【レビュー】Netflix『ブラック・ラビット』|ジュード・ロウら豪華キャストで贈る、現代のアンチヒーロードラマ

ジュード・ロウ、Netflix『ブラック・ラビット』より
ジュード・ロウ、Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Netflix
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9月18日(木)より配信中のNetflixリミテッドシリーズ『ブラック・ラビット』。ジュード・ロウ×ジェイソン・ベイトマンという2大スターを主演に迎え、全8話構成で贈る緊迫のクライムサスペンスドラマだ。エミー賞受賞の傑作『一流シェフのファミリーレストラン』や『オザークへようこそ』、映画『アンカット・ダイヤモンド』を彷彿とさせる“現代のアンチヒーロードラマ”として注目を集めている。

▼『ブラック・ラビット』あらすじ

Netflix『ブラック・ラビット』より
Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Courtesy of Netflix © 2025

物語は、ブルックリンのレストランでの宝石強盗から始まり、オーナーのジェイク(演:ジュード・ロウ)と問題を抱えた兄ヴィンス(演:ジェイソン・ベイトマン)の関係を軸に展開する。ヴィンスはリノのカジノでコイン取引に失敗し、事故を起こしてしまう。全体を通してシリアスなトーンを貫き、ヴィンスが悪党マンキューソ(演:トロイ・コッツァー)への借金返済に追われるなか、ジェイクも兄の騒動に巻き込まれていく。

▼アンチヒーロードラマの変遷|2000年代の黄金期から現代

Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Courtesy of Netflix © 2025
Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Courtesy of Netflix © 2025

2000年代のテレビ界は、トニー・ソプラノ(『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』)、ウォルター・ホワイト(『ブレイキング・バッド』)、デクスター・モーガン(『デクスター』)といったアンチヒーローたちの活躍によって真の黄金時代を築いた。これらの傑作は、単なるエンターテインメントを超えた芸術的価値を持つ作品として、テレビドラマの可能性を大きく押し広げた。

やがて、アンチヒーローを扱ったドラマは数多く制作されるようになり、傑作の系譜は変化することになる。後半の展開に課題を抱えた『サンズ・オブ・アナーキー』、既存作品の影響を強く受けた『オザークへようこそ』といった作品が現れ、『ブレイキング・バッド』や『ザ・ソプラノズ』の本質的な魅力を十分に理解しきれていない作品が散見される複雑な状況となっている。

▼オスカー俳優トロイ・コッツァーの存在感

Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Courtesy of Netflix © 2025
Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Courtesy of Netflix © 2025

ベイトマンとロウが演じる兄弟を魅力的なキャラクターにするため、『ブラック・ラビット』は現代のアンチヒーロー作品でしばしば見られる手法を用いている。道徳的に正しいキャラクターをやや単調に描き、道徳的に問題のあるキャラクターを極端に描く傾向がある。

主演2人の演技は高い水準にあるものの、キャラクター描写に改善の余地があるために、その演技力が十分に活かしきれていない印象だ。ベイトマンが見事に演じるヴィンスは、神経質で衝動的なキャラクターとして説得力がある。しかし、ヴィンスが巧みな話術の持ち主であるという設定は、脚本のセリフによってうまく表現できていない。

一方で、『コーダ あいのうた』でオスカーを受賞したトロイ・コッツァーの演技は特筆すべきものがある。コッツァー演じる悪役マンキューソは、短い登場時間ながらも強烈な印象を残し、物語に重厚感を与えている。マンキューソは威圧的でありながら、同時に人間的な脆さも感じさせ、画面に登場するたびに作品に深みと説得力を加える。コッツァーの卓越した演技は、『ブラック・ラビット』の大きな魅力の1つと言える。

▼現代アンチヒーロードラマの新たな挑戦と課題

Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Courtesy of Netflix © 2025
Netflix『ブラック・ラビット』より 写真:Courtesy of Netflix © 2025

6時間にわたる様々な試練、予期しない出来事、緊張感のある展開の後、『ブラック・ラビット』は最後の90分で本領を発揮する。最後の2話はブルックリンのさまざまな場所を駆けめぐるスリリングな追跡劇となり、映画『オーダー』でロウとタッグを組んだジャスティン・カーゼルがエピソード監督を務め、効果的な緊張感を演出している。

アンチヒーロードラマには、依然として可能性が残されている。大手メディアには、スター性だけでなく、斬新かつ大胆なストーリーテリングを兼ね備えた、より深みのある作品の制作が期待される。真のアンチヒーロー作品の新たな傑作を求める視聴者にとって、『ブラック・ラビット』は今後の作品への期待を高める1作と位置づけることができるだろう。

<『ブラック・ラビット』作品情報>

  • 配信日:9月18日
  • 出演:ジュード・ロウ、ジェイソン・ベイトマン、クレオパトラ・コールマン、アマカ・オカフォー、ソペ・ディリス、トロイ・コッツァー
  • 製作:ザック・ベイリン、ケイト・サスマン
Netflix『ブラック・ラビット』US版公式予告編

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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