ロバート・レッドフォード89歳で逝去―語られなかった幻の続編秘話

(左から)カレン・カールソン、ロバート・レッドフォード、『候補者ビル・マッケイ』(1972年)より 写真:Everett Collection
(左から)カレン・カールソン、ロバート・レッドフォード、『候補者ビル・マッケイ』(1972年)より 写真:Everett Collection
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レッドフォードと“続編”の距離感

ロバート・レッドフォードは、その長きにわたるキャリアの中で続編映画を好まなかった俳優である。しかしレッドフォードの作品歴の中には、公開から数十年を経てもなお続編の可能性が語られた作品が存在した。

追悼と『候補者ビル・マッケイ』の位置づけ

俳優、映画製作者、そしてサンダンス・インスティテュートの創設者として知られるこの伝説的人物は、89歳でこの世を去った。レッドフォードの遺した足跡は『明日に向って撃て!』(1969年)、『スティング』(1973年)、『大統領の陰謀』(1976年)といった数々の名作によって彩られている。

※サンダンス・インスティテュート(Sundance Institute)とは、ロバート・レッドフォードが1981年に設立した非営利団体のこと。


映画『明日に向って撃て!』(1969年)写真:Amazon Prime Video
『明日に向って撃て!』(1969年)写真:Amazon Prime Video
『スティング』(1973年)写真:Amazon Prime Video
『スティング』(1973年)写真:Amazon Prime Video

1972年、レッドフォードはマイケル・リッチー監督による政治風刺劇『候補者ビル・マッケイ(原題:The Candidate)』に出演し、カリフォルニア州上院選挙に挑む型破りな新人候補ビル・マッケイ役を演じたのである。本作はアカデミー賞で2部門にノミネートされ、ジェレミー・ラーナーの脚本賞受賞という栄誉を手にした。

ロッド・ルーリー監督との続編プラン

映画監督ロッド・ルーリーは、2001年公開の『ラスト・キャッスル』でジェームズ・ガンドルフィーニ、マーク・ラファロとともにレッドフォードを演出した人物である。

ルーリーは米『ハリウッド・リポーター』に対し、長年にわたりレッドフォードと共に『候補者ビル・マッケイ』の続編構想を練っていたことを明かしている。

ルーリー自身、2000年にアカデミー賞にノミネートされた政治スリラー『ザ・コンテンダー』の脚本・監督を務めており、その流れで『候補者ビル・マッケイ』の続編についての会話が『ラスト・キャッスル』撮影中に始まり、作品完成後もしばらく続いたという。レッドフォードは構想に好意的だったものの、ルーリーが脚本を完成させることはなかった。

『ラスト・キャッスル』(2001年)写真:Amazon Prime Video
『ラスト・キャッスル』(2001年)写真:Amazon Prime Video

「ロバートの願いのひとつは、ビル・マッケイの物語を続けることだった。ロバートは良くも悪くも徹底的に脚本を練り直す人物であり、このアイデアも常に議論の段階にあった。『どんな物語になるのか』という話が中心で、出演を望んでいたのはデンゼル・ワシントンジョージ・クルーニーのいずれかだった。ロバートが演じるマッケイは、当時すでに元大統領となっており、新たな候補者に助言を与える役どころになる予定だったのだ」とルーリーは語る。

「我々は何時間もかけて、ロバートがやりたいこと、やりたくないことを語り合った。そして『ラスト・キャッスル』の撮影が終わった後も、手紙を交わしながら話し合いを続けていた。だが、ついに実現することはなかったのだ」とルーリーは振り返っている。

(左から)ロバート・レッドフォード、マーク・ラファロ、ロッド・ルーリー監督、『ラスト・キャッスル』(2001年)撮影現場にて 写真:Everett Collection
(左から)ロバート・レッドフォード、マーク・ラファロ、ロッド・ルーリー監督、『ラスト・キャッスル』(2001年)撮影現場にて 写真:Everett Collection

脚本家ラリー・ゲルバートへの依頼

最終的に、レッドフォードは続編構想の方向性を変え、米コメディドラマ『マッシュ(原題:M*A*S*H)』(1972~1983年)のプロデューサーであり『トッツィー』(1982年)の共同脚本家でもあるラリー・ゲルバートに脚本執筆を依頼することとなった。

2人は2003年初頭、ニューヨーク・タイムズ紙の取材でこの企画について語っている。その際、レッドフォードは自らは続編に否定的だとしながらも、再びアメリカ政治を風刺するには絶好のタイミングだと説明していた。そしてレッドフォードは「真実は恐ろしくおぞましい。だが、その恐ろしさゆえに、ある種の娯楽性を持っているのだ」と付け加えている。

ロバート・レッドフォード 写真:George Pimentel/Getty Images
ロバート・レッドフォード 写真:George Pimentel/Getty Images

マーベルでの再登板と『候補者ビル・マッケイ』続編の頓挫

レッドフォードはその後のキャリアにおいて続編作品に登場することもあった。たとえば2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)に続き、アレクサンダー・ピアース役を再演している。しかし、『候補者ビル・マッケイ』の続編にかんしては、ついにゴーサインが出ることはなかったのである。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)画像:Amazon Prime Video
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)画像:Amazon Prime Video

ロッド・ルーリー監督からの讃辞

それでもルーリーは、レッドフォードと仕事をともにできたことに感謝を示している。ルーリーはサンダンス・インスティテュートでの功績、そして数々の偉大な作品歴を称賛し、特にある1本を強調した。

「ロバートは史上最高の映画に主演した。これはあくまで私個人の意見だが、それが『大統領の陰謀』だ。『ラスト・キャッスル』の撮影中、私たちは週に三度夕食をともにしたが、『大統領の陰謀』についての会話は尽きることがなかったのだ」とルーリーは語った。

『大統領の陰謀』(1976年)写真:Amazon Prime Video
『大統領の陰謀』(1976年)写真:Amazon Prime Video

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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