訃報|『告発の行方』『ER』の名監督ジョナサン・カプラン死去──映画界を支えた多才なキャリアに迫る

ジョディ・フォスターをアカデミー賞に導いた名監督の生涯
映画『告発の行方』(1988)でジョディ・フォスターにアカデミー賞受賞の栄冠をもたらした名監督、その生涯、人気医療ドラマ『ER緊急救命室』で5度のエミー賞ノミネートを受けたジョナサン・カプラン監督が、肝がんのため77歳で死去した。ロサンゼルスの自宅で静かに息を引き取った。
映画界のサラブレッドとして活躍
カプラン監督は1947年、パリ生まれ。父親は『スタートレック』などの音楽を手がけた作曲家、母親は人気昼ドラ『オール・マイ・チルドレン』(1970〜2011)出演、叔父はハリウッド・ウォーク・オブ・フェームにも名が刻まれる名優ヴァン・ヘフリンという映画界のサラブレッドだった。
父親がハリウッドでブラックリストに載ったため、10歳でニューヨークに移住。ブロードウェイで子役として活動した後、シカゴ大学とニューヨーク大学で学び、マーティン・スコセッシ監督に師事した。
B級映画の巨匠ロジャー・コーマンの下で修行
スコセッシの推薦でB級映画の巨匠ロジャー・コーマンの下で修行を積み、1972年に『もっともあぶない看護婦(原題:Night Call Nurses)』で監督デビュー。その後、アイザック・ヘイズ主演のアクション映画『ブラック・ハンター』(1974)で注目を集めた。
代表作『告発の行方』で社会に衝撃
カプラン監督の最も有名な作品が、実話に基づく『告発の行方』(1988)である。集団暴行の被害者が勇気を持って法廷で証言する姿を描いたこの作品で、ジョディ・フォスターは見事アカデミー主演女優賞を受賞した。
事前の試写会では評判が悪かったが、パラマウント社の幹部が熱心に支持し、最終的に大成功を収めた。性犯罪という重いテーマを真正面から扱った社会派作品として高く評価されている。
テレビでも大活躍、『ER』で40話を演出
1990年代後半からは医療ドラマ『ER緊急救命室』では主に演出家として活躍。1997年から2009年まで40エピソードを演出し、製作陣の一員として3度、監督として2度エミー賞にノミネートされた。
映画、テレビ、音楽とジャンルを問わず才能を発揮
映画では他にも、マット・ディロンの映画デビュー作となった青春映画『レベルポイント』(1979)、カート・ラッセル主演のサイコスリラー映画『不法侵入』(1992)など多彩な作品を手がけた。
1980年代にはバーブラ・ストライサンドやロッド・スチュワートのミュージックビデオも監督するなど、ジャンルを超えてその才能を発揮した。
愛された人柄と仕事ぶり
元妻でキャスティング・ディレクターのジュリー・セルツァーは「キャストもスタッフも皆、彼を愛していました。とても仕事が速く、尊敬されていた」と語っている。
多才な映画人の遺産
ジョナサン・カプラン監督は、B級映画から社会派ドラマ、人気テレビシリーズまで幅広く手がけた多才な映画人だった。特に『告発の行方』は性犯罪という難しいテーマを扱い、社会に大きな影響を与えた記念すべき作品として映画史に残るだろう。
ハリウッドの黄金時代から現代まで、一貫して質の高い作品を作り続けた名監督の訃報に、映画界から多くの追悼の声が寄せられている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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