ユダヤ系セレブたちがカニエ・ウェストに抗議する内容のディープフェイク動画が話題に

カニエ・ウェストに有名人が抗議
問題の動画に登場するディープフェイクのD・シュワイマー
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意外な形でハリウッドのセレブたちがカニエ・ウェストの反ユダヤ主義的主張に対抗し、一致団結する形となった。

デヴィッド・シュワイマー、スティーブン・スピルバーグ、ジェリー・サインフェルド、アダム・サンドラースカーレット・ヨハンソンを始めとするユダヤ系のセレブ達が「反カニエ」のTシャツを着ながら、彼に対する抗議のメッセージを発信する動画がネット上で大きな話題を呼んでいる。

しかしこの動画、実はAIを使用して生成されたものであり、登場する有名人たち本人による肖像や音声の使用許諾を得ないまま公開されたそうだ。現に、この動画に登場するセレブの1人は苦言を呈している。

この動画は、ウェストによるSNS上での露骨な反ユダヤ的主張や、スーパーボウルCMを利用した「鉤十字Tシャツ」の宣伝など、一連の騒動を受けて公開され、「もうたくさんだ」、「あなたも反ユダヤ主義と戦おう」というメッセージで締めくくられている。

問題となった動画に登場させられる形となったヨハンソンは『ピープル』に宛てて、いかなる目的であれディープフェイクを使用した動画の作成には反対するというコメントを寄せた。彼女は、「反ユダヤ主義的な主張に対して、私の肖像を使ってAIが作成したビデオがネット上に出回り、注目を集めているということを家族や友人から知らされました。私はユダヤ人女性として、反ユダヤ主義やいかなるヘイトスピーチも受け入れることはできません。ですが同時に私は特定が可能な1人の人間によるヘイトスピーチよりもAIによってそれが増幅されることの方が大きな脅威だと考えています。そのメッセージがいかなるものであれ、私たちはAIの間違った利用には反対しなければなりません。そうでなければ、手遅れになってしまうでしょう」と述べ、今回の一件に対して懸念を表明した。

この動画を作成したのはイスラエルを拠点とするAI企業の創業者、ガイ・バーだとされ、同氏は『エルサレム・ポスト』の取材に対し、24時間で動画を完成させることができたと語っている。

彼は、「この動画が人気を集めることは予想していましたが、これほど大規模になるとは思いませんでした」とした上で、「その理由はこの動画が、暴力や人種差別にうんざりし、反ユダヤ主義に辟易している人々の心に響いたからでしょう、ビデオに登場する有名人ははすべてユダヤ系です。 しかし、それ以上に、彼らはカニエ・ウェスト自身の生活の一部であり、彼の世界の一部でもあります。私たちは彼らの声を使って、カニエ・ウェストに『あなたの反ユダヤ主義と暴力の煽動は一線を超えた。もうたくさんだ』と伝えたかったのです」と、動画を作成した真意を明らかにしている。

動画に登場するセレブのうち、何人かは実際にウェストを批判する趣旨のコメントをしている。

例えばアイラ・フィッシャーはウェストの「鉤十字Tシャツ」に対してInstagram上で、「ねえみんな、頼むからカニエのフォローを外してちょうだい。これがスーパーボウルでCMを流した後に売ってる唯一の商品よ。このバケモノはどこまでもクソね。我慢できないわ」と言葉を濁さなかった。またシュワイマーも、Xのオーナーであるイーロン・マスクにウェストをプラットフォーム上から追放するよう呼びかけている

ことの発端はウェストがスーパーボウルの会場で放映したCMだ。その内容は歯科医の治療台に座ったウェストが彼の歯に埋め込んだダイアモンドを見せながら「この新しい歯のCMに全部お金を使っちゃったんだ」としつつ「だからまたiPhoneでこれを撮らなきゃならなかったよ。まあとにかくYeezy.com(ウェストの手がけるブランドのHP)をチェックしてね」と語る奇妙なものだった。

一見するとそのCM自体に問題はなさそうだったのだが、実際にHPをチェックしてみるとそこで売られていた唯一の商品がいわゆるナチスの「鉤十字」をプリントしたTシャツのみだったことから大きな波紋を呼んだ形だ。またウェストはX上でも「ヒトラーを愛している」、または「俺はナチだ」などという主張を繰り広げていた。

火曜日にウェストはXのアカウントを削除したが、その直前に「俺はTwitterからログアウトする。俺の中のものを吐き出す機会を与えてくれたイーロンには感謝してる。世界を反響板として使うというのはとてもカタルシスに満ちた体験だった」と綴っている。

また同日、ECプラットフォームのShopifyはウェストによるブランドの通販サイトを閉鎖した。同社のスポークスパーソンは米『ハリウッド・リポーター』の取材に対し、ウェストのブランドが同社の利用規約に違反したため、店舗の閉鎖という処置に踏み切ったとしている。

ウェストに対しては反ユダヤ主義を監視する人権団体の名誉毀損防止同盟(ADL)も声明を発表した。彼らは「カニエは自身の反ユダヤ主義的傾向をさらに証明する必要があるかのように、自身のウェブサイトに鉤十字をあしらったTシャツを出品しました」とした上で、「鉤十字は、ヒトラーがナチスの主要な象徴として採用したシンボルです。 このシンボルは20世紀においてヒトラーの支持者たちを活気づけ、反ユダヤ主義や白人至上主義の標的となる人々に脅威と恐怖を与え続けています。それだけでは物足りないと言わんばかりに、カニエのTシャツの商品名には『HH-01』、すなわち『ハイル・ヒトラー(ヒトラー万歳)』の隠語が使われています。カニエは先週から悪質な反ユダヤ主義的主張をひっきりなしにツイートしています。 このような言動に弁解の余地はありません。挙げ句の果てに、カニエはスーパーボウルの最中に自分のウェブサイトを宣伝し、すでに大勢いるSNSのフォロワーを超えてそれを拡散しようとしました」とウェストを痛烈に批判した。

炎上の火の手は当分収まりそうにない。

※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら

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