ヒアルロン酸注射「やりすぎ」の反動 ハリウッドセレブが相次ぎ除去、それでもフィラー人気が続く理由
ヒアルロン酸注射の「やりすぎ」が、ハリウッドで大きな転換点を迎えている。 クリスティン・デイヴィスやコートニー・コックス、サイモン・コーウェルらが相次いでヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸フィラー)の除去を公表し、「不自然な仕上がり」への反動が広がっている。
一方で、ヒアルロン酸注射そのものの人気は依然として高いままだ。なぜ今、逆風が強まっているのか。形成外科医への取材や最新の研究結果をもとに、その背景と適切な向き合い方を探る。
ヒアルロン酸注射をやりすぎたセレブたち クリスティン・デイヴィスらが除去を告白

ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』のシャーロット役で有名なクリスティン・デイヴィスは、「容赦なく笑いものにされ、涙が出るほどつらかった」と振り返る。
『アメリカン・アイドル』など人気オーディション番組のプロデューサーとして知られるサイモン・コーウェルも「もう十分だった」として顔のフィラーをすべて除去。ドラマ『フレンズ』のモニカ役や映画『スクリーム』シリーズに出演のコートニー・コックスは「いろいろやりすぎてしまった」と認め、ロブ・カーダシアンの元婚約者ブラック・チャイナも「全部取り除きたかった」と明かしている。
公表してはいないものの、トム・クルーズも数年前、頬が大きく膨らんだ姿から「リスのような頬」だと話題になり、ヒアルロン酸注射を受けたのではないかとの憶測を呼んだ。
かつて「若返りの切り札」として人気を集めたヒアルロン酸注射だが、近年は「やりすぎ」による不自然な仕上がりへの反省が、ハリウッドで広がり始めている。

ヒアルロン酸注射はなぜ人気になった?SNSが後押しした美容医療ブーム
ヒアルロン酸注射は、加齢によって失われた顔のボリュームを補う美容医療として広く普及した。
ビバリーヒルズの形成外科医ジェイソン・B・ダイヤモンド医師は、「2010年から2020年にかけて、SNSの普及によってヒアルロン酸注入は爆発的に人気を集めた」と振り返る。
多くのセレブやインフルエンサーが施術体験を公開したことで、「手軽に若返る方法」として認知が拡大。一方で施術件数の増加とともに、仕上がりに違和感を覚えるケースや合併症も目立つようになった。
ダイヤモンド医師は、「一般的に行われているヒアルロン酸注射の多くは、解剖学的に適切とは言えず、不自然な結果につながることがある」と指摘する。
サンディエゴの形成外科医ダイアナ・ブレイスター・ゴッシュ医師も、「手術をせずに顔のボリュームを補えることへの期待が大きかった。しかし、頬骨や唇、フェイスラインまで、あらゆる悩みをヒアルロン酸注射で解決しようとした結果、使いすぎが起きてしまった」と話す。
ヒアルロン酸注射「やりすぎ」を招く2つの要因
専門医が共通して指摘する問題は、大きく2つある。
1つ目は、ヒアルロン酸が注入した場所から移動する「マイグレーション」だ。
ヒアルロン酸は注入した場所にとどまり続けるとは限らない。顔は日常的に動き続けるため、時間の経過とともに少しずつ周囲へ移動し、本来意図した位置とは異なる場所で膨らみを生じることがある。
ダイヤモンド医師は、「顔の軟部組織は骨のような支えがないため、最終的には重力の影響で下方へ移動し、不自然な見た目になりやすい」と説明する。
2つ目は、「ヒアルロン酸は半年から1年半で体内に吸収される」という従来の認識が、必ずしも正しくなかったことだ。
2024年に発表された33人を対象とした研究では、被験者全員で注入から2年後もヒアルロン酸が残存していることが確認された。さらに、1人では15年後も残存していたことが確認されている。
「消えたと思って追加で注入した結果、実際には以前の注入材の上へ重ねて注入されていたケースも少なくありません」とゴッシュ医師は話す。
ヒアルロン酸が体内に残ることで異物として炎症反応を引き起こし、むくみや腫れが長引く原因になることもあるという。
ヒアルロン酸注射を除去する費用はいくら?
ヒアルロン酸注射は施術だけでなく、除去(溶解注射)にも高額な費用がかかる場合が多い。
米テキサス州オースティンで注入治療を専門とする美容施術者は、「顔に入れたヒアルロン酸注入材をすべて溶解するために5,000ドル(約80万円)かかった」と自身の体験を明かしている。
ヒアルロン酸注射の「手軽に受けられる美容医療」というイメージとは裏腹に、一度やりすぎてしまうと、元の状態に戻すためにさらに時間と費用が必要になるケースも少なくない。
ヒアルロン酸注射は避けるべき?専門医が勧める適切な使い方
ゴッシュ医師は、「適切に行われた唇へのヒアルロン酸注射は、現在でも安全な施術の一つと考えている」と話す。
鼻の脇から口元に伸びるほうれい線や、口角から顎へ伸びるマリオネットラインに、ごく少量のヒアルロン酸を注入することにも肯定的で、「しわを完全になくそうとするのではなく、少しだけ浅く見せる程度にとどめることが大切です。やりすぎないことが最も重要です」と語る。
今回取材した専門医はいずれも、ヒアルロン酸注射そのものを否定しているわけではない。適切な診断のもと、必要な部位に必要最小限の量を注入することが、自然な仕上がりにつながると強調している。
近年の美容医療では、「変化が分からないくらい自然な仕上がり」を目指す考え方へとシフトしつつある。
ヒアルロン酸注射の代替治療 脂肪注入やフェイスリフトが人気
ヒアルロン酸注射への逆風が強まる一方で、新たに注目を集めている施術もある。
その一つが、自身の脂肪を利用する脂肪注入(自己脂肪移植)だ。
太ももやお腹などから余分な脂肪を吸引し、顔や胸などのくぼみやボリュームを出したい部位に注入する美容治療で、ゴッシュ医師は「肌の若返りやコラーゲン生成を促す効果も期待できる」と説明する。
注目を集める脂肪注入だが、「どれだけ脂肪が定着するかを正確に予測することは難しい」という課題もあるという。
もう一つ人気を集めているのが、ディーププレーンフェイスリフト(ディーププレーン法)だ。
これは顔の表面だけでなく、深層の筋膜(SMAS)や靭帯(リガメント)を剥離・移動させるフェイスリフトの一種で、頬やフェイスライン、首のたるみを改善するもの。従来の術式よりも顔を引っ張ったような印象になりにくいことから、近年は関心が高まっている。
それぞれにメリットとリスクがあり、自分に合った施術を選ぶことが重要だ。
「自然に年を重ねる」という選択肢もある
もちろん、自然に年齢を重ねるという選択肢もある。費用もリスクもかからない。とはいえ、ここまで読んだ人なら、その選択だけで満足するとは限らないだろう。
少なくとも、近年のハリウッドでは「若返ること」よりも、「いかに自然に見せるか」が新たな流行になりつつある。
ヒアルロン酸注射を完全に否定するのではなく、本当に必要な場所へ必要な量だけ使う――。そんな「引き算の美容」が、これからのスタンダードになっていくのかもしれない。
日本でもヒアルロン酸注射は美容医療の代表的な施術として定着している一方で、近年はより自然な仕上がりを重視する傾向が強まり、控えめな注入を重視する考え方が広がりつつある。
ハリウッドで起きている変化は、日本の美容医療にも影響を与える可能性がありそうだ。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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