“指定なし”作品で異例の大ヒット…『テリファー3』がレーティング・システムに与えた強烈な影響とは

TERRIFIER 3, David Howard Thornton as Art the Clown, 2024.
映画『テリファー 聖夜の悪夢』』写真: Cineverse /Courtesy Everett Collection
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スラッシャー映画シリーズ第3弾『テリファー 聖夜の悪夢』(以下、『テリファー3』)が北米で初週興収1890万ドルをたたき出し、街中をザワつかせた。本作は審査を受けていない“NR作品”で、ハリウッドの映画レーティング・システムに強烈な影響を与えた。

■“NR作品”の常識を覆す?!

コロナ禍前は、テレビでの宣伝などに対する厳しい制約が原因で、NR作品を上映する映画館はほとんどなかった。しかし時代は変化し、『テリファー3』は2513館の劇場で全米公開されることとなったのである。

『テリファー3』は今や、NR作品の北米歴代興収でトップになる道を駆け上がっている。本作の製作費はわずか200万ドルで、クリス・マクガーク氏が率いる製作会社Cineverse Corp.もほとんど宣伝費用をかけていない。

コロナ禍と昨年のストライキの影響で、映画の公開スケジュールは未だに不安定な状態にある。そして大半の劇場は、前週に『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が大コケしたこともあり、確実なヒットが見込まれる作品を上映することを拒まなかったというわけだ。

■ルール適用外の強み

審査を受けていない『テリファー3』は、アメリカでレーティング・システムを管理するCARAが設けるいかなるルールにも従う必要がなかった。もし本作が提出されていれば、17歳以下は鑑賞不可の“NC-17指定”を受けた可能性がある。

一方で、CARAに作品を提出し、最終的にNR指定に決定した場合は、CARAの宣伝ルールに従わなければならない。つまり、作品の宣伝を放送できず、予告編の上映も制限されてしまうのだ。

2000年代初期、ハリウッドのスタジオや任意のレーティング・システムは「若者にR指定作品を積極的に勧めている」として、議会によって糾弾された。その後、システムは審査理由をより詳しく提供するようにアップデートされ、宣伝ルールもさらに厳しくなったのである。

■ホラー界の気鋭スタジオ・Cineverse

Cineverseは主にデジタルマーケティングやブランドコンテンツを扱うベンチャー企業だが、現在は映画館での存在感を拡大。マクガーク氏によると、『テリファー3』のマーケティング費用はわずか50万ドルだという。Cineverseはホラーファン向けウェブサイトや配信チャンネルのほか、40ものポッドキャストのネットワークを所有。同氏は、これらのプロパティ上での宣伝は500万〜1000万ドル相当のメディア価値があったと見積もっている。

これまで、500本もの作品に携わってきたマクガーク氏は、「自費のマーケティング費用と興行成績がこのような比率になる映画に出会ったことはありません。とてつもない記録です」と驚きを表しながら、成功の理由について「さまざまなアプローチで観客を見つけ出し、国のメディアを除くあらゆる手段を活用したから」と見解を示した。

■‘22年公開の第2弾が予想外のヒット

超低予算で製作された第1弾は劇場公開されることがなかったが、2022年の第2弾『テリファー 終わらない惨劇』は当初、第3弾よりはるかに少ない770館で公開された。マクガーク氏は製作費25万ドルの第2弾が1週間ほどで公開を終えると考えていたというが、人気を集めた同作は、最終的に上映劇場を1500館へと拡大。北米では、累計興収1000万ドルを記録した。

そして、前売りチケットの売り上げやSNSでのトレンドによって確実にヒットが見込まれた第3弾は、マクガーク氏曰く「劇場の確保に苦労しなかった」という。

「成功は想定していましたが、ここまでとは考えていませんでした。未知の動物を扱っている感じですね。人々は、こんな道を辿るNR作品を未だかつて観たことがなかったので」

※本記事は英語の記事から抄訳・編集しました。翻訳/和田 萌 

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