世界的スキャンダルから復活!モニカ・ルインスキー×アマンダ・ノックスが初対談|「見出しの裏には『生身の人間』がいる」―― 共同製作を手がけた新作ドラマ『アマンダ ねじれた真実』に込めた想いとは

(左から)アマンダ・ノックス、モニカ・ルインスキー 写真:Mark Champion
(左から)アマンダ・ノックス、モニカ・ルインスキー 写真:Mark Champion
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モニカ・ルインスキーアマンダ・ノックス――彼女たちは世界的スキャンダルと、世間の好奇の目にさらされる屈辱、そして数十年にわたる激しいメディアの監視を生き抜いてきた。そしていま、ふたりは「沈黙」から抜け出し、自分たちの物語を取り戻す準備が整っている。

8月20日よりディズニープラスの「スター」にて独占配信中の新作ドラマ『アマンダ ねじれた真実』は、2007年にイタリアで起きたペルージャ英国人留学生殺害事件と、その後世界を揺るがした“マスコミの大騒ぎ”について描いている。

(左から)アマンダ・ノックス、モニカ・ルインスキー=米『ハリウッド・リポーター』2025年8月20日号 写真:Mark Champion
(左から)アマンダ・ノックス、モニカ・ルインスキー=米『ハリウッド・リポーター』2025年8月20日号 写真:Mark Champion

当時20歳のアメリカ人交換留学生だったアマンダ・ノックスは、ルームメイトの英国人留学生メレディス・カーチャーを殺害したとして検察に執拗に追及され、2度の有罪判決と2度の無罪判決を経験。その間、ノックスは貪欲な世界中のメディアによりスキャンダルの象徴へと仕立てられていった。そして2017年、初の公開講演会に登壇したノックスの前に現れたのは、ビル・クリントン元米大統領の不倫相手として同じようにメディアの渦に翻弄されてきたモニカ・ルインスキーだった。

その後ホテルの一室で交わされた静かな対話が、やがてふたりの深い絆と共同製作へと発展する。以下、真実を語る力を取り戻したアマンダ・ノックスとモニカ・ルインスキーが米『ハリウッド・リポーター』の合同インタビューに登場し、どのようにしてお互いの友情を築き、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』を共同プロデュースするに至ったかを語った。

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▼メディアの嵐が結んだ絆…ふたりの出会い

アマンダ・ノックス 写真:Mark Champion
アマンダ・ノックス 写真:Mark Champion

――非常に若い年齢で、おふたりとも想像し難いようなメディアの嵐を経験されました。そのことは、お互いに心を開くきっかけになったのでしょうか?

アマンダ・ノックス(以下、ノックス):はい、その通りです。このような経験をすると、一生消えない深い傷を負います。人とつながりたいという強い気持ちはあるのですが、長い間傷つけられたり利用されたりすると、「自分の言動をすべて悪く解釈されるのではないか」という恐怖が常につきまといます。

モニカに出会ったとき、私は少しずつ「自分のために立ち上がる」ことの意味を理解し始めていました。そして、周囲の人が私をただの見出しではなく、ひとりの人間として見てくれることを願っていました。だからこそ、彼女と話すことは大きな安心感につながりました。私より前に同じ道を歩んだ人は、彼女しかいなかったのです。

モニカ・ルインスキー(以下、ルインスキー):アマンダと出会ったとき、私は彼女の中に自分の痛みを感じました。彼女は当時、押し込められた枠から抜け出そうとしていたのです。

ただ、公の場で「自分の物語を取り戻そう」とする人は多くありません。私たちにはお手本となるような人もいませんでした。状況は違っていましたが、数々の裏切りを経験したにもかかわらず、私はいまでも人を信じられることを幸運に思っています。世界や人々について楽観的でいられることが、私を前進させているのだと思います。

モニカ・ルインスキー 写真:Mark Champion
モニカ・ルインスキー 写真:Mark Champion

ノックス:実際、モニカは私に安心感を与えてくれました。最初から私たちは、この作品(『アマンダ ねじれた真実』)を「アマンダ・ノックスが刑務所から出て終わる法廷ドラマ」にはしたくないと考えていました。

