『ノー・アザー・ランド』監督、イスラエル当局により拘束か

本年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門受賞作『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』にて監督を務めた一人のハムダン・バラルが、ヨルダン川西岸地区での小競り合いに際して暴行を加えられ、イスラエル軍により拘束されたという情報が入ってきた。
このニュースの出所は同じく『ノー・アザー・ランド』で監督を務めたユヴァル・アブラハムのX上における投稿だ。月曜日、アブラハムはXでバラルがイスラエル人入植者によって殴る蹴るの暴行を加えられた上、駆けつけたイスラエル軍により拘束されたと主張した。また、彼は事件当時のバラルの様子を「頭や腹部を負傷していて、ひどく出血していた」と表現している。
事件は月曜日の夜、バラルの故郷であるマサーフェル・ヤッタ地域、スーシャ村の近くで起こった。活動家団体であるユダヤ人非暴力機関が伝えるところによれば、村の住人たちが一人の入植者に対して立ち去るように促したところ、武装した10人以上の集団が現れ、貯水タンクや防犯カメラの破壊や略奪行為に及んだという。
一方、月曜日に発表されたイスラエル国防軍(IDF)の説明によれば事件は「複数人のテロリストがイスラエル市民に対して石を投げるなどの嫌がらせを行い、彼らの乗用車を破損した」ことをきっかけに起こったそうだ。軍によれば、事態はその後、双方が石を投げ合うなどの小競り合いに発展し、警察と軍が現場に駆けつけた際には「数人のテロリストが治安部隊に対して石を投げ始めた」と経緯を説明している。
しかし、いずれの側による説明も、事件の結果として3人のパレスチナ人が拘束されたという点では一致している。
ユダヤ人非暴力機関によればこの事件によって負傷したバラルは警察署にて勾留されているそうだ。なお、同団体の説明によれば、活動に従事していた5人のアメリカ国籍保持者も入植者たちによる攻撃に巻き込まれたという。また、イスラエル国防軍の伝えるところによれば、拘束された中の一人にはイスラエル市民も含まれており、拘束された人々は「警察当局により、更なる取り調べを受けることになっている」そうだ。
『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の制作にはアブラハムとバラルを含めたイスラエル人とパレスチナ人の監督4人が参加しており、同作は本年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門受賞作に輝いた。同作が舞台とするのはまさしく今回の事件が起こったマサーフェル・ヤッタ地域で、映画は同地域で故郷を奪われていくパレスチナ人たちの現実に迫ったものである。
なお、『ノー・アザー・ランド』はアカデミー賞受賞作であるにも関わらず、いまだに米国内での配給元が見つかっていないそう。アブラハムは、同作のイスラエル軍に対する批判的な描写がその原因だと主張している。
バラルの無事を願いつつ、続報を待ちたい。
※本記事は要約・抄訳です。オリジナル記事(英語)はこちら
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