夏休みの予定はキャンセルすべき? 脚本家組合のストで「休暇」に悩むハリウッド

写真: ©THR ILLUSTRATION / ADOBE STOCK

全米脚本家組合(WGA)のストライキが2か月続くなか、業界は“夏休み”という名のさらなる仕事の小休止に直面する。この時期は、例年なら業界人が一斉にスケジュールを空けて旅行に出かける。しかしストの影響で、ある興味深いトレンドが浮上した。多くの人々が「誰がどこに何日間行くか」といったことに注意を払うようになったのだ。脚本家らが戦い続けている今、遠方での保養休暇を公にすることは、無神経だと捉えられかねない。

組合員の長い要求リストの核をなすのは、生活するための賃金を稼ぐことである。若手・中堅脚本家はギリギリの状態で生活をやり繰りしており、休暇へと突入する業界の姿は嫉妬や憤怒といった感情を起こすかもしれない。さらには、ハリウッド内の序列を思い出させるだろう。

“人々の投稿にショックを受けている”という出版関係者は「空気が読めていない。自分が脚本家や俳優だったら、腹が立つだろう。休暇を取っている人を恨むべきではないが、今がどんな時か考えなければならない」と思いを吐露した。

業界内の人々は、2023年の残り期間のために支出・節約を調整している。とある情報筋の同僚は、請求書や授業料の支払いのため旅行をキャンセルしたそうだ。

ベテランマネージャーの男性は変化を感じている。「SNSに贅沢な旅行の写真を投稿する動きが目立たなくなった。どのくらい現状に肩入れするか?どのくらい支出に気を遣うか?万事順調で仕事も平常運転だという印象を与えるか?これらは個人の判断だ」

前払いしていた旅行に向かう人もいる。「私にとって唯一の夏休み。オテル・デュ・キャップでどんちゃん騒ぎするデイヴィッド・ザスラフとは違う。子供との毎年恒例の夏休みに気後れはしない」

駆け出しの脚本家らが家賃のためにギグワーカーとして働かざるを得ない苦境に、マネージャーは気をもんでいる。「若手の脚本家は豪華な休暇を目にして最も傷付くはず。お金に余裕のある大半の人々は、そういう視点には気付かないだろう。グレッグ・バーランティが夏の旅行をキャンセルするとは思わない」

脚本家、俳優、プロデューサーなどマルチに活躍しているイッサ・レイ。複数の組合に所属し緊張感漂う時を過ごすなか、仲間には何が最善かを判断するよう促しているという。「私はWGAのピケラインに参加し、SAGにも属している。とにかく臨機応変に動くだけ」と語り、旅行も計画していることを明かした。「様々な職を兼ねていると複雑なところがある。他の俳優やプロデューサーと許容範囲について話し合い、可能な限りベストな組合員になろうと努めている」

現状を考慮し、休暇に関する投稿の仕方を変えるというベテラン業界人は、以下のようにコメントした。「サントロペの写真をアップする?いいや、しない。自分に課した最も重要なルールは“慎重さ”。今は多くの人々にとって困難な時だが、自分の人生を大切にしなければならないということを互いに尊重し合っている」

情報筋によると最も詮索を受けやすいのは、スタジオの重役だという。「一年じゅう身を粉にして働き、二度と見れないかもしれない美しい場所の思い出をシェアしたいなら、そうした方が良い。より重要な問題は、“いつ仕事に戻れるんだ?”ということ」

25年のキャリアを誇るショーランナー、ジェフリー・リーバー氏が米ハリウッド・リポーターの取材に応じた。「個人的には誰がどこにいようと、どうでもいい。これは時間を要することだと誰もが認識している状況だ。それでも人生は続いていくと理解しながら、意識的に今を生きていると思う。NYやLAにいない時は、オンライン上で何のために戦っているのか説明するようにしている。事態を収拾できるAMPTPが交渉の場に戻ってくるまでは、不安定な時を過ごすだろう」

5月2日にWGAがストに突入したのち、レストランやバーが脚本家らに向けディスカウントを促進。ストが続くなか、アパレル・電子機器・フィットネス系の業者も追随した。季節は夏となり、高級リゾートも脚本家限定の特別価格を提供している。Viceroy Los Cabosは、ストの期間にかかわらず12月15日まで割引を継続する。

『グレイズ・アナトミー』を手がけたショーランナー、クリスタ・ヴァーノフ氏は米THRに対し「脚本家組合は会社ではない。このストは人間らしさや、自分自身と生活を支える力に関連するものである。さらに脚本家組合は、必要なときに休息することを支持している」と見解を述べた。休暇中でも、WGAのストに参加し続ける方法もあるそうだ。「確かなのは、脚本家は各自役割を果たしていること。組合にとっての一大事を誰もが理解している。WGAは自分と家族の健康を大切にするよう後押ししている」

休暇に出かける脚本家の数は定かではない。ヴァーノフ氏と同じ集会に参加していた、テレビ業界のベテランは語る。「ピケラインの数は減っていない。圧倒的なサポートだ。テレビの脚本家を20年やっていて、一度も夏休みを過ごしたことはない。通常なら夏が一番忙しい。重役とは違って、脚本家に休暇はない。私の家族に聞いてごらん」

別の脚本家は、休暇中の他人を監視するためにSNSをパトロールするという考えは馬鹿げているとした。「私たちはピケラインの現場にいる。1週間休みたい人がいても大丈夫。今は働いていないから、お金を使うつもりもない。ただお互いを支え合うだけ」夏にNYやロンドンに出かけ、現地でピケラインに参加する予定の組合員も存在している。その他の組合員は、とどまり続けるという。「みんな節約のため、支出を抑えて夏の計画を取り止めている」

旅行に行く脚本家は、戦いにプラスの時間を割くことで埋め合わせようとする。『フレンズ』や『グレイス&フランキー』のクリエイター、マルタ・カウフマン氏は1週間メキシコに出かける。「留守にする1週間を埋め合わせるため、可能な限り多くの日をピケラインに費やしてきた。人間には息抜きが必要で、再チャージしたエネルギーをまとってピケラインに戻るためにも一旦距離を置くことが大切。休暇中は罪悪感があっても、それが必要なことだと分かっている」

※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら

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