『ホールドオーバーズ』レビュー ― ふぞろいな3人を描く心に響くコメディードラマ
現在公開中のアレクサンダー・ペイン監督最新作『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、ペインと映画『サイドウェイ』の主演ポール・ジアマッティが再タッグを組んだ作品で、2人はさらに魅力的な化学反応を見せている。本作には欠点もあるが、非常に満足のいく結末に向かうにつれて力強さを増すコメディドラマとなっている。
舞台は1970年のクリスマス、休暇を前にした古風なニューイングランドの名門私立学校。ジアマッティ演じるポール・ハナムは、気難しい考古学の教師で、休暇中に帰省できない生徒たちの“子守役”を引き受ける。
そして、校舎にただ1人残った生徒・アンガス(ドミニク・セッサ)は、ハナムと息子の戦死という辛い過去を抱えた学校の料理長・メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)との共同生活を余儀なくされる。やがて、ハナムとアンガスは様々な予期せぬ出来事を経験しながら、絆を深めていく―。
映画の前半は面白く、時に反復的な場面も多いが、最後の3分の1では相当な勢いを増していく。ほろ苦い結末には適切な哀愁があり、それは決して過度に強調されたりはしない。一方で、人々が互いに変化し、学び合うことができるかもしれないという可能性が、非常に力強く表現されている。
演技は、改善の余地がないほど素晴らしい。気難しい学者は型にはまったキャラクターになりかねないが、ジアマッティは辛辣なウィットと、ほんの一瞬見せる脆さを役に吹き込んでいる。観客は、徐々に彼のシニシズムの根底にある失望を理解するようになる。
新星のセッサは驚くほど才能があり、ジアマッティと同様、決して観客の同情を乞うことはない。彼は、アンガスの傲慢さと好戦的な面を強調しつつ、その尊大な態度の下に才能ある若者が潜んでいることに説得力を持たせている。また、ランドルフの出番は比較的少ないが、画面に登場するたびに、その強さと悲しみが強烈に伝わってくる。
冬の風景や古い校舎が優雅に撮影された本作は、時代と場所を生き生きと再現している。ペインがサウンドトラックでクリスマスの名曲を使いすぎていることは、技術面での唯一の欠点と言えるかもしれない。しかし、ラストでは、高まる感情が見事に控えめに表現されており、結果としてより力強い印象を残している。
※本記事は英語の記事から抄訳・編集しました。翻訳/和田 萌
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