本作は、トラウマの長期的な影響と、人がどうリスクを取りながら人生を立て直し、再び人を信じられるようになるのかを描くものです。トラウマを負った後も、人生は続いていきます。成長や可能性もあります。前に進むには勇気や思いやり、好奇心が必要です。だからこそ、これは語る価値のある物語だと思います。

ルインスキー:「法廷を超えて描くこと」が、私たちにとってはとても大事でした。もし「6話で終わり、無罪判決で幕を閉じる」だけなら、簡単ですがありきたりになってしまいます。抵抗はありましたが、私たちは8話構成を提案しました。物語は法廷で終わらないからです。世間は次に進んでも、当事者は何年もかけて自分を立て直し、人生を理解しようとします。

人々に知ってほしいのは、見出しが消えた後のことです。家族と過ごしながら前へ進む方法を模索し、「いまの自分」を探そうとする姿です。本作は、単なる実録犯罪番組や法廷ドラマではありません。メディアや、事件の周囲でよく起きる「性急な判断」を考え直すための物語です。人々は、見出しの裏には「生身の人間」がいることを忘れがちです。その理解が広がれば、次に同じことが起きる人は減るかもしれませんし、少なくとも被害は小さくなるかもしれません。

▼レッテルと若い女性への偏見…メディアが作る先入観とは

(左から)アマンダ・ノックス、モニカ・ルインスキー 写真:Mark Champion
(左から)アマンダ・ノックス、モニカ・ルインスキー 写真:Mark Champion

――おふたりとも、メディアにおいて特に若い女性が多くの好奇の目や先入観にさらされることを指摘されています。私たちがいかに早くレッテルを貼り、そのレッテルがどれほど長く付きまとうかについて、どうお考えですか?

ノックス:それは、人間の心の仕組みに関わることだと思います。人というものは、恐怖や幻想を他人に投影してしまいます。女性はしばしば「他人の幻想の対象」とされるので、そうした投影の的になりやすいのです。そして、それは男性だけの問題ではありません。多くの女性も、私に対する攻撃に加担していました。

なぜ人は他人を非難し、貶めようとするのでしょうか?女性は、常に「美徳か悪徳か」という形で互いに対立させられます。私たちは、弱さや欠点を持った人間であることを受け入れてもらう代わりに、「理想像」を演じることを求められます。つまり、複雑さを持つことを許されないのです。

イタリアのペルージャで行われた第1回裁判に出廷したアマンダ・ノックス=2009年 写真:Oli Scarff/Getty Images
イタリアのペルージャで行われた第1回裁判に出廷したアマンダ・ノックス=2009年 写真:Oli Scarff/Getty Images

ルインスキー:女性嫌悪(ミソジニー)は、外からのものだけではなく、内面に取り込まれてしまうことがあります。それは攻撃の標的にされた人だけでなく、メディアを消費するすべての女性に影響します。そうした空気は、私たちが自分自身をどう考え、どう感じるかにまで入り込んでしまいます。状況は少しずつ改善していると信じたいですが、だからこそ(作品において)「その後」の姿を描くことが大切だと思います。

ノックス:1度レッテルを貼られ、社会から「終わった人間」と扱われたとき、そこからどうやって抜け出し、自分が本当はもっと複雑で価値のある存在だと示すのでしょうか?自分のために立ち上がるには、そうですね….単なる「度胸」ではないんです(笑)。もっと別のものが必要なんです。

――アマンダさんは母親になったことで、自分の物語についての考え方は変わりましたか?

ノックス:妊娠がわかった瞬間、とても怖くなりました。私の人生にずっと覆いかぶさっている暗い雲のようなもの——解決されないままの重荷が、そばにいるだけで娘に受け継がれてしまうのではないか、という深い恐怖を感じたのです。

夫も同じようにそれを見てきました。見出しにさらされ、人々が彼のフェイスブックの写真にナイフを合成したりもしました。娘の誕生がニュースになると、人々は私に「彼女が死ぬことを願う、そうすればお前も理解するだろう」といったメッセージを送ってきました。

