カーディ・B、ライアン・レイノルズ&ブレイク・ライヴリー夫妻、リリー・コリンズら著名人の慈善団体を守るNPO「SIF」とは?

THR PHOTO ILLUSTRATION BY RYAN OLBRYSH; COOPER: JON KOPALOFF/WIREIMAGE. REYNOLDS: RODIN ECKENROTH/WIREIMAGE. LEGEND: AMY SUSSMAN/GETTY IMAGES FOR THE RECORDING ACADEMY. COLLINS: MICHAEL CAMPANELLA/GETTY IMAGES. CARDI B: PRINCE WILLIAMS/WIREIMAGE.
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しばしば、著名人の善意で舗装された道はスキャンダルへと続いている。ハリケーン・カトリーナ被災者のために住宅建設を行ったブラッド・ピットの「メイク・イット・ライト財団」は、構造上の欠陥をめぐり集団訴訟に直面。また、ショーン・ペンの災害救援非営利団体「CORE」は、世界中で称賛されたものの就労法違反で訴えられ、財務不正疑惑も持ち上がった。名声が価値ある目的への注目度を集めるのと同様に、不祥事が起きるとイメージへの打撃は大きくなってしまうのだ。

昨年、自身の慈善団体が営利目的会社に資金を流していたとして、ある有名俳優がニュースの見出しを飾った。Social Impact Fundの理事長、イネス・クーパーシュミット氏はチームに俳優の記事を送信した。クーパーシュミット氏は語る。「すぐに分かりました。“彼は不適切なスポンサーと動いてしまった”とね」

SIFの顧客の1人、ショーン・メンデス ©DANIELE VENTURELLI/GETTY IMAGES

Social Impact Fund(SIF)は、2023年に米ハリウッド・リポーターの年間最優秀慈善団体を受賞。2013年以来、カーディ・Bをはじめ、ブラッドリー・クーパー、ケリー・ワシントン、ライアン・レイノルズ&ブレイク・ライヴリー夫妻、ショーン・メンデスら数多くの著名人から信頼を得てきた。資金面のスポンサーとして、SIFは慈善団体と協力し事業所の開設といった運営上の負担を軽減している。SIFとタッグを組むことで、慈善団体は501(c)(3)による免税の下でオペレーションを行う。

SIFのグレッグ・プロッパー名誉会長は、以下のように説明した。「資金を集め、それを配りたい場合、選択肢はいくつかしかありません。自分の501(c)(3)団体を始めるか、慈善家向けのプラットフォームとして活動する他の501(c)(3)団体で主催される基金を開設するかです」

慈善事業で発生するお役所仕事は、非常に意義があるプロジェクトを頓挫させ、しばしばチャリティーを完全に潰してしまう。SIFのエグゼクティブディレクター、クレイグ・シッチー氏は「501(c)(3)のステータスを獲得するのは、そこまで難しくないー本当に大変なのは、それを維持すること」と語る。「人々は良いことをしたがる。しかし、著名人は複雑な書類仕事に取り掛かったとたん、“なんてことに足を踏み入れてしまったんだ”と気付くのです。良い行いをするのは簡単ではありません」

(左)SIFのエグゼクティブディレクター、クレイグ・シッチー氏 (右)リリー・コリンズ、2022年 COURTESY OF CORY AYCOCK; GILBERT FLORES/GETTY IMAGES

SIFはこれまで、低所得者のがん患者の金銭的負担を軽減するソリューションを見つけ、治療成果向上に取り組むクーパーの「One Family Foundation」のほか、メンデスの財団設立を援助してきた。過小評価コミュニティーに属する人々向けに、ハリウッドでの仕事を確保する活動を行う「Group Effort Initiative」のレイノルズとライヴリーは8月初旬、創設から3年で1,000人以上を援助したと公表。米ハリウッド・リポーターに対し、レイノルズは「SIFなしでは、ここまで来れなかった」とコメントしている。

SIFが後援する「Lily Collins Empowerment Fund」のリリー・コリンズは、「クレイグや彼のチームが適切に動いていることが本当に信用できる」と語る。「こうして変化を起こしていきたいー資金や寄付金が適切に処理されていると知りながらね」2015年からSIFと協力関係にあるコリンズは、初期のクライアントの1人だ。「自分の財団を作るような立場ではなかったけれど、基金を育てられるようになりたいと強く思っていた。コロナ、BLM救援基金のような緊急事態が起きたとき、きちんとした方法で行えるように」

資金面のスポンサーは、パートナー関係のチャリティー団体に対し適正評価を行う責任がある。SIFが有望なクライアントのプロジェクトを検討する際、オペレーションがIRSのルールに則っているかだけでなく、最終的に資金調達によって利益を得る現場組織が資金を最大限に活用する準備が整っているかを確かにする。シッチー氏によると、著名人から年間50くらいの問い合わせが来るものの、ほとんど断っているという。

10年前、プロッパー氏はSIFを創設した。初期の顧客のジョン・レジェンドは、かつてプロッパー氏の営利目的型エージェント「Propper Daley」のクライアントでもあった。現在「Propper Daley」は、SIFにクライアントを紹介するエージェントの1つとなっている。「グレッグのチームが“スポンサーを必要としてるクライアントがいるんだけど”と連絡してきます。そして、私たちは他の人と同様の精査を実施しています」とシッチー氏は語る。

「Anonymous Philanthropy」もまた、SIFにクライアントを持ち込むエージェントだ。SIFと約8年にわたり連動しているAnonymousのノア・マクマホンCEOは、「1番の理由は“簡潔さ”ですね。彼らは実に沢山の複雑な物事を処理しています。色々なことをを簡単にしてくれているのです」と述べている。 

創設以来、SIFは50以上の慈善プログラムを主催し、約8,000万ドルを調達した。クーパーシュミット氏は「ハリウッドで長年働く人々が、世界のために良いことをしたいとひらめいたなら、すぐにそれを活かしていくべき」とコメントした。

近年、SIFの顧客はエンタメ業界にとどまらず、スポーツ業界にも広がっている。また、俳優のタリア&アルマーニ・ジャクソン、歌手のザ・キッド・ラロイら次世代の慈善家の育成にも力を入れているところだ。

シッチー氏は“SIFのクライアントがもたらす社会的影響を自分の手柄にしないようにしている”と語る。「私たちの功績は、取り組みの実現を援助していることです」

※初出は米誌ハリウッド・リポーター(8月16日号)。今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌

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