ハリー・スタイルズ新アルバム『Kiss All The Time. Disco, Occasionally』全曲解説 4年ぶり新作の魅力
英国のポップスター、ハリー・スタイルズが約4年ぶりとなる新アルバム『Kiss All The Time. Disco, Occasionally』をリリースした。
2022年のグラミー賞受賞作『Harry’s House』以来となる本作は、2019年の『Fine Line』のギターベースのポップロックと、『Harry’s House』で印象的だったシンセ主体のサウンドを融合させた作品。ディスコやシティポップの要素も取り入れながら、アーティストとしての現在地を示す意欲作となっている。
先行シングル「Aperture」は今年1月に公開され、アルバムへの期待を高めた。さらにスタイルズはワールドツアー「Together, Together」を発表。米国ではマディソン・スクエア・ガーデンでの30公演の長期公演も予定されている。
ここでは、全12曲で構成された『Kiss All The Time. Disco, Occasionally』をトラックごとに見ていく。
『Kiss All The Time. Disco, Occasionally』全曲レビュー
「Aperture」
約4年ぶりのアルバムの幕開けを飾るのは、先行公開された「Aperture」。シンセサイザーを中心にした約6分の楽曲で、緊張感と解放感が交互に訪れる構成が印象的だ。
プレコーラスでは「自分が知らないことを知るのが一番だ/レンズの”絞り”は光を取り込む」と歌い、サビでは「僕たちは一緒にいるべき存在/結局のところそれは愛だけだった」とメッセージを提示する。
ややディスコ色が強いサウンドながら、アルバムの中では比較的落ち着いたトーンの楽曲。切なさと希望が同時に漂う雰囲気は、アルバム全体のテーマを象徴している。
「American Girls」
アルバムの中では比較的シンプルなポップソング。カリフォルニアの海岸道路を窓全開で走るような軽快さがあり、スタイルズの過去作のサウンドが自然に溶け合っている。
「友人たちはアメリカの女の子に夢中なんだ/世界中で何度もその光景を見てきた」と、どこかユーモラスな歌詞も印象的。キャッチーで楽しい楽曲だが、アルバム全体の中ではウォームアップ的な位置づけと言える。
「Ready Steady Go!」
アルバムの勢いが本格的に加速するドリーミーなポップロック曲。コーラスでは加工されたボーカルが使われ、ファンキーな雰囲気を生み出している。
「一度光の中に入れば、楽しさはすでに倍になる」というフレーズは耳に残りやすく、自然と口ずさみたくなるキャッチーさがある。
「Are You Listening Yet?」
タイトルどおり「もう聴いている?」と問いかけるようなエネルギッシュな楽曲。ギターを前面に押し出したサウンドが特徴で、アルバムの中でも特に勢いのある1曲だ。
「もう選択肢は残っていない/ちゃんと聴いているのか?」という歌詞は、リスナーに注意を促すかのようでもある。半ば語りかけるようなボーカルとギターのリズムが印象的なトラック。
「Taste Back」
どこか2000年代後半のインディーポップを思わせる雰囲気で、特にヴァンパイア・ウィークエンドのサウンドに近い軽快さが感じられる。
楽曲のテーマは愛と、その不足。ブリッジの展開が際立つほか、「どうして僕を“ベイビー”と呼べる自信があるんだ?」「そんな話し方をするなんて、パリで孤独だったのかい?」といった印象的な歌詞が並ぶ。
「The Waiting Game」
アルバム中盤でテンポを落とすシンセポップ曲。静かな内省を感じさせる内容で、スタイルズ自身の立場や名声について思いを巡らせているようにも聴こえる。
「自分の欠点をロマンチックに語り/それを止める力を見ないふりする」といった歌詞には、自己分析のニュアンスも漂う。ラストのアウトロも美しく、楽曲の余韻を引き立てる。
「Season 2 Weight Loss」
タイトルの奇妙さが目を引くが、楽曲はエレクトロポップ色の強い1曲。冒頭では歪んだボーカルエフェクトが使われ、アルバム全体で見られる実験的な声の演出がここでも際立つ。
「ときどきは光を取り入れよう/たまには立ち止まることも必要だ」というフレーズが印象的で、グルーヴ感のある楽曲群の中に位置している。
「Coming Up Roses」
アルバムの中でも特にロマンチックな楽曲。ワルツ調のリズムで展開し、まるで恋愛映画のクライマックスを彩るような壮大さを持つ。
これまでのサウンドとは異なり、よりシンプルなアレンジが採用されており、アルバムのディスコ色の強い楽曲群の中で独特の存在感を放っている。
「Pop」
アルバムの中でも特に楽しいトラックのひとつ。ディスコとシンセポップを強く打ち出した楽曲で、曲中に繰り返される「pop!」のフレーズが耳に残る。
シンプルながら中毒性の高いサウンドで、ライブでも盛り上がりそうな1曲だ。
「Dance No More」
グルーヴ感あふれるディスコ寄りの楽曲で、先行曲「Aperture」が示した方向性をさらに押し広げたトラック。
キャッチーなメロディーに加え、ロック要素を含んだビートと力強いアウトロが印象的で、シングル候補としても十分なポテンシャルを持つ。
「Paint By Numbers」
アルバム終盤で雰囲気を落ち着かせるアコースティック曲。冒頭の「誰かに気づいてもらえることは、なんて素晴らしい贈り物だろう」という歌詞が印象的だ。
世界を旅して過ごした時間を思わせる穏やかな空気が漂い、スタイルズの静かな一面を感じさせる楽曲となっている。
「Carla’s Song」
アルバムのラストを飾るのは、メランコリーと希望のあいだを漂うドリーミーな楽曲。
最後の歌詞「君の好きなものは分かっている/いつでも聴けるよ」という一節が、作品全体のトーンを静かに締めくくる。
『Kiss All The Time. Disco, Occasionally』は、過去の作品の要素を引き継ぎながらも、新たなサウンドへと踏み出したスタイルズの現在を映し出すアルバムとなっている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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