杉咲花「市子」でタイトルロールを熱演し感慨「痛みと同時に多幸感に包まれた」
女優の杉咲花が主演の映画「市子」の完成披露上映会が6日、東京・テアトル新宿で行われた。杉咲は共演の若葉竜也、森永悠希、中村ゆり、戸田彬弘監督とともに舞台挨拶。「完成の時を迎えるとあっという間に初日を迎え、気づけば皆さんのもとにと届いている。高揚感と同じくらい寂しさも感じています。この光景を目に焼き付けたい」と話し、満場の客席を見渡した。
戸田監督が演出した2015年の舞台「川辺市子のために」を自ら映画化。恋人からプロポーズを受けた翌日に姿を消した市子の過去、真実が関わりのあった人々の証言によって浮き彫りになっていく。
杉咲は、「演じ手としてこう表現しようという欲をはがされて、起こっていることに心を揺さぶられる味わったことのない経験でした」と撮影を振り返る。さらに「演じていて、心が引き裂かれるような痛みがあったと同時に、自分の中に記憶として何度も再生したい多幸感に包まれていた」と充実した笑顔で語った。
恋人役の若葉は、「脚本を読んで、杉咲さんが市子をどう演じるのかすごく興味が湧いて、ぜひやらせてくださいと言いました」という。実際に対峙し、「目の前で目撃して心を奪われましたが、僕、『おちょやん』の時もプロポーズしているのに、いつもうまくいかないな」と、16年のNHK朝のテレビ小説での共演を引き合いに出し、会場の笑いを誘った。
戸田監督は映画化に際し、「市子という存在を追いかける映画ではあるが、他人を理解することの難しさを描くことが一つのテーマだった」と説明。これを受けて杉咲も、「自分のことを他者がどれだけ分かるのかと突きつけられる映画。どう受け止めるかによって、実生活に反映する気がしています。自分は関係ないと思っている人にこそ見てほしい。そして、心が揺さぶられたら広めてください」と真摯にアピールした。
「市子」は、12月8日から全国で公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元