吉永小百合、山田洋次監督「こんにちは、母さん」は「ちょっととんでいて明るい母さん」
山田洋次監督、吉永小百合主演の映画「こんにちは、母さん」の完成披露試写会が31日、東京・丸の内ピカデリーで行われた。
2人のコンビは6作目で、中でも2008年「母べえ」、15年「母と暮せば」に続く「母」3部作の集大成的な位置づけの作品。吉永は、「前の2作では戦前から戦後のつらい時期を耐える母さんでしたが、今回はちょっととんでいて明るく、皆と一緒に生活している母さんです」と笑顔で話した。節目の90本目となる山田監督も、「素晴らしい俳優と力強い大勢のスタッフに恵まれて撮影ができた」と感慨深げに振り返った。
東京・向島を舞台に、恋をするなど生き生きと暮している母親の姿を、仕事に行き詰まり実家に帰って来た息子、進路に悩む大学生の孫らの視点を通して描く。息子役の大泉洋は、「吉永さんにお会いすると、どうしてこの人から俺が生まれたのかと思うが映画の中での関係は母子にしか見えません。古き良き日本の姿だが、若い人が見ると新しく思えるかもしれない。山田監督の新たな挑戦を見てもらいたい」と太鼓判を押した。
吉永はおばあさん役も息子を「おまえ」と呼ぶ江戸っ子気質の語り口も初めての経験で、「最初は戸惑いましたが、実際に下町を見て歩いてみて、そこで暮らす方が生き生きとしていらっしゃる姿を思い出しながら撮影に臨みました」と述懐。「おまえ」と呼ばれる側の大泉は、「とにかくお元気で可愛らしいが、お会いすると母さんにしか見えない。昔から言われているような気分になった」と満足げに語った。
山田監督は、「僕も最初は、吉永さんをおばあちゃんと呼ぶのには抵抗があった」と告白。その上で、「年相応の動きや表情、しぐさが必要になるが、吉永さんは大変美しく可愛らしい。そういう役として見るようになった」と意図を明かした。
原作となる戯曲では、ラストシーンで墨田川の花火が描かれているが、映画でも踏襲。山田監督は、「そこは変えられないと思っていたが、墨田川の花火大会が(コロナで)一昨年、昨年と中止になってしまった。昨年の秋に撮影したが、来年こそは絶対にあるだろうと願っていた。今年も中止になってしまうと映画が空々しくなってしまうので心配していたが、めでたく開催されホッとした」と安どの表情を見せた。
公開が9月1日に迫り、吉永は「監督が撮影前に『もしかしたら、途中でできなくなるかもしれない』とおっしゃっていて、とても驚きつらかった。でも撮影が始まるとどんどんお元気になって、本当に良かった。たくさんの方に見ていただくことを切望します」とアピール。山田監督は、「そんなこと言ったかなあ」ととぼけつつ、「毎回、公開前は判決を聞く被告の気分。できれば無罪であってほしいと思う」と謙虚に語った。
この日はほかに永野芽郁、宮藤官九郎、田中泯が登壇した。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元