役所広司「PERFECT DAYS」でカンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞
第76回カンヌ映画祭のコンペティション部門の審査結果が27日発表され、ヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」(原題)に主演の役所広司(67)が最優秀男優賞を受賞した。日本人では04年「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶりの快挙となった。
「僕は賞が大好きです。でも、こんな華々しいカンヌ映画祭でスピーチするのはあまり好きじゃない」。冗談交じりのスピーチの第一声はあまり受けなかったが、「カンヌと審査員の皆さん、映画を見てくださったお客さん、本当にありがとう」と喜びを語ると、会場からは割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。
「PERFECT DAYS」は、東京都渋谷区の公共トイレを改修する「TOKYO TOILET PROJECT」の世界発信の一環として製作された作品。役所は淡々とした日々に満足しながら黙々と仕事に励むトイレ清掃員の平山を演じた。役名は、ヴェンダース監督が敬愛する小津安二郎監督の「東京物語」などでの笠智衆さんの役から引用したものだ。
「ヴェンダース監督と脚本の高崎卓馬さんが、平山というとても魅力的な男を書いてくださった。撮影現場では監督とカメラマンのフランツ・ラスティグさんが導いてくれました。作品に参加したスタッフ、キャストと心配ばかりかけている僕の事務所のスタッフ、そして妻に感謝したいと思います」。さらに歓声のボルテージが上がる中、「これ、もらって帰ります」とトロフィを大事そうに抱えた。
授賞式後の日本プレス向けの会見では、「やっと柳楽くんに追いついたかな」とおどけながら喜びを表現。1997年「うなぎ」では先に帰国していた今村昌平監督に代わりパルムドールを受け取ったが、「今回は壇上から見ていると、ヴェンダース監督やスタッフが本当に喜んでくれていたのがうれしかった。一緒に分かち合えたとても大切な受賞でした」と笑顔で話した。
これまで数多くの男優賞を受賞しているが、「皆さん言いますが、この賞に恥じないよう頑張らなければいけないと改めて思います」と新たな意欲を示した。そして、「いろいろな国の映画で自分の表現が役に立つ作品があれば参加したいと思っている。でも、基本的には自分たちの国の映画で世界中の人に楽しんでもらうことが一番の早道だと思っています」と、日本映画の発展を望んでいた。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元