ビートルジュースのビジュアルが出来上がるまで
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「ティム・バートンは誰にでも彼の世界に入り込んで自由に創作させてくれるんです。彼が私たちの仕事ぶりを気に入ってくれているかは、彼の顔色を見ればすぐにわかりますよ」と語るのは、アカデミー賞受賞経験もある、イギリス出身のヘアスタイリスト/メイクアップ・アーティスト、クリスティーン・ブランデルだ。彼女は今回、『ビートルジュース ビートルジュース』(以下『ビートルジュース2と表記)で初めてバートンとタッグを組んでいる。本作はメイクアップアーティスト&ヘアスタイリストギルド賞で3部門にノミネートされたほか、アートディレクター・ギルドによる「優秀制作デザイン賞」候補にもノミネートされている。今回、本誌はそんな『ビートルジュース2』の快進撃の立役者であるブランデルに直撃した。
- Q:ティム・バートンと仕事を始めるまでのプロセスはどんな感じだった?
ブランデル:『ビートルジュース2』に参加してくれないかというオファーの電話は、私にとってまさに人生の転機になりましたね。実は、その時の私はなんというか会社の都合に縛られてばかりのような気がしていて、人生を楽しめていなかったんです。初めてティムと話した時、彼はアクションからカメラワークに至るまでいろんなことに挑戦したいという話をしてくれました。まさに「やった!」という瞬間でしたね。今回の撮影をきっかけに私は仕事に対する愛情を取り戻すことができたんです。
- Q:ビートルジュースのヘアスタイルとメイクをする時にはどんなことを意識した?
ブランデル:まずなんと言ってもビートルジュースの見た目は皆さんにとって馴染みが深すぎるので、変えるわけにはいきませんでした。ですが私はそこに私なりの色を加えたかったので、全体的に少しボロボロで、腐ったような質感を出しました。肌にもきめ細かい感じを出すことを意識しましたね。そしてマイケル(・キートン)が現場入りしたとき、彼も独自のイメージを持っていました。なんと言っても彼がキャラクターの第一印象を決定づけますからね。彼は指の爪を腐らせるのはどうかと提案してくれたので、爪のデザインを古くて固くなったようなものにしました。彼の役に対する情熱は本当にすごいものだったので、私はウィッグの製作も彼に目の前で見てもらいながら行いました。
- Q:ニール・スキャンラン(『ビートルジュース2』にて造形チーフを担当)と働いた時のエピソードを教えて
ブランデル:私は、頭にノコギリや泡立て器が付いているジャベリン・レディやジェレミーの両親のような、体重を支える仕掛けがある死後の世界から来たキャラクターの小物を製作しているところに立ち会いました。それらは全部本物で、プラスチックなどを使っているわけではないんですよね。キャット・レディの造形を行った際に、私たちは俳優の足をソファーに隠せるかと考えていて、最終的にダミーの足を作ろうということになったんです。それから私たちは業務用ボンドで猫が彼女から離れたところで食事をした時にできた歯形をそこに付け加えました。
- Q:天才的な創造性が発揮されていたと思うが、自分ではどう思う?
ブランデル:全てが笑いを誘うため皮肉みたいなものなんです。ティムのブラックジョークなんですよね。とにかく型破りでなくてはなりませんでした。明確な「撮影の時間」というものはなくて、私たちはティムの世界に入り込み、彼が見ているものを見なければならないんです。ティムは頭の回転が早くて、とても衝動的でした。 ある朝、彼はビートルジュースが太陽を見上げて、漫画の「ドカン」という瞬間のように目が爆発するようにできないかって言ったんです。そこで私たちは、ピンポン玉のような目玉をつけたグラスファイバーのマスクを手早く作り、マイケルにかぶってもらいました。
- Q:作るのに一番苦労したビジュアルは?
ブランデル:死後の世界の演出ですね。というのも、光の具合が待合室や移民管理局、ソウル・トレインといった場面ごとに全く違ったんです。死んでいるキャラクターと生きているキャラクターが入り混じることになるので、一貫したルックスを演出するために彼らのメイクのレベルをこまめに調整しました。ダニー・デヴィートの緑色の肌の蒼白さと、顔のまわりの狂ったような黄色い汚れを正確に表現するのに時間がかかりましたし、ウィレム・デフォーは「僕が『HAWAII FIVE-0』のジャック・ロードみたいな一面を見せたい」、つまり往時のハリウッドスターみたいな整った髪型に真っ黒に焼けた肌にしてみたいと言い出したんです。というのも、彼の演じる役は生前にスタントマンとして大失敗したのだから、そうすることでもう一方の昔ながらのオペラ座の怪人のような義足という姿を引き立てるための意図的な作戦だったんです。
※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら
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