クリステン・スチュワート、ハリウッドの女性監督の現状に警鐘「業界は緊急事態」
現地時間2025年11月4日(火)、アカデミーとシャネルが主催する「Women’s Luncheon」にて、俳優・監督のクリステン・スチュワートがスピーチを行い、ハリウッド映画業界における女性クリエイターの厳しい現状について率直な言葉で訴えた。会場となったアカデミー映画博物館のドルビー・ファミリー・テラスには、ケイト・ハドソン、サラ・ポールソン、ジュリア・ルイス=ドレイファスなど、多くの著名俳優が姿を見せた。
▼「女性のための特別な夜」が不要になる未来を願って

クリステン・スチュワートは、2016年の「Elle Women in Hollywood Awards」でも同様のメッセージを発している。当時、トロフィーを受け取りながら口にした「女性のための特別な夜が必要なくなる日を、心から待ち望んでいます」という言葉を、今回のスピーチ冒頭で再び引用した。
12月に全米公開されるスチュワートの長編監督デビュー作『The Chronology of Water(原題)』は、作家リディア・ユクナヴィッチによる2011年の回想録が原作となっている。会場に集った多くの女性たちを見渡しながら、スチュワートは「こうして皆さんが実際にここにいるという光景は、本当に胸が震えます」と語った。
▼女性監督の割合は依然として伸び悩む

しかし、その感動とは裏腹に現状は厳しい。スチュワートは、「私たちがつながり、数を増やしていくことの必要性は明らかです」と指摘。最新データでは、女性や有色人種の監督が手がける映画の割合は2025年時点で横ばい、あるいは減少傾向にある。業界再編やレイオフ、予算縮小が続く中、状況はむしろ後退しているという。
▼#MeToo後に見えた希望と、その後の現実


「#MeToo以降、『女性が自らの物語を語り、それが正当な評価を受ける時代が来る』と私たちは希望を抱きました。でも今、その道のりがどれほど険しいかを痛感しています」とスチュワートは語る。女性の経験をありのまま描くと、「暗い」「タブー」と拒絶されることも多いという。「でも、それは私たちの現実です。私はそれを恥じません」
この日スチュワートは、自身が「かなりひどいPMS(月経前症候群)の状態にある」とも明かし、弱さや揺らぎさえ隠さない率直さを見せた。
▼“見えない不均衡”が生む静かな暴力

スチュワートは、不平等を語ること自体が「気まずい」と感じさせられてしまう構造についても触れた。賃金格差、生理用品への課税など目に見える問題と違い、「声を奪われる」ことは可視化されにくく、怒ることすら封じられる暴力だと表現した。
「今の私は怒りすぎて、この演台をフォークとナイフで食べてしまいそうです」その言葉には、飾りのない痛烈さと切迫感があった。

▼怒りを共有し、未来を創るために


「今日は取り繕った言い回しは置いていきます。この怒りを隠さず、抑えず、生き生きと共有しましょう。その先に、もっと楽しく、美しく、退屈とは無縁の新しいものが生まれるはずです」
女性監督による作品数は依然として少なく、状況は統計的にも深刻だとスチュワートは強調した。「私たちの業界は、今まさに緊急事態なんです」
ただし、スピーチは怒りだけで終わらなかった。「だからといって、怒りで全部を台無しにして、この場の祝福の空気を失いたくはありません。ここにいる私たちは、自分たちを誇りに思っていい。感謝を分かち合うことだってできるはずです」
▼「いつでもランチする女たちに」


ハリウッドの第一線で活躍する女性クリエイターたちと次世代の才能を同時に称える本イベントは、毎年大きな注目を集めている。
クリステン・スチュワートは、最後にこう呼びかけた。「もっと“女性のためのランチ”が必要なんです。というか、私たちは“いつでもランチする女たち”にならなきゃいけないんです」スピーチが終わると、会場は総立ちの拍手に包まれた。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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