュー
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』 写真: chiikawa.toho-movie.jp
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「これは考察系ホラーだ」。SNSでたまたま見かけた感想が気になり、軽い気持ちで『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を7月24日公開週に観に行った。

ちいかわといえばLINEスタンプを愛用しているだけで、誰がちいかわなのかも分からない新参者。そんな筆者が、映画館を出る頃には「ちいかわ」の世界にすっかり心を奪われてしまったのだ。

気づけばLINEスタンプを追加購入し、ちいかわパークに行く予定も立て、映画館へ3回も足を運んでしまった。

原作を一度も見たことがなかった筆者を、ここまで夢中にさせたものは何だったのだろう。

かわいさの中に漂う不穏さ、何度も観たくなる巧みな伏線回収、そして大人だからこそ突き刺さる罪の重さと残酷さ。知識ゼロだったからこそ見えてきた、『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が持つ底知れない魅力に迫っていきたい。

※この記事は『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の一部ネタバレを含んでいます。

“ちいかわ旋風”が日本の夏を席巻!興行収入100億円突破へ

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が日本の夏をにぎわせている。7月24日公開から24日間で観客動員数645万人、興行収入92.8億円を記録し、ついに100億円の大台を突破した。

オリジナル・サウンドトラックは、初登場から4週目にして総合1位を獲得。映画のサントラが1位に輝くのは、『天気の子』以来7年ぶりの快挙になる。

その熱気はSNSにも広がっている。なかでも目を引くのが、映画をきっかけに初めて「ちいかわ」の世界へ足を踏み入れた大人たちだ。それぞれの考察や解釈を交わし、議論を繰り広げている。

ちいかわ初体験!いざ未知の世界へ「大人だけで観に行ってもいいの?」

「ちいかわ」は、イラストレーターのナガノ先生が2020年からXで連載をスタートした人気漫画。初の映画化となる本作は、原作ファンから高い人気を誇る長編エピソード「セイレーン編」を描く。

初めて「ちいかわ」を観た日は劇場に入る瞬間からいつもとは違う感情だった。その日は公開初週だったこともあり、ちいかわグッズを身に着けた原作ファンがたくさんいた。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』公式Xより
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』 写真: @chiikawa_movie / X

「そんな聖地に何も知らない自分が足を踏み入れてもいいのだろうか。どんなを表情をして席に座ればいいんだろう」禁断の世界に足を踏み入れるドキドキ感は不思議と心地良いものだった。

この胸が高鳴るドキドキ感こそ、大人たちがこぞって『映画ちいかわ』へ足を運びたくなる理由のひとつなのかもしれない。

「大人だけで観に行ってもいいのか」と少し気後れする気持ちとともに劇場の扉を開いてみると、そこには大人になった自分と対峙させられる世界が待っていた。

鑑賞後にゾワッとする!『映画ちいかわ』に潜む底知れぬ闇

ちいかわたちは、「特別な島へご招待」と書かれた招待状に惹かれて島へ向かう。そこで巨大なセイレーンが島民たちを次々と連れ去っている事実を知る。こうして、ちいかわたちはセイレーンの討伐計画に巻き込まれていくのだった。

かわいらしい冒険物語だと思っていると見事に裏切られる。ラストや伏線の意味を知った瞬間、それまで見ていた景色が一変する傑作ミステリーだった。かわいいだけだと思っていた世界から、さまざまな神話や寓話など別の顔が浮かび上がってくるのだ。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』 写真: @chiikawa_movie / X

ちいかわたちが島民から歓迎を受ける光景は『ミッドサマー』に見えるし、島民をめぐる事件は禁断の果実をめぐる「アダムとイブ」の物語が重なり、歌が得意なセイレーンはギリシャ神話の怪物が頭をよぎる。

景色が一変するのは物語全体だけではない。何気ないセリフや行動にまで、巧みな伏線が仕掛けられている。船酔いしたちいかわのために、ハチワレが「炭酸ありませんか?」と島民にお願いするシーンにも意味が隠されていて鳥肌が立つ。こうした巧妙な伏線が随所に仕掛けられているからまったく油断できない。

ヒトハとフタバはどんな関係? かわいい世界で突きつけられる「罪悪感」

『映画ちいかわ』を観て驚いたのは、かわいいらしい世界で「罪悪感」という重い感情を正面から描いていることだった。

そのカギを握るのが島民のヒトハとフタバだ。2人の過去が少しずつ見えてくると、罪はバレなくても、自分自身の良心からは逃げることができない残酷さがあぶり出されていく。

罪悪感を抱えながら生き続けることがどれほど苦しいことなのかは、後悔や失敗を経験した大人には痛いほどわかるだろう。そして消せない過去や罪を抱えたまま、どう自分自身と折り合いをつけて生きていくのかをヒトハとフタバを通して突きつけてくるのだ。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』 写真: @chiikawa_movie / X

さらに興味深いのはヒトハとフタバの関係性だ。ちなみに公式で2人の関係について「島民。いつも一緒にいる」とだけ紹介されている。

身寄りのない家族なのか、それとも友人なのか。観る人によっては、失いたくない大切な誰かを2人に重ねるのかもしれない。ヒトハとフタバの関係性をどう受け取るかによって、同じできごとでも違った痛みを帯びはじめ、ラストのやるせなさもまた深くなっていく。

誰もが一度は抱えたことのある罪悪感や大切な誰かを思う気持ち。そんな人間くさくて残酷な感情が、大人になった今だからこそ心に刺さってくる。

残酷だけど、やっぱりかわいい!ハチワレの「なんとかなれー!」に癒される

罪悪感や伏線について語ってきたが、やっぱり『映画ちいかわ』はとびきりかわいい。

ちいかわ初体験の筆者が心をつかまれたのが、ちいかわの親友ハチワレの「なんとかなれー!」だ。セイレーンとの戦いで絶体絶命のピンチを迎えたとき、「なんとかなれー!」と飛び込んでいくハチワレが最高にかわいかった。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』 写真: @chiikawa_movie / X

「なんとかする」のではなく「なんとかなれ」という言葉にも惹かれる。できることをやったら流れに身を委ねる、そんなユルさをハチワレが思い出させてくれる。

そして、もうひとり忘れられないのがシーサーだ。島で大事件が起きているときに、くりまんじゅうとバカンスを満喫している。海にぷかぷか浮かびながら、空に向かって「最高の旅でーす!」と叫ぶ姿には思わず笑ってしまう。何度でも観たくなる最高のハイライトだ。

何を隠そう、3回目の鑑賞を決めたのもハチワレとシーサーの言葉をもう一度スクリーンで味わいたかったからだ。

知識ゼロで挑んだ「ちいかわ」だったが、伏線にゾワッとし、罪悪感や人生について考え、ハチワレとシーサーの生き方に癒されるとは思ってもいなかった。

かわいいだけでは終わらない、ちょっぴり怖くて、とびきり愛おしい「ちいかわ」の世界をこの夏体験してみてはいかがだろう。

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