俳優組合「SAG-AFTRA」のストで、ヴェネツィア・トロント国際映画祭のレッドカーペットはどうなる?

写真: ©GETTY
スポンサーリンク

12日夜、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)と映画テレビ制作者同盟(AMPTP)の交渉が決裂した。今秋開催の映画祭の関係者にとって、悪夢のようなシナリオが現実となるかもしれない。

SAG-AFTRAは10日、PR会社やエージェントと電話でやり取りし、組合の幹部らはストライキのルールが宣伝活動に影響する可能性を強調していた。関係筋によると、主要な会社の映画・テレビ作品のプロモーションは禁止されるという。つまり、有名俳優はヴェネツィアやトロントのレッドカーペットを歩けず、エミー賞のキャンペーンにも参加することができないことになる。

ヴェネツィア映画祭(8月30日~9月9日に開催予定)の担当者は、“業界全体のために、迅速に合意に達することを願っています”と明かした。

トロント映画祭(TIFF)の関係者は、開幕日の9月7日までに取引がまとまらない場合、ハリウッド俳優がイベントを欠席する可能性を指摘した。TIFFの広報担当者は「業界や映画祭への影響は否定できません。数週間で迅速に解決することを願い、今年の映画祭の計画を練り続けます」と声明を出した。

現地時間13日夕方、クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』のロンドンプレミアは、キリアン・マーフィー、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピューら俳優陣がSAG-AFTRAのスト発表を前にフォトコールやインタビューを済ませられるよう1時間早められた。キャストは上映前に会場を去り、ノーラン監督は群衆に向け事情を説明した。

「残念ながら、彼らはストの看板を書くために会場を後にしました。公平な賃金を求め、脚本家組合の仲間に加わります」

ニューヨークで7月17日に予定されていた『オッペンハイマー』のレッドカーペットほか、今後のプレミアにも影響が出る見通しだ。俳優のマシュー・モディーンは、アイルランドのゴールウェイ映画祭に出席するため現地入りしていたものの、宣伝活動はできないと考えられる。

パブリシティ・マーケティング関係者は、今秋の映画祭シーズンに向け、緊急時の対応策を大急ぎで模索している。ヴェネツィア・トロント映画祭は秋の二大プラットフォームで、ヴェニスのラインナップは7月25日に発表予定。

とあるベテランエグゼクティブは語る。「ストがヴェニス・トロントの出品作に影響することはありません。すでに招待状は発送済みで、制作者の方々は受け入れてくれています。俳優が欠席し、プロモが行えないならば全く違ったイベントになるでしょう」

脚本家組合(WGA)のストがカンヌのレッドカーペットに影響することはなかった。脚本兼監督のウェス・アンダーソンやマーティン・スコセッシはイベントに出席し、監督として作品を宣伝した。しかし、SAG-AFTRAのストでゼンデイヤ(ヴェニスのオープニング作品に主演)ら有名俳優が参加できないとなると、すべてが変化してしまう。

とあるPRエグゼクティブは、以下のように述べている。「俳優が不在の場合、記者は映画祭の取材に来るのか?もし来ないなら、それは何を意味するか?多くの映画が、思うような注目やパブリシティを得られないだろう」

公開前に大きな話題を獲得している『オッペンハイマー』のような注目作は、さほど影響を受けないかもしれない。同作のキャンペーンに詳しいマーケターは“誰もがどんな作品か分かっている。レッドカーペットプレミアは、追加の楽しみにすぎない”と語った。

あるPRエグゼクティブは、俳優の飛行機代や高級ホテル代を支払わなくて済むことで、スタジオ側がこの状況を喜んで受け入れる可能性を示唆した。

一方、ヴェネツィア映画祭でお披露目予定のマイケル・マン監督『Ferarri(原題)』は、アダム・ドライヴァー、シェイリーン・ウッドリーら俳優陣の欠席に頭を抱えるかもしれない。配給会社のNeonは、同作の認知度を高めてアワードや国内公開へのランウェイをセッティングするためにも、マスコミ報道込みのヴェニスプレミアに懸けていたのだ。

Netflixも同様に、ヴェニスでのプレミアか予定されていたブラッドリー・クーパー主演作『Maestro(原題)』の計画を変更せざるを得ないだろう。クーパーは監督を兼ねているため宣伝活動ができるが、SAG-AFTRAとWGAのメンバーは演技に関する質問を避けつつ組合のルールを守るのが難しいはずだ。

アメリカで起きている俳優ストが、ヴェネツィア・トロント映画祭の妨げになることはない。元々これらのイベントには、ヨーロッパ、アジアやアフリカなど世界各地の作品が大量に出品され、どのみち大勢の俳優が出席するとみられる。しかし、SAG-AFTRAとAMPTPが迅速な解決に至らず、俳優をレッドカーペットに戻せなければ今秋の映画祭シーズンは非常に退屈になってしまうだろう。

※今記事は要約・抄訳です。オリジナル記事はこちら。翻訳/和田 萌

スポンサーリンク

Similar Posts