そこで私は考えました。私はこの物語の「ただの被害者」なのか?それとも発言権があるのか?あるとすれば、それはどんなものなのか?私が語りたいのは、恐ろしい出来事そのものではなく、それにどう向き合い、どう行動したかという物語です。自分自身を、自分の基準で定義することが大切だと思っています。

▼「誰もが多面的に描かれるべき」――メディアを担う立場の複雑さ

クリントン大統領との不倫が報道された後、初めて公の場に姿を現したモニカ・ルインスキー=1998年 写真:AP Photo/Charles Rex Arbogast
クリントン元米大統領との不倫が報道された後、初めて公の場に姿を現したモニカ・ルインスキー=1998年 写真:AP Photo/Charles Rex Arbogast

――おふたりともメディアに用心深いのは理解できますが、いまではご自身もメディアを担っています。ポッドキャストを主催し、雑誌にコラムを書き、テレビ番組もプロデュースしています。それは複雑に感じますか?

ルインスキー:ええ、複雑です。メディアは恐ろしい存在になり得ます。けれども、調整することを学ばなければなりませんでした。少しずつ心を開き、不安を手放す必要があったのです。

1つの方法は、1998年当時に取材していなかったジャーナリストと話すことでした。そして私は、このインタビューも含めて、あらゆる取材に「準備しすぎるほど準備」します。それがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱える自分にとって助けになるのです。

ノックス:メディアそのものは、必ずしも悪ではありません。メディアは善にも悪にも使える道具です。私は一時期「間違った側」に置かれましたが、その経験を通して、情報を共有する力の大きさを理解しました。だからこそ、メディアをより倫理的かつ公正で、思いやりがあり、人間を高めるものとして使う責任を強く感じています。

ルインスキー:アマンダの重要な指針の1つは、「番組に関わる誰もが多面的に描かれるべきだ」ということでした。その考えは、脚本家や監督、衣装や美術のスタッフ全員に共有されました。彼らは、キャラクターにニュアンスや文脈を与えるために懸命に取り組んでくれました。

▼ドラマ制作への思い――偏見の構造に迫る“解剖学”

車で法廷に向かうアマンダ・ノックス=2009年 写真:Franco Origlia/Getty Images
車で法廷に向かうアマンダ・ノックス=2009年 写真:Franco Origlia/Getty Images

――おふたりはどのようにして、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』を共同プロデュースすることになったのですか?

ルインスキー:私は『ニューヨーク・タイムズ』で、アマンダが自分の回想録を映画化したいと語っているすばらしいインタビューを読みました。当時、私は20th テレビジョンとファーストルック契約を結んでいました。すぐに担当エグゼクティブのテイラー・モーガンに相談し、幸運にも彼女がすばやく動いてイエスを引き出してくれたのです。

その後、私はアマンダに連絡を取り、みんなで朝食の場を設けました。そして一緒に、エグゼクティブプロデューサーとしてショーランナーに会いに行きました。

――ドラマの核心は、おふたりがおっしゃったように「偏見の解剖学」です。それはどういう意味ですか?

ルインスキー:作品は「誰がやったのか?」という話ではなく、「どうしてこんなことが起こったのか?」という物語です。無実の20歳のアメリカ人の若者が、異国において言葉も分からない状況で、なぜ冤罪によって有罪判決を受け、4年間も刑務所で過ごすことになったのか。報道では、彼女がどうして“危険な誘惑者”のように描かれてしまったのか。その背景を知っている人は、実は少ないのです。

私たちは、その社会学的・心理学的な側面を解き明かしたかったのです。そして可能であれば、エンターテインメントとしても伝えたいと思いました。

▼キャスティングの挑戦…主演グレース・ヴァン・パタンの魅力

グレース・ヴァン・パタン、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』より 写真:Disney/Andrea Miconi
グレース・ヴァン・パタン、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』より 写真:Disney/Andrea Miconi

――アマンダ役のキャスティングは大きな挑戦ですね。なぜグレース・ヴァン・パタンを?

