デミ・ムーアのオスカーへの歩み…原点は80年代の「ブラット・パック」時代にあった

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デミ・ムーアが先日、映画『サブスタンス』の演技で米映画俳優組合賞(SAG賞)で主演女優賞を受賞したことは、オスカーへの道における新たな一歩であることは間違いない。しかしそれ以上に印象的なのは、彼女が自身の物語を率直に語り、それを受け入れている姿勢である。受賞スピーチでは、「自分を信じることができなかった少女」から、長年にわたり活躍するアイコンへと成長した過程を鮮やかに物語っていた。
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■62歳の現在地…「女性の不安」を体現
ムーアが自身初のゴールデングローブ賞を受賞した際のスピーチは、いまだに多くの人々に感動を与えている。ムーアは感謝の言葉を並べるのではなく、映画が伝えようとした「女性が抱える不安」に関するメッセージを次のように力強く語った。「ある女性が私にこう言った。『あなたは決して十分ではないと、そう思うかもしれない。でも、もしその物差しを捨てることができたなら、自分の価値を知ることができる』」
60代になったムーアがありのままに「若さ」、「美しさ」や「名声」と向き合う姿をスクリーンで観ることは、さらに多くの気づきを与えてくれる。
■「ブラット・パック」と呼ばれた80年代
80年代に『ブレックファスト・クラブ』や『セント・エルモス・ファイアー』といったハリウッドの青春映画に出演した若手俳優たち=通称「ブラット・パック」。その中の1人であるアンドリュー・マッカーシーは、2024年のHuluドキュメンタリー『Brats』で、「ブラット・パック」というレッテルがつきまとい、若手俳優たちのキャリアが失速したと主張している。
マッカーシーはドキュメンタリーで、エミリオ・エステベス、アリー・シーディ、ジャド・ネルソンとモリー・リングウォルド(2人は意図的に姿を見せない)らかつての仲間に自身の主張を裏付けてもらうために全米を駆け回る。中でも、ムーアの存在は際立っており、彼女はマッカーシーの呼びかけに最初に応じた。
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日差しが降り注ぐプールデッキで、オーバーサイズのセーターにほつれたジーンズ姿で登場したムーアは、前向きなエネルギーを放っていた。かつて「ブラット・パック」というレッテルに苛立ちを感じたことを認めながらも、彼女はこう疑問を投げかける。「どうしてみんな、あれを“悪いもの”として受け取ったの?私は、それほど個人的に受け止めてはいなかったかもしれない。まるで、自分たちが表現の幅を狭める何かを握りしめているかのような思い込みがあったのよね」
そして、「私は、すべての出来事は“私たちのために”起こっていると考えている。決して“私たちに対して”起こっているわけではない。そして、この考え方は選り好みできるものではない。“ブラット”として見られることもそう。私たちは無意識のうちに、自分に降りかかる出来事を“対立”として捉えてしまう。でも、“対立”はさらなる“対立”を生むだけ。私たちがその対立を抱え続ける限り、それはパターンとなって繰り返される」と説明し、マッカーシーを感心させた。
■キャリアの低迷から復活
ムーアは「ブラット・パック」時代の後にも、映画『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)に出演するなど成功を掴んだが、長年娯楽作品ばかりに出演する「ポップコーン女優」として軽視されてきた。そして最終的に、90年代以降は業界から見向きもされなくなっていった。
しかしムーアは、マッカーシーとのインタビューで感傷的になりながらも希望を持つ道を選んだ。それはまさに『サブスタンス』で演じた、かつてのスター俳優から憔悴したエクササイズ番組のインストラクターに変貌したキャラクターとは180度異なる姿であった。確かに、ムーアもハリウッドの馬鹿げた基準では「全盛期を過ぎた」とされる。しかし、ドキュメンタリーでの彼女は、自分自身の存在を見事に受け入れている。ムーアが重んじるバランスとは、単なる見た目の問題ではなく、精神・肉体・魂の調和である。
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■オスカー最有力候補に
この姿勢こそが、ムーアをオスカーへと導く可能性が高い。もし受賞すれば、40年間にわたりスクリーンのアイドルたちを見守ってきた「ブラット・パック」ファン全員にとっての祝福となるだろう。
たとえムーアがトロフィーを獲得しなくても、カムバックの軌跡は時代を超えて語り継がれるべきものである。忘れてはならないのは、ムーアが「現在を過去のせいにすること」を拒んだ瞬間にこの物語が本当に動き出したということだ。彼女に必要だったのは、適切な映画という乗り物と、それを走らせるための「車輪」だけだったのである。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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