アリシア・キーズが語る、半自伝的ミュージカル『ヘルズ・キッチン』 ― 今年のトニー賞に最多ノミネート

アリシア・キーズ、先月20日 写真: JASON MENDEZ/GETTY IMAGES
アリシア・キーズ、先月20日 写真: JASON MENDEZ/GETTY IMAGES
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歌手のアリシア・キーズが、「トニー賞 2024」のノミネート発表直後に米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに応じた。

先月30日(現地時間)、キーズが作曲・編曲を手がけた半自伝的ミュージカル『ヘルズ・キッチン』(マイケル・グライフ演出)がトニー賞に最多13部門でノミネート。

キーズが13年間かけて制作した本作は、ヘルズ・キッチン育ちの17歳の少女が、シングルマザーの母親と衝突しながらも、音楽とコミュニティを受け入れていく様子が描かれている。

さらに本作の音楽には、キーズのヒット曲「ガール・オン・ファイア」や「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」のほか、書き下ろし楽曲「カレイドスコープ」も含まれている。

発表後、「もうパニック状態です」と喜びを爆発させたキーズが、本作がブロードウェイで上演されるまでの道のりについて語ってくれた。


ー本作では作曲だけでなく、プロデューサーも務められています。こういった深い関わり方を選んだ理由は何でしょう?

素晴らしい作家のクリス・ディアスと一緒に物語の筋を作り上げました。私たちはこのプロセスの最初からずっと一緒にいたので、この作品の構想はそこから端を発しています。だから、どんな音にするべきかや、観客がどう反応するべきかをよく分かっているのです。この作品を熟知しているんです。

だからこそ、作品の本質を真摯に表現することが大切なのです。信じられないほど素晴らしい共同制作者に囲まれていることに感謝しています。この作品を熟知しているから、私はあらゆる要素にクレイジーなほど関与しているのです。彼らとこの作品に取り組めることは、本当に特別ですね。

ーミュージカルをやろうと思ったきっかけは?

ストーリーテラーとして、自分が実際に目撃し、育った独特な空間や様々な場所の物語を作り出すことに強く惹かれていました。私が育った「マンハッタン・プラザ」という建物を舞台に語られる物語は、非常に魅力的でした。当時のコミュニティや人々には、とてもたくさんの面白い側面がありました。この作品は、私が出会った人々、彼らのユニークな在り方、そしてそういった世界がいかにコミュニティを形作るかに敬意を表したものなのです。

そして、この物語を語ることが本当に正しいと感じたのです。13年前、特に多様性に富んだ、語られるべき独自の物語を企画することは刺激的でした。私の母は女優で、幼い頃から舞台の世界を教えてくれました。だから劇場やブロードウェイは、つねに私を構成する一部になっています。ですから、この流れは間違っていないんだと感じました。

ーヘルズ・キッチン育ちのあなたは、多くのショーを鑑賞されてきたはずです。

はい、もちろん。魔法のような地域に近くにいられたことの素晴らしさは、様々なスタイルに触れられたことにあります。私は、初めて観た『Bring in ‘da Noise, Bring in ‘da Funk』の衝撃を決して忘れないと人々に伝えてきました。子供の頃、自分自身を舞台上に見出せたこと、素晴らしいニューヨーク・ニューヨークの雰囲気とタップダンスの美しさ、そして他のダンススタイルが融合している様に感動しました。

まさに目の覚めるような体験でした。芸術の中でスタイルや世界観を組み合わせることの重要性、それがいかに目を開かせてくれるかを、そのとき強く実感しました。

ー本作にはあなたの有名な楽曲が多数含まれていて、「Fallin’」はよりジャズ風にアレンジされています。自身の楽曲に新たなアプローチをすることは、どのような経験でしたか?

ホーンやストリングスを加える編曲により、美しい音色や質感が生まれています。しかし、その核心は、これらの楽曲を登場人物や物語の筋に合うよう意味あるものに作り変えることにあり、そこに大きな喜びを感じています。音楽が物語を前に進めていく原動力となっているのです。単なる聴き心地の良い曲として挿入されているのではありません。そこには理由があり、意味があり、物語をさらに先に導いていきます。

コラボレーターと共に楽曲を解体し、再構築することで新たな体験ができ、曲との関わり方が変わりました。私は作曲者として、今までこれらの楽曲をこのような形で聴いたことがありません。そういった状況の中で新しい意味を持つようになったことは、興味深いですね。

ーブロードウェイ公演の初日には、ミシェル・オバマ元大統領夫人ら豪華著名人が来場しました。舞台上で、ショーナ・ビーン(母親役)に対して、オバマ前大統領夫人が途中で立ち上がり拍手したそうですね?

いえ、オプラだったと思います!ショシャナ・ビーンが歌う「Pawn It All」という素晴らしい曲の最中、オプラが最初に立ち上がり、続いて会場の皆が立ち上がったのです。まさに衝撃的な体験でした。

ショシャナのは魔法のような、信じられないほど素晴らしい才能の持ち主です。彼女があの光景を目にしていたら幸いですね。私は、確かに目撃しました。

ー自身初のブロードウェイ・ミュージカルの初演を終えました。この過程から何を学びましたか?

この過程を通して、ともに働く人々の重要性を学びました。セットや衣装デザインなど、それぞれの分野で特別なものを生み出しています。この動く芸術作品に関わる一人ひとりが重要な役割を担っています。そして彼らから発せられるエネルギーの一部が、作品を観に来る人々へと伝わっていきます。

つまり、創造したものを取り巻くエネルギーが、作品がどのように響くかの90%近くを占めることを学びました。今は、そのようなエネルギーや、劇場コミュニティからの愛も実感しています。私たちの新鮮さと、ベテランの知恵が融合することで、この作品を特別な形で表現できたのだと思います。


※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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