カンヌ映画祭「怪物」で脚本賞の坂元裕二氏が会見「夢を見続けているよう」

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 第76回カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した「怪物」の坂元裕二氏が29日、是枝裕和監督とともに羽田空港で凱旋会見を行った。

坂元氏は、帰国したばかりの是枝監督からトロフィーを受け取ったが、「正直、あまり実感はない。今でも夢を見続けているよう。大きな事態になってしまい、責任が手に背中に乗ってきている感じです」と謙虚。是枝監督は「この映画にとって素晴らしい評価をいただいた」と称えた。

「怪物」は、小学校で起きた些細なけんかがメディアを巻き込んだ大事件へと発展していく過程を、3つの異なる視点から描いた。坂元氏は、「加害者をどう描けば被害者の存在に気付けるかという自分が考えてきたテーマを、小学校から中学校にかけて出会った友人との出来事を基に書いた」と説明した。

是枝監督は、4年半前に受け取ったプロットの段階で「いったい何が起きているのか分からないが、読むのが止まらない。自分にはない語り方で、エンタメとしても面白い。チャレンジしがいのある脚本だった」と述懐。坂元氏は、「監督やプロデューサーの力を借りながら、多くの知己を得て書き上げることができた」と感謝した。

実はカンヌには30年ほど前に訪れたことがある。知り合いの映画関係者の配慮で映画祭に参加し、「いつか自分の作品が上映されたら、どんなに幸せだろうと思っていた」という。その念願がかない今月17日の公式上映でレッドカーペットを歩いた。だが、「その翌日におなかを壊してしまい、ずっと寝込んでいたんです。その時、配給の方が持ってきてくれたウエハースがとてもおいしかった。カンヌに来て良かったと思いました」と冗談交じりに明かした。

 受賞後は多くの祝福が届き、「周りの方からおめでとうと言われるとうれしくなりますね」と笑みを浮かべた。その中には同作が受賞した、LGBTQを扱った作品が選ばれる独立賞「クィア・パルム賞」の審査委員長ジョン・キャメロン・ミッチェル監督から「人の命を救う映画だ」というメッセージが届き、「タクシーの中だったんですけれど、涙が出ました」と感激に浸った。

だが、今後については「けっこうベテランで、カスカスなんですよねえ。しぼっても何も出てこない状態で、これから何が書けるのか全く見えていない」と自虐。それでも、是枝監督は「チャンスがあればお願いしたい。声をかけ続けようと思う」と再タッグを熱望。坂元氏も「是枝監督は脚本家としても尊敬している。一回は偶然で、見上げている方なので簡単だとは思っていないが二回目という必然があったら幸せですね」と応じていた。 

 坂元 裕二(さかもと・ゆうじ) 1967年(昭42)5月12日生まれ。大阪府出身の56歳。86年、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しデビュー。91年、フジテレビ「東京ラブストーリー」が大ヒット。そのほか同局の11年「それでも、生きてゆく」、13年「最高の離婚」などを手掛ける。映画は21年「花束みたいな恋をした」と興収38億円を記録した。

 取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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