ディズニー・ジャパン代表取締役社長キャロル・チョイ氏、アジア発コンテンツで世界に挑む

キャロル・チョイ氏 写真:The Walt Disney Company
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SHOGUN 将軍』や『ムービング』の世界的ヒットに続き、アジア太平洋地域でのコンテンツ開発を加速させるディズニー。日本を含むアジア太平洋地域のコンテンツ戦略とマーケティングを統括するキャロル・チョイ氏が、ローカルコンテンツの可能性、マーベル作品の展望、そして自身のキャリアについて語った。FOXの統合やディズニープラスの展開を成功に導いてきたチョイ氏。現在、ディズニージャパン代表取締役を務める同氏が見据える、アジア太平洋地域におけるエンターテインメントの未来像とは ────。


──── ディズニーAPAC(アジア太平洋地域)コンテンツの過去数年の成長をどのように評価されていますか?

私たちの達成を誇りに思っています。3年前の市場参入時は製作基盤もほとんどない状態でしたが、現在ではサービス利用者の試聴時間の40%をローカルコンテンツが占めています。これは地域全体として非常に重要です。

他のサブスクリプションのプラットフォームと比べるとコンテンツ量はまだ少ないものの、ここまで素晴らしい結果を収めています。さらなる成長を目指していきたいです。

──── 『SHOGUN 将軍』は世界的に大きな成功を収めましたが、“ネクストSHOGUN”となりうる作品はありますか?

難しい質問ですね。『SHOGUN 将軍』は制作に長い時間をかけ、有名な小説を原作とし、多大なリソースを投入した作品です。視聴時間という点では、今後のAPACオリジナル作品でも同様のエンゲージメントを達成できる可能性はあります。しかし、作品の規模とグローバルな魅力という点では、非常に高いハードルだと思います。

キャロル・チョイ氏、ディズニーAPECコンテンツショーケースにて ©︎ The Walt Disney Company

──── 日本のコンテンツの強みはどのようなところでしょうか?

日本には豊かで深い歴史があります。様々なジャンルの優れた作家や芸術家が、独自のアートスタイルを生み出してきました。これが世界中で多くのファン層に愛されているのです。

『SHOGUN 将軍』も、実際の歴史に基づきながら、力強い物語や現代的な解釈、印象的な女性キャラクターの創造などで世界中のオーディエンスを魅了しました。

──── 最近「ヒーロー疲れ」が度々話題にされますが、アジア圏における今後のマーベル作品の展開をどうお考えですか?

“ヒーロー疲れ”という言葉はあまりに端的すぎると思います。マーベルの強みは『隣人のようなヒーロー』を描くことにあります。今後のラインナップではその魅力に回帰していく予定です。実際、『デッドプール&ウルヴァリン』は現在も今年のハリウッド実写映画で興行成績記録第1位です。

近日公開される『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では日本的な要素も含まれており、日本での反応も楽しみです。東京コミコンも行われている日本にはマーベルのファンがたくさんいますよね。

アジア圏の視聴者に馴染みのあるキャラクター性や、その繋がりを追求していくのが一つのアプローチになると思います。そして、ディズニープラスでは繰り返し視聴できるので複雑なストーリーや作品間の繋がりも理解しやすくなったと思います。また、日本は吹き替え市場規模が大きく、『デッドプール&ウルヴァリン』では興行収入の60-70%が吹き替え版でした。

デッドプール

──── 米THR誌の『Women in Entertainment』にて「エンタメ界で最も影響力のある女性」として選出されていますが、この業界を目指している若い女性へアドバイスをお願いします。

私は自分を女性幹部として特別視したことはありません。重要なのは自分の強みを活かすことです。ディズニーのような大きな組織では、協力する意欲を持ち、良きパートナーやサポーターを見つけることが大切です。

私自身の経験から言えば、チャンスを恐れないことも重要です。例えば、ユニバーサル・ミュージックで仕事をしていた頃、制作経験がなかったにも関わらず、中国でアイドルオーディション番組の制作を任されました。スポンサーシップ管理からタレント契約、アルバム制作まで、すべてが挑戦でしたが、そういった状況にも失敗を恐れず挑むことで成長できました。

急速な変化を続けるこの業界では、ポジティブで好奇心を持ち、できる限り多くを学ぶ姿勢が大切です。誰も一人きりでは成功できません。チームを作り、師となる人を見つけ、周りの人と共に成長していくことが重要だと考えています。

【プロフィール】

キャロル・チョイ Carol Choi(キャロル・チョイ)

代表取締役社長・EVP、APACインテグレーテッド・マーケティング、ブランド&フランチャイズ、ローカルオリジナルプロダクション

ディズニー・ジャパンの全ビジネスを統括すると同時に、アジア太平洋地域におけるマーケティング戦略の立案とローカルコンテンツの開発を担当。2006年のディズニー入社以来、アジア太平洋地域の要職を歴任し、2020年までのウォルト・ディズニー・コリア時代には2年連続で記録的な業績を達成。米THR(The Hollywood Reporter)誌の「エンタメ業界で最も影響力のある女性」に選出されるなど、業界での功績が高く評価されている。現在は、Disney+向けアジア発コンテンツの開発を推進し、各地域のトップクリエイターとのコラボレーションなども進めている。

取材・記事 The Hollywood Reporter Japan 山口 京香 / Kai Yamaguchi

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