【独自取材】アカデミー団体からベテラン幹部の1人が離脱へ 組織のトップ陣がZoomで本音を語る
映画芸術科学アカデミーの幹部、パトリック・ハリソン氏が団体を離れることが米THRの取材で明らかになった。1991年に団体のアシスタントとしてキャリアをスタートしたハリソン氏は、2001年以来団体のメンバーとして活躍してきたベテラン。2022年には、VP関係やグローバル展開に携わるポジションに昇進を果たしていた。
ハリソン氏の脱会は、アカデミーCEOのビル・クレイマー氏と会長のジャネット・ヤン氏により、ニューヨーク都市圏の団体メンバーに向けてメールで報告された。メールには「秋にハリソン氏の代理人が団体を離れたことは、周知のことと存じます。そしてここに、休職中だったハリソン氏の脱退をお伝えします」といった内容が記されていた。
31日、クレイマー氏に加え、ヤン氏とニューヨーク都市圏のメンバーの間でZoom会議が行われた。ミーティングには、オスカー受賞歴を有する脚本家ジェフリー・フレッチャー氏をはじめ、俳優のダナ・アイヴィ氏や団体のヴァイスプレジデントらが出席。主に、アカデミーの間では著名な人物だったハリソン氏の離脱について話し合いがなされた。
一部のメンバー間では、ハリソン氏がこれまで姿を消していたことに対するトランスペアレンシーの欠如について、不満の声が噴出。クレイマー氏によると、情報提供の範囲には限りがあるという。また、ヤン氏は問題の対処の不手際について認めつつ“ポジティブな改革”を匂わせた。一方で、この件に関してハリソン氏はコメントを出していない。その他、ハリソン氏が不在の間、ニューヨーク都市圏のオペレーションをロサンゼルスの幹部が担当していたことも議論された。
ニューヨークには中心となるアカデミーの“ホーム”がないことも問題に。2015年に、シアターやハリソン氏のオフィスが入っていたレンタル物件が売却されて以来、メンバーが定期的に集まれる場所が定まっていないという。現在は、MoMAの高額な試写室や、小規模なDolbyの試写室を借りて使用している状況だそうだ。
先週のメールで、アカデミーは“他の場所を探している”と伝達。最近、アカデミーはトライベッカにある“Spring Place”という多目的スペースと契約、今後ミーティングの拠点として使用してく予定だ。他にも、試写会や、トライベッカ映画祭に合わせたスポンサーイベントを開催する。(すでに今年のオスカーの鑑賞会をこの場所で開いたが、前年と比べダウングレードしたという声も一部で囁かれた。)また、トライベッカは夜間は荒涼とした地域で、交通手段にも乏しいという懸念から、より広範な選択肢が必要だったという意見もある。
今回のZoom会議で、クレイマー氏とヤン氏はすべての決定は撤回不可能であり、ハリソン氏と代理人の後継者を探している途中だと主張した。4月には、クレイマー氏が直接ニューヨークへ足を運び、メンバーと面会する時間を設けるという。
米THRの取材に対し、クレイマー氏は「我々にとって非常に重要なNYコミュニティーの懸念に耳を傾け、必要とされる変化を起こしていく。そしてNYのリーダーシップ委員会を再活性化し、メンバーと対話を重ねていかなければならない。試写会やイベントを復活させたり、特定のミーティング場所を設けることで、NY支部の存在感を増していくようにする。さらに、NYオフィスでの人員配置も進めている」とコメントを寄せた。
オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