『落下の解剖学』脚本家2人が語る、犬との撮影、結末の意図「本作の核心は…」
本年度アカデミー賞の有力候補となっている映画『落下の解剖学』(公開中)。複雑かつ強烈な夫婦関係を描いた本作の共同脚本を手がけたのは、ジュスティーヌ・トリエ(監督も兼任)とアルチュール・アラリだ。
実生活でもパートナー同士の2人が、米『ハリウッド・リポーター』に対し、本作の構想、法廷シーン&犬との撮影の苦労話や、観客の間で意見が二分した結末などについて語ってくれた。
【※以下、作品の内容に触れる記述が含まれています。】
本作は、小説家のサンドラ(演: ザンドラ・ヒュラー)が、屋根裏部屋の窓から落下し死亡したとみられる夫サミュエルの殺害容疑をかけられるという物語だ。
トリエによると、本作の物語は2つのアイデアから書き上げられたという。
「1つは、夫婦関係とその複雑さを掘り下げるということ。もう1つは、母と息子の関係を描きながら、本当の母親の姿を理解しようとする子の姿を描きたかったのです。裁判のアイデアは、これらの考えを結び付けるために後から思い付きました」
「何度も撮り直し」制作上の苦労
またトリエは、厄介だったという裁判シーンについて、英語に上手く当てはまらないフランス語の表現があり、しばしば翻訳によって意味が失われてしまうこともあったと明かした。
しかし、2人が直面した困難は裁判シーンだけではなかった。主人公家族の飼い犬スヌープとの撮影は、技術的な面でも難しかったそうだ。
スヌープのボールが階段から転がり落ちるシーンについて、トリエは「何度も撮り直しました。やがて、犬がボールを拾えるような速度と停止位置にするために、ボールを接着剤に浸して落ち方を変えるという解決策にたどり着いたんです」と語った。
結末と本作の核心とは?
そして、夫はサンドラに殺されたのか、はたまた単に窓から転落死したのか、世界中で意見が割れている死の真相について、アラリは以下のように思いを明かした。
「可能な限り、曖昧な結末になるように作りました。というのも、本作の核心は、真相が永遠に分からないことを悟った子供が、本物のジレンマに陥ってしまうという点にあるからです。そのことは、彼を非常に苦しめます。私たちは、観客を彼と同じ立場に置かなければならなかったのです」
※初出は米『ハリウッド・リポーター』(2023年11月16日号)。本記事は抄訳・要約です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌
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