ポール・トーマス・アンダーソン映画ランキングTOP10 ―― 新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』まで

ポール・トーマス・アンダーソン――熱狂的なファンから「PTA」と呼ばれる――のキャリアはまさに奇跡だ。『ブギーナイツ』で“天才”と称された彼は、30年近くにわたり独自の映画を作り続けてきた。
フランチャイズ映画やシリーズ企画を避け、興収1億ドル超のヒット作も持たない。それでもPTAは、世界3大映画祭すべてで監督賞を受賞した唯一の監督として、常に映画界の頂点に立ち続けている。
時代劇、コメディ、ラブストーリー、そして最新作ではアクションへ――ジャンルを越えて挑戦し続けるポール・トーマス・アンダーソン。そんな彼の全10作品を、米『ハリウッド・リポーター』がランク付けした。
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10.『リコリス・ピザ』(2021)
ポール・トーマス・アンダーソンの故郷、サンフェルナンド・バレーへのラブレターであり、PTA作品の中で最も軽やかでノスタルジックな1本。1970年代ロサンゼルスを舞台に、15歳の元子役ゲイリー(演:クーパー・ホフマン)と25歳の自由奔放な女性アラナ(演:アラナ・ハイム)が、不思議な絆を築きながら青春の冒険を繰り広げる。
初期作の奔放さと後期作の洗練さが融合しており、物語全体をじっくり味わうよりも、好きな場面を何度も見返したくなる映画だ。
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9.『ハードエイト』(1996)
アンダーソンの長編デビュー作は、のちのキャリアから見れば意外なほど控えめな作品となっている。本作はネバダ州リノを舞台にした犯罪ドラマで、当時のインディーズ映画らしくタランティーノの影響を強く受けている。
しかしその内側には、ギャンブラーと青年の間に芽生える擬似家族的な絆という、のちにPTA作品の核となるテーマがすでに存在している。
8.『インヒアレント・ヴァイス』(2014)
トマス・ピンチョンの原作を最も忠実に映画化した作品であり、筋の通らなさこそが魅力となっている。1970年代ロサンゼルスの霧の中を、マリファナを常用する私立探偵“ドック”(演:ホアキン・フェニックス)が漂う。支離滅裂な陰謀と消えゆくアメリカの夢を描いた、酩酊感に満ちた幻影のような映画だ。
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7.『ザ・マスター』(2012)
PTA自身が、「最も愛する作品」と語る『ザ・マスター』。カルト宗教の教祖と退役兵の奇妙な絆を描いた心理ドラマであり、宗教批判というよりも“人間が意味を求めること”そのものを詩的に映し出す。
ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンによる圧巻の演技合戦、繊細な65mm撮影が織りなす映像の深み。観るたびに、新たな発見がある作品だ。
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6.『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)
強欲と信仰、そして石油をめぐるアメリカ神話の再構築。ダニエル・デイ=ルイスが演じる石油王プレインヴューは、アメリカン・アンチヒーローの象徴となった。
テレンス・マリックやスタンリー・キューブリックの影響を受けた構図、ジョニー・グリーンウッドの不協和音的スコアが圧倒的な緊張感を生み出す。PTAの代表作として名高い傑作だ。
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5.『パンチドランク・ラブ』(2002)
アダム・サンドラー主演の異色のロマンティック・コメディ。奇妙で甘美、そして抽象的。倉庫の雑音を取り入れたジョン・ブライオンの音楽、色彩と感情が融合する映像美が印象的だ。神経質で孤独な男が愛によって変わっていく姿を、アンダーソン流の純愛譚として描いた珠玉の1作となっている。
4.『マグノリア』(1999)
『ブギーナイツ』の成功で自由を得たアンダーソンが、全権を握って制作した3時間超の群像劇。痛みと赦しをめぐる9つの物語がエイミー・マンの音楽とともに交錯し、カエルの雨で幕を閉じる。
トム・クルーズの狂気的な演説、ジュリアン・ムーアの絶叫、ロバート・アルトマン的構成――すべてが過剰で、すべてが美しい。アンダーソンの野心が最もあらわになった作品だ。
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3.『ファントム・スレッド』(2017)
1950年代ロンドンの高級仕立て屋を舞台にした、優雅で毒のある愛の物語。ダニエル・デイ=ルイス演じる完璧主義のデザイナーと、彼を翻弄する女性アルマ(演:ヴィッキー・クリープス)の関係は、権力と依存の心理戦であり、同時に究極のラブストーリーでもある。ジョニー・グリーンウッドの音楽と35mmフィルムの質感が、静謐な狂気を包み込んでいる。
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2.『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025)
トマス・ピンチョンの小説『ヴァインランド』を大胆に再構築したアクション超大作。レオナルド・ディカプリオが元革命家の男・ボブを演じ、過去の因縁と再び対峙する。
アンダーソンらしい人間ドラマと社会批評を保ちつつ、史上最高レベルのカーチェイスや戦闘シーンを実現。『ビッグ・リボウスキ』と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を融合させたような、時代を象徴する壮大な作品だ。
1.『ブギーナイツ』(1997)
皿洗いの青年がポルノ業界で“夢”をつかむ物語――27歳のアンダーソンが放った衝撃作にして、彼のすべてが詰まっている。流麗なカメラ、完ぺきな選曲、巧みなセリフ、そして登場人物たちへの深い共感。
本作はマーク・ウォールバーグをスターに押し上げ、バート・レイノルズに再評価をもたらした。擬似家族、芸術の商業化、アメリカ的成功神話というPTAの核心テーマはすでにここにあり、若き天才が映画という“夢工場”を完全に支配した瞬間であった。
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※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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