全米脚本家組合“WGA”がストライキを全面的に支持 映画『エブエブ』の脚本家らが「賛成」投票呼びかけ
17日、全米脚本家組合(=“WGA”)でストライキの是非を問う投票が終了した。結果、西部・東部全米脚本家組合の有権者9,218人のうち約98%が賛成、約2%が反対だった。組合によると、過去に例を見ない参加者・賛成数だったという。
今回の結果でストライキが起こるとは限らないが、今後必要性が生じた時に選択肢の1つとして権利が与えられることになる。WGA交渉委員会はメンバーに向け「重要な変化をもたらすため、圧倒的な数で団結力を見せつけました。この意思表示を片手に、すべての脚本家にとって公平な契約が実現できるよう尽力します」とメッセージを出した。
今後脚本家組合のリーダーは、圧倒的多数だった賛成の声を武器に、現在行っている映画テレビ製作者同盟(=“AMPTP”)との交渉を進めていくだろう。AMPTPは、ディズニー、Netflix、Amazonといった会社のプロダクション部門を代表する団体だ。全米脚本家組合の投票結果発表に先立ち、AMPTPは以下の声明文を出していた。
「ストライキ投票は、ずっとWGAの策略の1つでした。関係者同士で提案の取引すらしないうちにアナウンスされました。ストの承認は、自然な成り行きと言えます」さらに“公平な合意”に達するというWGAの目標に対し「契約は、会社と本格的な議論を交わし、合理的な妥協案を模索することで、WGA側が真摯に取引に向き合う場合のみ可能になる」と付け加えた。
WGAのメンバーには、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダニエル・クワンをはじめ、マイク・ロイス(『ワンデイ -家族のうた-』)やミーガン・オッペンハイマー(『テル・ミー・ライズ』)ら著名な脚本家が顔を揃えており、熱心に“賛成”への投票を呼び掛けていた。
3月下旬よりWGAとAMPTPは、約11,500人の映画・テレビの脚本家を対象とする3年契約に向け話し合いを重ねていた。両者の取り決めにより、議論の進捗状況については伏せられているものの、4月初旬にWGAは「スタジオは脚本家が直面している危機に反応すべき」と主張した。一方AMPTP側は、脚本家組合がストライキ投票を前に契約の合意に献身的でなかったことを声明で示唆している。
まず第一にWGAが目指すのは、脚本家の報酬を引き上げることだ。そして組合のメンバーのために、より高い最低賃金を設定・配信&劇場映画報酬の画一化ほか数々の戦略を打ち出している。また米THRが2月に報じたように、WGAは最低限のドラマ脚本スタッフ数・雇用期間についても要求している。
さらに文章を生成するChatGPTといったAIも今回の議論の的に。脚本家組合は、契約においてAIが生成・修正したコンテンツは除外するよう推し進めていくと明言。それに加えて、テクノロジーが生成した原本を脚本家に脚色させることも禁じるという。
その間も、数々の有名スタジオ・配信サービスにはコスト削減ムードが漂っている。今春ディズニーが行う大量解雇といった状況を鑑みると、AMPTP側が進んで脚本家の報酬を大幅に引き上げるとは考えにくい。その上、今年AMPTPは全米監督協会やSAG-AFTRAといった組合とも協議を行う予定であり、脚本家組合との協議結果が前例と見なされることを強く意識している。
最後にストライキ投票が行われたのは2017年。その年は、96.3%の投票者がストライキに賛成したが、組合とスタジオが土壇場で合意に至ったことで一時休業は回避。しかしその10年前、90%の投票者が賛成したのち、脚本家は100日間のストライキを決行した。
組合の契約終了日である5月1日が刻一刻と迫るなか、WGAとスタジオはせめぎ合っている。1日以降、WGAはいかなる時でもストライキの呼び掛けが可能になる。
※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。