濱口竜介監督の新作は仏・日・独・ベルギー合作『急に具合が悪くなる』に決定
濱口竜介監督の新作がフランス・日本・ドイツ・ベルギー合作の『急に具合が悪くなる』に決まった。
がんの転移を経験し2019年に亡くなった哲学者の宮野真生子氏と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂氏が交わした20通の往復書簡による共著「急に具合が悪くなる」が原作。濱口監督は4年ほど前に映画化の提案を受け、「初めて読んだときの感覚は、心を強く動かされたという言葉では足りません。2人の学者の全キャリアと魂を懸けたような議論に対して、いったいどう取り組んだらよいか全く見当はつきませんでしたが、映画にしたいという火が心に灯ったような感覚がありました」と振り返る。
映画化に当たり、フランスの介護施設で働く施設長のマリー=ルーと、がんを患う日本の劇演出家・真理がある偶然から出会いと交流を深めていく物語へと脚色。2022年『REVOIR PARIS』(原題)でセザール賞主演女優賞を受賞したヴィルジニー・エフィラが、マリー=ルー役で主演。真理役は、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』などに出演し、「TAO」としてモデルとしても活躍する岡本多緒が演じる。
濱口監督は現在、パリで撮影の準備中。映画の内容に関し、「どうしてこうなったのか、短くは決して説明できないというのが正直なところです。ここまでの曲がりくねった歩みを要約することは不可能に思えます」と素直な思いを吐露した。
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その上で「自分を導いてくれた原作の一節」を引用した。「関係性を作り上げるとは、握手をして立ち止まることでも、受け止めることでもなく、運動の中でラインを描き続けながら、共に世界を通り抜け、その動きの中で、互いにとって心地よい言葉や身振りを見つけ出し、それを踏み跡として、次の一歩を踏み出してゆく。そういう知覚の伴った運動なのではないでしょうか」。
公開は2026年を予定。アカデミー賞国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を射止めた『悪は存在しない』に続く濱口監督の新作だけに、国内外で注目を集めそうだ。
記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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