ノックス:ドラマ『テル・ミー・ライズ』を観たとき、グレースなら20歳の私を演じ、さらに最悪の体験を経た35歳の私まで表現できると感じました。グレースは以前から私に関するドキュメンタリーを観ていて、この物語に強い関心を持っていたのです。初期の段階から、彼女はとても鋭く、面白い質問をたくさんしてきました。そして、役作りを一気に進めてくれました。私の鼻を鳴らす笑い方まで再現できたんです。

ルインスキー:そう、笑い声まで!鼻を鳴らすところも完ぺきでした。

ノックス:グレースの細部へのこだわりや、それを自在にコントロールできる力は本当にすごい。まるで、生まれつき持っている才能のようでした。

ルインスキー:実在の人物と俳優との関係は特別です。俳優は、あなたの代理人のような存在になります。人々は「この物語は知っている」と思っていますが、グレースの演技を見るまでは本当の意味で知らないのです。彼女の演技によって、人々は自分の思い込みから一歩外に出て、新しい視点で物語を見られるようになります。

▼実録犯罪の魅力と責任…事件被害者への思いも

クリントン元米大統領とルインスキーの関係を調査する大陪審での証言について伝えたロンドンの新聞各紙=1998年9月 写真:Johnny Eggitt/AFP via Getty Images
クリントン元米大統領とルインスキーの関係を調査する大陪審での証言について伝えたロンドンの新聞各紙=1998年9月 写真:Johnny Eggitt/AFP via Getty Images

――アマンダさんは実録犯罪ポッドキャストを主催し、モニカさんはHBOのドキュメンタリー番組『SNS中傷の犠牲者たち / 15 MINUTES OF SHAME』をプロデュースしました。なぜ、実録犯罪はこれほど多くの女性の視聴者を惹きつけるのでしょうか?

ノックス:実録犯罪は、本来なら人間のパズルのようなものです。解決したいジレンマを提示し、人々に考えさせます。

しかし、本作は単に実録犯罪が好きな人だけでなく、嫌いな人も惹きつけるでしょう。その理由は、私たちが「非倫理的な部分」に対して歯止めをかけているからです。スキャンダルを広めたり、人々を単純化して白か黒かで描いたり、道徳的な裁きを与えるために戯画化することを避けています。

最も優れた実録犯罪作品とは、人々が他人の人生の最悪の出来事に心から共感し、その人たちを正しく支えたいと思える作品です。破滅的な状況がどのように起こるかを理解し、それを解きほぐし、助けることが目的なのです。

グレース・ヴァン・パタン、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』より 写真:Disney/Andrea Miconi
グレース・ヴァン・パタン、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』より 写真:Disney/Andrea Miconi

ルインスキー:この作品で私たちが重視したことの1つは、(事件被害者の)メレディスの記憶を尊重し、敬意を払うことでした。彼女の記憶を丁寧に描こうと努力しました。それは決して簡単ではありません。なぜなら、彼女の両親はアマンダの無実を完全には信じていなかったからです。

ノックス:メレディスの両親はすでに亡くなっていますが、彼女には3人のきょうだいがいます。彼らは、私に少し距離を置くように伝えてきました。それも理解できます。彼らが私について聞かされた無数の嘘を考えれば、当然です。実際、これは冤罪事件ではよくあることです。

でも、私はいつもメレディスのことを考えています。彼女は21歳で、人生最高の体験をするためにイタリアに来ました。しかし、家に帰ることができませんでした。若い私たちはふたりとも、最高の人生を送りたかったのです。だからこそ、私たちはその思いを尊重するよう努めています。

▼視聴者へのメッセージ…困難な状況を生き抜く力

グレース・ヴァン・パタン、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』より 写真:Disney/Andrea Miconi
グレース・ヴァン・パタン、ドラマ『アマンダ ねじれた真実』より 写真:Disney/Andrea Miconi

――アマンダさん、人々がドラマを観終わった時、何を感じてほしいですか?

ノックス:本作を通して伝えたい究極のメッセージは、「あなたは生き抜くことができ、社会が作った箱によって制限されない人間になれる」ということです。その箱の上に立って自分自身の物語を語り、社会が望む姿ではなく、より大きな人間になれるのです。恐ろしいことに直面しても耐えられます。そして、あなた以外の誰にも、自分自身を定義させてはいけません。

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ドラマ『アマンダ ねじれた真実』は、ディズニープラスの「スター」にて独占配信中。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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