黒沢清監督、菅田将暉主演の『クラウド』がヴェネチア国際映画祭に出品
黒沢清監督の『Cloud クラウド』が、第81回ヴェネチア国際映画祭(8月28日~月7日)のアウト・オブ・コンペティション部門に選出された。
エンタテインメント性の高い世界各国の最新作が集う特別招待的な部門で、黒沢監督にとっては銀獅子賞(監督賞)を受賞した20年『スパイの妻』以来、通算5度目のヴェネチアとなる。「シンプルな娯楽映画を目指した作品がヴェネチアに選ばれたと聞き、大変驚いています」と素直な心情を語ったコメントを寄せた。
『Cloud クラウド』は菅田将暉が主演で、日常と隣り合わせの恐怖を描くサスペンス・スリラー。「転売ヤー」の吉井が、無意識にSNSに投稿した情報がさまざまな憎悪を生み出し、自身が標的となって追い詰められていく物語だ。古川琴音、奥平大兼、窪田正孝らが共演している。
映画祭ディレクターのアルベルト・バルベーラは、「黒沢監督を世界中の映画ファンの間で熱狂的な人気監督に押し上げた、過去の映画で探求したテーマと物語へ原点回帰しています」と解説。さらに、「前半は現代的なアプローチで始まりつつ、後半はユーモアを交えたガンアクションパートが続き、とびきりクールなラストを迎えます。本映画祭のミッドナイト上映にピッタリの映画」と評価している。
黒沢清監督は「菅田将暉の善人とも悪人ともつかない絶妙な両義性が、この幸運を引き寄せてくれたのでしょう」と分析。菅田は、「黒沢監督の作品で海外の映画祭に行くことをずっと夢見ていました。感謝です。大いに楽しんでもらえることを願っています」と、水の都でのお披露目を心待ちにしている。なお、北野武監督・主演で浅野忠信、大森南朋が共演する62分の中編『BROKEN RAGE』も同部門で上映される。
また、坂本龍一さんのドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto | Opus』が昨年のアウト・オブ・コンペ部門で上映された空音央監督の長編劇映画デビュー作『HAPPYEND』はオリゾンティ部門に選ばれた。
こちらは、作家性の強い革新的な作品が並ぶコンペティション部門。空監督は、「ヴェネチア国際映画祭が魅力を受け止め、地平という意味を持ち、新しい視点を見いだすオリゾンティ部門に選出してくれたことを心からうれしく思っています。愛のこもった素晴らしい仕事をしてくれたキャスト、スタッフに感謝します」と喜びを語った。
『Cloud クラウド』は9月27日、『HAPPYEND』は10月4日にそれぞれ日本で公開される。
取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
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