【ハリウッドの政治映画20選】衝撃作『ゲット・アウト』ほか、権力やアメリカ政治を問う傑作を厳選!

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米『ハリウッド・リポーター』の映画評論家が、権力、統治、市民参加、そして「アメリカ人であること」の意味を明示的または暗示的に扱ったスリラーから、伝記映画、風刺劇、社会派ドラマまで20本の傑作をランキング形式で紹介する。
以下、「ハリウッドの政治映画20選」
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※本記事の情報は、2025年4月現在のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
20.『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』 (2013)
ミニマリズム詩人ことケリー・ライカート監督の『ナイト・スリーパーズ』は、オレゴン州の水力発電ダムを爆破しようとする環境活動家たちを描いた緊迫のスリラーで、70年代の政治的不安の波にルーツを持つ。気候危機を扱った他の映画とは異なり、本作は過激な手段の代償と行動の緊急性を冷静に見つめる思想的な対話を重視している。ライカート特有の太平洋岸北西部の自然へのまなざしが、賭けられたものの大きさを静かに表現している。
19.『希望の街』(1991)
アメリカを代表する政治映画作家の一人であるジョン・セイルズによる、理想主義が死に絶え、腐敗や道徳の崩壊だけが残る架空のニュージャージーの都市を舞台とした『希望の街』。しなやかなリズムと明快さをもって、富裕層から疎外されたマイノリティ、市長、不動産業者、麻薬の売人や警官まで、36人もの主要人物を追う。倫理的な生き方が常に経済的・政治的権力に押し負けてしまう、怒りに満ちた都市アメリカの精密な肖像となっている。
18.『キッズ・オールライト』(2010)
同性婚をめぐる議論が続き、多くの州で政治的反発が根強かった時期に、リサ・チョロデンコ監督は革新的な1作を生み出した。アネット・ベニングとジュリアン・ムーアを同性カップルとして起用し、異性愛者の夫婦にも共感できる日常的な問題を描くことで、同性婚と親子関係を自然なものとして提示したのだ。チョロデンコ監督は、家族の愛とそれに伴う気恥ずかしさ、子育てと失敗、結婚とその困難を美しく映し出している。
17.『パーフェクト・カップル』(1998)
マイク・ニコルズ監督の本作は、ビル・クリントンの1992年大統領選民主党予備選を題材にしている。ジョン・トラボルタは誠実さと欠陥を併せ持つ候補者の人間味を巧みに体現し、エマ・トンプソンは夫の不貞によって尊厳を傷つけられながらも現実主義を貫く妻を好演。政治と理想主義の相容れなさを描き、それは公民権運動の英雄の孫であるエイドリアン・レスター演じるヘンリーの歴史に関わろうとする希望と徐々に深まる幻滅を通じて語られる。
16.『スミス都へ行く』(1939)
刺激的な政治映画は往々にして権力の乱用を描くが、フランク・キャプラ監督の本作は根深いシニシズムが社会に浸透する以前の時代を描いた貴重な1作だ。公開当時には「反米的」としてワシントンから非難を浴びたが、最も印象的なのはジェームズ・スチュワート演じる主人公の理想主義である。とある西部の州から上院議員に抜擢された素朴な青年スミスは、政治の泥沼に引き込まれながらも、決して闘うことを諦めない。
15.『コンドル』(1975)
シドニー・ポラック監督によるスリラー『コンドル』では、ロバート・レッドフォードが命を狙われるCIA分析官、フェイ・ダナウェイがジョーの逃走に巻き込まれる女性を演じている。2人の間に緊張感に満ちた関係性は、現実味には欠けるが本作の魅力を一層引き立てている。
14.『グローリー/明日への行進』(2014)
ハリウッドがマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの遺産に本格的に向き合うまでには、ほぼ半世紀を要した。エイヴァ・デュヴァーネイ監督の本作において、デヴィッド・オイェロウォ演じる公民権運動の指導者キング牧師は、自らの非暴力による闘いが本当に最善の道であるのかを自問し続けている。やがて行進は、投票制限を撤廃する法案の可決を推進するきっかけとなるが、映画はアメリカが真の平等からいかに遠いかを痛切に訴えている。
13.『そして、ひと粒のひかり』(2004)
ジョシュア・マーストン監督による、17歳のコロンビア出身の少女(カタリーナ・サンディノ・モレノ)が麻薬の運び屋としてアメリカに渡る姿を描いたドラマ作品。運び屋に観客の共感を求めることは一見リスクがあるように思えるが、彼女が自らの意思で新たな人生を選ぶ過程が、人間性とある種の浄化を与えている。世界経済という巨大な機構に、使い捨ての存在とされる貧しい人々がどのように巻き込まれていくかを映し出した作品だ。
12.『パララックス・ビュー』(1974)
アラン・J・パクラ監督による本作は70年代のパラノイア・スリラーを代表する傑作の1つであり、ケネディ兄弟やキング牧師の暗殺によって高まった不安と幻滅を巧みに捉えている。ウォーレン・ベイティ演じる上院議員の暗殺事件を追う記者のジョーは、警備員を装って暗殺者を養成している秘密組織「パララックス社」に辿り着く。ジョーは組織に潜入し、やがて大統領候補者の集会に出席することになるが、物語は衝撃的で救いのない結末へと収束していく。
11.『17歳の瞳に映る世界』(2020)
2022年に米連邦最高裁がロー対ウェイド判決を覆して以降、女性の性と生殖に関する健康と権利は米国政治において最も激しく争われる問題となった。エリザ・ヒットマン監督の本作の素晴らしさは、極めて政治的なテーマを、人間的で静かな視点から描いている点にある。ペンシルベニアの田舎町に住む10代のいとこ同士が、予期せぬ妊娠を終わらせるためにニューヨークへ旅をするという、ロードムービー的な構成を持つ。主演のシドニー・フラニガンとタリア・ライダーによる自然体の演技が、この夢のようでありながらも重く切実な作品に深みを与えている。
10.『ゲット・アウト』(2017)
オバマ大統領の任期中に噴出した反感は、「ポスト人種時代」という幻想を打ち砕き、BLM運動や白人至上主義の台頭がそれをさらに明らかにした。このような社会の亀裂を鋭く描いた優れた映画は数多く存在するが、独創性や緊張感の高まりという点において、ジョーダン・ピールの監督デビュー作『ゲット・アウト』に勝る作品は少ない。表面的には歓迎しているかのような態度の裏に潜む邪悪な意図を描きながら、上級層の特権意識を容赦なく暴き出している。ブラックユーモアやホラー、鋭い社会批判を見事に両立させている。
9.『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』(1999)
アレクサンダー・ペイン監督の本作は、『キューティ・ブロンド』と並ぶリース・ウィザースプーンの代表作の1つだ。学内選挙という題材を通して、生徒会長選挙に執念を燃やすトレイシーや彼女に振り回される社会科教師(マシュー・ブロデリック)らの姿を追う。妨害候補者や陰謀的な策略を巧みに掘り下げ、より大きなスケールでの政治的な類似性を描き出している。
8.『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』(1999)
アンドリュー・フレミング監督による本作は、ウォーターゲート事件が実は記者ではなく、女子高生たちによって暴かれたという軽快な風刺作品。子役出身のキルスティン・ダンストとテレビ界で活躍していたミシェル・ウィリアムズが共演し、ウィル・フェレルが間抜けな記者、ダン・ヘダヤが狡猾なニクソンをコミカルに演じるほか、若きライアン・レイノルズも出演している。
7.『マルコムX』(1992)
スパイク・リー監督による黒人人権活動家マルコムXの生涯を描いた本作は、彼の公的な顔と私的な苦悩の複雑な心理的分裂に深く迫る。マルコムXを演じるデンゼル・ワシントンは、差別や獄中生活を乗り越え、政治指導者へと生まれ変わる姿を圧倒的な説得力で体現している。彼は法制度による人種的不平等の是正に懐疑的な視線を投げかけ、米国社会に強烈なメッセージを突きつける。伝説的な人物の実像とその神話の両方に光を当てた、洞察に満ちたドラマ作品だ。
