多様性を意識した配役に批判も…ドラマ版『ハリー・ポッター』成功を左右する3つの鍵とは

『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』写真:Warner Bros. Ent. All rights reserved./Courtesy Everett Collection
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』写真:Warner Bros. Ent. All rights reserved./Courtesy Everett Collection
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ドラマ版『ハリー・ポッター』の賭け──3つの大きな壁

ハリウッドにおいて最も得がたいエンタメ資産とは、「成功が約束された作品」だ。絶対的な成功を保証するコンテンツなど、存在しないという声も多い。それでも、これまでにない「確実な成功」に最も近い作品として期待が寄せられているのが、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーによる最大の賭けとなる、HBOのドラマ版『ハリー・ポッター』である。今週初めに主要な大人キャストが発表されたばかりだが、この企画には業界関係者やファンの間で議論されてきた「3つの大きなハードル」が存在する。

世界的ベストセラーを再構築

ドラマ版『ハリー・ポッター』は、J・K・ローリングによる全7巻のファンタジー小説を新たに映像化するプロジェクト。原作は全世界で6億部以上を売り上げており、映画版8作も累計で70億ドルを超える興行収入を記録している。ドラマでは1シーズンにつき1冊のペースで物語を描く予定で、ショーランナーは『メディア王~華麗なる一族~』の脚本家フランチェスカ・ガーディナーが務め、『ゲーム・オブ・スローンズ』で知られるマーク・マイロッドが複数エピソードの監督を担当する。

多様なキャスティング

(左上から時計回りに)ジョン・リスゴー、ジャネット・マクティア、パーパ・エシードゥ、ポール・ホワイトハウス、ルーク・タロン、ニック・フロスト 写真:Jessica Howes; Andrew Crowley; Ruth Crafer; Mike Marsland; Phil Sharp; Lee Malone
(左上から時計回りに)ジョン・リスゴー、ジャネット・マクティア、パーパ・エシードゥ、ポール・ホワイトハウス、ルーク・タロン、ニック・フロスト 写真:Jessica Howes; Andrew Crowley; Ruth Crafer; Mike Marsland; Phil Sharp; Lee Malone

キャストには、エミー賞を6度受賞したジョン・リスゴーがアルバス・ダンブルドア役として起用され、ミネルバ・マクゴナガル役には『オザークへようこそ』で注目を集めたジャネット・マクティア、ハグリッド役には『ショーン・オブ・ザ・デッド』のニック・フロストが抜擢された。また、多様性を意識した配役として、『I MAY DESTROY YOU / アイ・メイ・デストロイ・ユー』で脚光を浴びたパーパ・エシードゥがセブルス・スネイプ役を演じることも話題となっている。

さらに、11歳のハリー、ロン、ハーマイオニー役を決定するために、3万2千本ものオーディション映像が審査されており、これらのキャスティングは今後発表される予定だ。

ドラマ版は2026年または2027年にMaxでの配信が予定されているが、その「妥当性」については多くの議論を呼んでいる。

第1の疑問:20年前の映画をドラマ版で観たいと思うのか?

結論から言えば、視聴者はおそらく観たがるはずだ。なぜなら、原作小説には映画で描かれなかった、あるいは大幅に短縮された内容が膨大に存在する。特に、第1巻と第2巻以降では原作の分量に大きな差があり、後半の巻は格段に内容が重厚になる。

映画版にはしばしば「急ぎすぎた緊張感」が漂っている一方で、小説はドラマシリーズ向きのゆったりとしたペースで進行し、ハリー、ロン、ハーマイオニーの間に交わされる機知に富んだ会話も数多く盛り込まれている。こうした要素は、映画ではほとんど失われていた。したがって、ドラマ化による再解釈には大きなポテンシャルがあると言えるだろう。

第2の疑問:『ファンタスティック・ビースト』や『力の指輪』の失敗と同じ道を辿るのでは?

確かに、映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズは最終的に失速し、Amazonの『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』もファンからの評価には苦戦している。

一見、これらのシリーズはまったく異なる作品に見えるが、いずれも「すでに成功した映像化作品を持つ原作小説を、まったく新しい形で拡張しようとした試み」である点が共通している。両者に共通する問題は、「本編の前日譚」という形で、原作に乏しい下敷きしか持たない企画であったことだ。

人々は「原作」や「本編」に愛着を持っているのであり、前日譚はその「本編の前の物語」でしかなかった。これに対して、ドラマ版『ハリー・ポッター』はこの問題を抱えていない。なぜなら、それ自体が「本編」であり、すでに愛され、成功が証明された物語だからだ。

第3の疑問:J・K・ローリングが関与する作品を人々は受け入れるのか?

ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、J・K・ローリング、2010年 写真: JON FURNISS/GETTY IMAGES
ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、J・K・ローリング、2010年 写真: JON FURNISS/GETTY IMAGES

この問いは、明らかに賛否を呼ぶものである。ローリングの反トランスジェンダー的な発言が物議を醸しており、それが作品への影響にも波及するのではという懸念がある。

しかし、回答は「イエス」であるようだ。たとえば、2023年に発売されたゲーム『ホグワーツ・レガシー』は、ローリングの関与を理由に一部からボイコットの呼びかけがあったにもかかわらず、その年の売上ランキングでトップに立った。

さらに、映画シリーズは依然として非常に高い人気を維持しており、ある調査によれば、1999年の映画『ハリー・ポッターと賢者の石』は、昨年だけでMaxにおいて世界中で4000万回以上視聴されたという。結論として、人々はこの物語を深く愛しており、「作家と作品を分けて捉える」傾向が強いと言える。

絶好調のHBO

こうした状況を踏まえると、HBOはすでに好調な立場にある上に、『ハリー・ポッター』という強力なカードを手にしていることになる。実際、『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート・ホテル』シーズン3はシリーズ最高視聴率を記録し、新作医療ドラマ『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』は人気を獲得、そして『THE LAST OF US』はシーズン2でさらに視聴者数が増加している。

キャスティングやクオリティをめぐるリスクも?

もちろん、潜在的な落とし穴がないわけではない。もし今回のドラマ版が映画版と比較して「安っぽい」と受け止められれば、ファンの反発を招く可能性がある。また、多様性を意識したキャスティングが実写版『白雪姫』のように物議を醸す恐れもある(すでにスネイプ役のエシードゥの起用に対し、やや過敏な反応が見られている)。

さらに、すでに発表されている大人のキャスト陣は実力派揃いだが、子役のキャスティングは常に「賭け」である。彼らの相性は、物語の魅力を大きく左右する要素となっている。

とはいえ、『ハリー・ポッター』という作品は、すでに非常に精緻な「設計図」を持っている。原作は総計3,407ページにもおよび、繰り返し成功が証明されてきた。HBOにとっては、これほど確実に近いプロジェクトは他にそうそう存在しないと言えるだろう。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌

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