石井岳龍監督「箱男」がベルリン国際映画祭に招待、27年前に頓挫したドイツでワールドプレミア
石井岳龍監督の最新作「箱男」が、第74回ベルリン国際映画祭(2月15~25日)のBerlinale Special(ベルリナーレ・スペシャル)部門に選出され、ワールドプレミアとして上映されることが決まった。
「箱男」は作家の安部公房氏が1973年に発表し、世界20カ国以上で翻訳された代表作。
段ボールを頭からすっぽりとかぶり、自己の存在証明を放棄した男がたどる数奇な運命を描き、欧米の著名な監督からも映画化のオファーが寄せられたが、幻惑的な執筆スタイルや難解な内容から安部氏サイドから許可が下りなかった。
その中で唯一、生前の安倍氏本人から映画化を託されたのが石井監督。
日独合作として企画を進め97年にドイツ・ハンブルグでクランクインする予定だったが、その前日に突如中止に。スタッフ、キャストはそのまま帰国することになった。
幻の企画と言われながらも石井監督は決してあきらめることなく、くしくも安部氏の生誕100年に当たる24年、27年前と同じ永瀬正敏主演で完成させた。
しかも、いったんは企画が頓挫したドイツの地でお披露目されることになり、「長い間、この作品にご尽力いただいた多数の関係者の皆さまに改めて深く感謝します。ずっと待っていてくれた永瀬さんをはじめ非常に優れた俳優、スタッフたちとアクチュアルな映画表現の可能性を追究しました。世界中の映画観客に、この挑戦的な映画を体験していただきたい」とのコメントを寄せた。
主人公の「わたし」を演じた永瀬は、「志半ばでほぼ切れかけた“思いの糸”が、こうしてつむがれたことが何よりうれしいですし、ドイツの地に招待されたことが大変光栄である意味奇跡です」と感激。「壮大なるロマンと“思いの糸”の強さが、世界中のたくさんの方々の心の中に共鳴することを願うばかりです」と期待している。
同じく27年前も出演予定だった佐藤浩市も、「感謝と同時にある感慨があります。27年前とは多少形を変えた作品とはいえ、箱の中からの『箱男』の目線は当時も今も変わりません」と自信ありげ。今回から参加した浅野忠信は、「とてもやりがいのある役を徹底的に楽しんで演じられたので、ドイツでどう見てもらえるのか今から楽しみです」と胸を高鳴らせている。
「箱男」は、日本では24年に公開予定。