6.『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964)
スタンリー・キューブリックによる冷戦風刺の傑作『博士の異常な愛情』にて、ピーター・セラーズは米大統領マフリー、英国軍将校マンドレイク、そしてドイツ人科学者ストレンジラブ博士の3役を演じ、核戦争を痛烈なユーモアで包み込んでいる。スリム・ピケンズ演じるテキサス出身のT・J・“キング”・コング少佐が、空中で投下される水爆に跨がり叫びながら落下するシーンは、映画史に残る象徴的な瞬間となっている。
5.『フルートベール駅で』(2013)
2008年の大晦日、カリフォルニア州の駅で警察官に射殺された22歳のオスカー・グラント三世。ライアン・クーグラー監督と主演マイケル・B・ジョーダンのキャリアを飛躍させた本作は、オスカーを聖人のように描くのではなく、過去の服役歴なども描写しながら、警察の暴力によって命を奪われた被害者たちを「統計」ではなく「ひとりの人間」として見るよう観客に訴える。冒頭で事件の実際の映像を提示し、そこから当日の出来事を丁寧に描き出す構成は、観る者の胸を恐怖でざわつかせる。
4.『ミルク』(2008)
ガス・ヴァン・サント監督は、ドキュメンタリー風のアーカイブ映像を織り交ぜながら、ゲイを公表している人物としてアメリカで初めて公職に選出されたハーヴェイ・ミルクの成長と暗殺までの軌跡を描いた。ショーン・ペン演じるミルクが対峙するのは、道徳や宗教といった名目で正当化された偏見と差別であり、これは現代においてもなお、福音派の極右勢力を鼓舞している問題となっている。生命力と共感、そして燃えるような怒りを携えた映画であり、草の根の市民運動の力への賛辞でもある。
3.『ミッドナイトクロス』(1981)
これが「汚れた政治」を扱った映画に分類されるかどうかは議論の余地があるが、ブライアン・デ・パルマの本意がそこになかったとしても、大統領候補の暗殺から始まり、致命的な隠蔽工作で幕を閉じる本作はリストに加えるにふさわしい。『カンバセーション…盗聴…』やアントニオーニの『欲望』からも影響を受けており、視覚的なスタイルと皮肉に満ちたユーモアを交えた映画制作への賛歌でもある。公開から40年以上経つが、何度観てもあの花火のシーンでは心が締め付けられる。
2.『大統領の陰謀』(1976)
アラン・J・パクラの偏執、監視、陰謀を主題とした3部作の最終章にあたる本作は、『コールガール』、『パララックス・ビュー』に続き、ウォーターゲート事件によってニクソンを辞任に追い込んだ犯罪の真相を、ワシントン・ポストの2人の記者が明らかにしていく過程を描いている。本作は今なお色あせず、スピード感のある展開と緻密な描写で観る者を引き込む。政府高官による不正の実態だけでなく、紙媒体の報道が衰退する以前の新聞社の内部構造までをも描いた傑作だ。
1.『カンバセーション…盗聴…』(1974)
フランシス・フォード・コッポラが伝説的な地位を築いたのは、『ゴッドファーザー』3部作や『地獄の黙示録』といった壮大な作品によるところが大きいが、この緻密で不穏なスリラーもまた、彼の代表作の1つだ。本作では、ジーン・ハックマンが民間および政府の依頼で監視技術を提供する孤高の技術者を演じており、キャリア屈指の演技を披露している。
ベトナム戦争とウォーターゲート事件によって高まった体制不信を背景に生まれた映画の中でも、本作は緊張感をじわじわと高めながら、単に録音を提供するだけだと思っていた主人公が自らの職業倫理に疑問を抱き始める良心の葛藤を巧みに描いている。50年を経てもなお、一切の力を失っていない傑作である。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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