「PERFECT DAYS」でカンヌ男優賞の役所広司が会見「夢のような仕事でした」

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第76回カンヌ映画祭のコンペティション部門で、主演映画「PERFECT DAYS」(原題)で最優秀男優賞を受賞した役所広司が13日、東京・内幸町の日本記者クラブで共演の田中泯とともに会見を行った。

歓喜の授賞式から2週間余り。役所はトロフィを田中に見せつつ、「これまで自分がやってきた日本映画とは全く違う形の映画。配給も映画会社も何もない中で、こんな役を与えてもらい、監督がヴィム・ヴェンダースさんという夢のような仕事でした。かつカンヌにも選んでいただき、大きなおまけに男優賞をいただきました」と改めて感慨に浸った。

東京都渋谷区の公共トイレを改修する「The Tokyo Toilet」プロジェクトの世界発信として製作された作品。役所演じるトイレの清掃員がささやかな生活に満足する日々を丹念につむいでいった。現時点で日本公開は未定だが、「一人の男を淡々と追って細かく表現していく中で、自然に社会や物語が動いていく。観客の解釈の余地を残した、映画の力を感じさせる映画として完成したと思っている」と胸を張った。

1997年「うなぎ」で初めてカンヌに参加し、先に帰国した今村昌平監督に代わりパルムドールを受け取る大役を担ったが「あの時の記憶はほとんど飛んでいるんです」と苦笑い。それでも、「観客たちの熱狂と熱気を体験し、映画というものはパワーがあり、海外メディアにも日本映画のファンが多くて驚いた」と振り返った。

それから26年、今度は個人賞での戴冠に「作品自体の評判が良く、海外の記者さんからも男優賞いけるよと言われて嫌な気はしなかったが、信じてはいけないと思っていた。でも、さすがに名前を呼ばれた時はビックリした」という。帰国する日、ホテルの部屋に「ブラボー」と書かれたカードが入れられていた。いたずらかと思いドアスコープをのぞくと、自身の名前を読み上げた審査員の仏俳優ドゥニ・メノーシェが笑顔で立っていたそうで「そんなうれしいことがたくさんありました」と笑顔で話した。

さらにカンヌでは、「怪物」の是枝裕和監督、「逃げきれた夢」の二ノ宮隆太郎監督らとも会い、「国際映画祭で日本の映画人に会うと誇らしい気持ちになった」と述懐。その上で、日本映画のさらなる躍進を期待し、「ビジネスとして成功しなければいけないのはもちろんだが、そればかり追いかけていると日本映画界がやせていく気がする。自由な発想で始まって、何の制約もなく一つの作品を作り上げた『PERFECT DAYS』はいい例になると思う。日本にも才能のある監督や脚本家がたくさんいる。そういう人たちが撮りやすい環境を調え、映画に夢を持って入ってくる若者たちの力に少しでもなれればと思う」と意欲を示した。受賞は師匠の仲代達矢にも報告、「玄関先で拍手をしてくれました。お土産にシャンパンをもらいました」という。仲代も「切腹」(1962)、「怪談」(1965)がカンヌに選出されており、「『俺はもらえなかったなあ』とおっしゃっていましたが、本当に喜んでもらいました」といたずらっぽい笑みを浮かべた。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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