A・デプレシャン監督、最新作「私の大嫌いな弟へ」引っ提げ6年ぶり来日

フランスのアルノー・デプレシャン監督が、最新作「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」が公開された15日、都内のホテルで来日会見を行った。

長年憎み合い疎遠になっていた姉弟が、両親の事故をきっかけに再会しぶつかり合いながらも人生を一歩踏み出そうとする物語。マリオン・コティヤールとメルビル・プポーが姉弟を演じ、昨年のカンヌ映画祭コンペティション部門に選出された。

08年「クリスマス・ストーリー」など、家族をテーマにした作品に定評のあるデプレシャン監督。「僕も年を重ねて成熟してきた。『クリスマス・ストーリー』ではラストで姉に悲しみを背負わせたが、今回は(姉の)アリスを解放させてあげたかった。だから、一つのゴールに向かって進んでいくストーリーにしたんだ」と解説した。

脚本は「綿密に書き込んだ方が、俳優がよりやりやすく自由になる」という信念で執筆し、出演者一人ずつと読み合わせを行うスタイル。その上で、コティヤールについて「どうして弟を憎んでいるのかなど、人物を探求する作業をする。登場人物を理解する過程でセリフを変更することもあった」と評価。対するプポーは「言葉一つにまでリスペクトするタイプ。独白の長ゼリフも全く変えなかった」と明かした。

大の親日家で、6年ぶりの来日。00年「エスター・カーン めざめの時」で来日した際に意気投合した青山真治監督にも言及し「美しいものに対して貪欲。『EUREKA』は付け足すところも削るところもない素晴らしい傑作。僕が唯一行ったカラオケも彼と一緒だった。人見知りなところとロックな側面が共存していた」と、昨年3月に早逝した盟友を悼んだ。

イングマール・ベルイマン監督を師と仰ぎ、監督生活は30年以上に及ぶ名匠。「芸術においては進歩がないと思っている。絵画ではラスコーの壁画からピカソまで進歩はない。だが僕は監督として、少しずつでも進歩できるように心がけています」と衰え知らずの意欲を見せていた。

「私の大嫌いな弟へ」のほか、デプレシャン監督のレトロスペクティブが9月29日まで東京・新宿区の東京日仏学院で開催されている。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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