是枝裕和監督、「怪物」で坂本龍一さんの思い胸にカンヌへ「素晴らしい映画になったと確信」
第76回カンヌ映画祭のコンペティション部門に選出された是枝裕和監督の「怪物」(6月2日公開)の完成披露試写会が8日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた。是枝監督は脚本の坂元裕二氏、出演の安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、中村獅童とともに舞台挨拶。「とても光栄です。参加できない人の分まで楽しんできたい」と抱負を述べた。
参加できない人の1人が音楽を手掛けた坂本龍一さん。是枝監督は3月28日の死去後、初めて口を開き「本当に残念ですけれど、こういう形でご一緒できたのは自分にとっての誇り。それ以上に作品にとって、坂本さんの音楽が必要だったと誰よりも自分が思っている」と悼んだ。
もともと「撮影場所が諏訪湖(長野県)に決まり、風景が明快になった時から、この湖に坂本さんの音楽が響けばいいなと思っていた」という。そこで編集の際、既存の曲を仮に当てた映像に手紙を添えてオファー。坂本さんからは「とても面白くて、何曲かイメージが浮かんでいる。作ってみるので、良かったら使ってください」と快諾の返事が届いたという。
がんとの闘病中だったため新曲はピアノ曲2曲だけだったが、了承を得て今年1月に発売した最後のアルバム「12」の曲や仮当てしていた曲などで全体を構成。「映画を見て作っていただいたのではと思えるほどマッチしていて、作品の中から聴こえてくるような存在。本当に感謝しています」としみじみ話した。
坂本さんは、映画初出演でその条件として音楽を手掛けた大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」でカンヌに初めて参加。そこで紹介されたベルナルド・ベルトルッチ監督とのタッグにつながった思い出の地だ。是枝監督にとっては7度目のコンペで、18年「万引き家族」以来となる、日本人では今村昌平監督に次ぐ2人目の2度目のパルムドール(最高賞)の期待がかかる。「本当に特別なものが映っている映画。いいチームができて、素晴らしい映画になったと確信している」と戴冠への自信ものぞかせた。
安藤は「万引き家族」の公式上映に立ち会ったが、NHK朝のテレビ小説「まんぷく」の撮影中だったため日本にトンボ返りだったため「今度はしっかり、じっくり味わおうと思う」と期待に満ちた笑顔。11年「一命」以来2度目の参加となる永山も「一生で何度も行ける所ではない。堪能したい」と声を弾ませた。
是枝監督が、坂本さんの思いも胸に抱き旅立つカンヌ映画祭は16日に開幕する。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元