年200本鑑賞したエディターが選ぶ、2023年の映画ベスト10
3月に開催されたアカデミー賞では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が旋風を巻き起こし、キー・ホイ・クアンとブレンダン・フレイザーの大復活劇から始まった2023年。
今年も映画に救われ、映画に勇気をもらい、映画に心を豊かにしてもらった1年でした。
そこで年間200本鑑賞するザ・ハリウッド・リポーターのエディターが選んだ2023年の映画ベスト10を発表します。
映画の力を感じさせる作品を中心に厳選しました。
10位『バービー』
ポップでオシャレなだけの映画だと思っていたら、個の尊厳をめぐるストーリーに仕上がっていたのには驚きです。
世界で14億ドルを超す大ヒットで興行的にも成功しているのがまたすごいところ。監督は、2024年カンヌ国際映画祭の審査委員長に選ばれたグレタ・ガーウィグです。
人間界とバービーランドを対比しながら、人生観や幸福論を深堀りしていく切り口はさすがの一言。
ピンク一色でキュートな映像なのに、観る人の隠された深層心理をあぶりだしてしまう鋭さは、映画界の新しい時代の到来を予感させます。
ゴールデングローブ賞:『バービー』&『メディア王 〜華麗なる一族〜』が最多ノミネート – THR Japan (hollywoodreporter.jp)
9位『ロスト・キング 500年越しの運命』
500年間も行方不明だった英国王リチャード3世の遺骨を発見した女性の実話を映画化。イギリスに住む主婦のフィリッパを演じるのは『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンス。
これまで不当な扱いを受け苦悩の日々を送っていたフィリッパですが、悪名高きリチャード3世の真の姿を探す旅に出ることで日常が輝き出します。
情熱があれば人生はいつでも自分の手で変えられる。そんな思いに突き動かされ未来を切り開いていくフィリッパに勇気がもらえます。
8位『ゴジラ-1.0』
『ゴジラ-1.0』の勢いが止まりません。アメリカでは興行収入が日本の実写映画で歴代1位になり、世界興行収入は100億円を突破。
戦後間もない日本を背景に“どんなに苦しいことがあっても生き抜け”いうメッセージは、現代を生きる私たちの心を大きく揺さぶります。
ゴジラや戦闘シーンが迫力満点なのも人気の秘密。ハリウッドで大絶賛された日本映画が、どこまで記録を伸ばしていくか注目です。
『ゴジラ-1.0』がアメリカの批評家に大ウケ:「可能な限り大きなスクリーンで観るべき」 – THR Japan (hollywoodreporter.jp)
7位『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』
大人気シリーズ『ミッション:インポッシブル』の最新作。イーサン・ハントを演じるトム・クルーズは今回も自分でスタントを完全制覇。
トム自身も俳優史上最恐のスタントだったと語る“崖からバイクジャンプ”は本作で最大の見どころです。
全速力で疾走するシーンや難易度の高いスタントをこなす裏には、ストイックなトレーニングや食事制限を続けてきた長年の努力があります。
ただ観客を楽しませたい一心で危険もかえりみず本物を見せようとする気概は、まさに唯一無二の映画スター。
CGが主流の時代に、人の手だけでここまで心を揺さぶられる映画を生み出してしまうことに驚きが隠せません。
6位『ポトフ 美食家と料理人』
19世紀のフランスを舞台にしたグルメ映画でもあり、“人生の秋”を迎えた美食家と料理人の愛の物語。
食で繋がった2人が作り出す極上のメニューの数々は、スクリーンから匂いが溢れてくるようなジューシーさ。
新鮮なお肉をグリルする音、湯気が立ち上る厨房、窓から差し込む木漏れ日など、目も心も満たされます。料理はミシュラン三ツ星シェフのピエール・ガニェールが監修を務めました。
キッチンが映し出されるラストシーンは、まるで人生の春夏秋冬を振り返っているような美しい瞬間。人生の尊さを噛み締めたくなる珠玉のラブストーリーです。
5位『枯れ葉』
フィンランドの名匠アキ・カウリスマキの6年ぶりとなる最新作は、6位に登場した『ポトフ 美食家と料理人』と同じく人生の残暑から秋に足を踏み入れた男女2人のラブストーリーです。
舞台は現代のヘルシンキですが、ノスタルジックな映画館、衣装、街並みを見ていると架空の世界へタイムスリップした感覚に。無表情で交わす言葉も少ない2人ですが、繊細な眼差しやしぐさから深い愛が通い合っているのが見てとれます。
アキ・カウリスマキ監督作品の独特な哀愁と愛らしさがスクリーンの隅々に漂い、81分で多幸感をたっぷり味わえます。懐かしいシネマを観てる気分にさせてくれる唯一無二の作品です。
4位『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
2023年アカデミー賞では最多11部門でノミネートし7冠を達成。ミシェル・ヨーはアジア系として初のアカデミー賞主演女優賞に輝き、新しい時代の幕開けを感じさせる受賞となりました。
コメディなのかアクションなのか分からないカオスさも見どころですが、母親から子どもへのラブレターを見たような愛に溢れたアクション・エンターテインメント。
自分がほしい愛情表現ではないから愛されていないわけではなく、反抗や怒りも愛情の裏返し。母が子を想う無条件の愛に心を打たれます。
3位『To Leslie トゥ・レスリー』
お酒におぼれ、家族、運、お金に見放されたシングルマザーのレスリーをアンドレア・ライズボローが演じアカデミー賞主演女優賞にノミネート。必死で這い上がろうとする姿を描いた感動作です。
どん底から再起する映画はたくさんあり、一歩間違えると俯瞰して観てしまうテーマ。それでも人間の底知れない強さを信じたくなったのは、アンドレア・ライズボローの演技力があったからこそ。
たとえボロボロでも未来に向かって歩む姿はただただ美しく、人間の可能性は計り知れないと痛感させられた至極のヒューマン映画。
2位『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオの6度目のタッグとなった今年大注目のサスペンス映画。3時間半もの超大作ですが、人間の滑稽さや非情さを余すところなく描いており緊張の糸が全く途切れません。
夫アーネスト(レオナルド・ディカプリオ)の悪事を見透かすような目をしたモリー(リリー・グラッドストーン)。2人は互いをどこまで理解していたのか、その心理戦からも目が離せません。
悪人なのか何も知らないだけなのか、観る側を惑わせてしまうレオナルド・ディカプリオの怪演は圧巻です。これまでにはない”情けない男”を見事に演じきっただけに、2度目のオスカー獲得へ期待が高まります。
デニーロに才能を見抜かれ、スコセッシに愛されたディカプリオの俳優人生 – THR Japan (hollywoodreporter.jp)
1位『TAR ター』
ラストが衝撃的だという前評判から、公開を指折り数えて楽しみにしていたケイト・ブランシェット主演の最新作。世界中で話題をさらったラストは、想像の斜め上をこえるものでしばらく呆然。
天才指揮者リディア・ターになりきるケイト・ブランシェットの生々しい演技は、ドキュメンタリー番組かと錯覚させられます。
驚愕のラストやケイト・ブランシェットの熱演で、鑑賞後の数日間は『ター』のことで頭がいっぱいでした。公開前も公開後も心を奪われ、数か月間にわたって浸れる映画にはなかなか出会えないものです。
魅了される作品に出会えると、映画を好きになった理由や映画の持つ素晴らしさに改めて気付かされます。今年も最高の一本に出会えて幸せでした。
2023年の映画ベスト10を発表しました。皆さんの今年のベスト映画はランクインしていましたか?気になる作品があった方は年末年始にぜひ楽しんでみてください。
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