【訃報】ボビー・ハート逝去、享年86|モンキーズ「恋の終列車」作曲者が残した音楽遺産

モンキーズの代表曲「恋の終列車」や「ステッピン・ストーン」を手がけたソングライター、ボビー・ハートがロサンゼルスの自宅で死去した。86歳であった。
友人で伝記の共著者グレン・バランタインによれば、ハートは昨年の股関節骨折以降、体調を崩していたという。
モンキーズを支えたソングライターデュオ“ボイス&ハート”
1960年代半ば、ハートは作曲家のトミー・ボイス(1994年没)とコンビを組み、テレビ発のバンド「モンキーズ」に数々のヒット曲を提供した。代表曲「恋の終列車」(原題: Last Train to Clarksville)は彼らが書き下ろした最初の全米No.1ヒットであり、モンキーズのサウンドを決定づけた楽曲として知られる。
モンキーズのデビューアルバムには、ボイス&ハートによる6曲が収録され、彼ら自身がプロデュースやバックバンド演奏も担当した。ドラマーのミッキー・ドレンツは、ハートの回顧録『Psychedelic Bubblegum』(2015年)の序文で次のように語っている。
「彼らは私たちの最大のヒットを書いただけでなく、プロデューサーとして“モンキーズ・サウンド”を作り上げた立役者だった」
↓「恋の終列車」(原題: Last Train to Clarksville)
モンキーズ以降の活動
モンキーズが次第に自らの音楽的主導権を握るようになると、ボイス&ハートは独自の活動を開始。アルバム『Test Patterns』やシングル『I Wonder What She’s Doing Tonite』をリリースし、TVドラマ『かわいい魔女ジニー』(1965〜1970年)『奥さまは魔女』(1964〜1972年)などにも出演した。
また、政治的にも積極的に活動。1968年のロバート・F・ケネディ大統領選挙キャンペーンを支援し、1971年に選挙権年齢を21歳から18歳に引き下げる「修正第26条」を支持する楽曲「L.U.V. (Let Us Vote)」を発表した。
後年のキャリアと再評価
1970〜80年代にはソロ活動やコラボレーションを続け、テレビドラマ『パートリッジ・ファミリー』(日本では『人気家族パートリッジ(ゆかいな音楽一家)』とも呼ばれた)にも楽曲を提供。映画『テンダー・マーシー』(1983年)では、ベティ・バックリーが歌う「Over You」がアカデミー賞歌曲賞にノミネートされた。
さらに、モンキーズのドレンツやデイビー・ジョーンズと共に「Dolenz, Jones, Boyce & Hart」としてツアーを行い、1980年代のモンキーズ再ブームの一翼を担った。
音楽との出会いと原点
ボビー・ハートこと本名ロバート・ルーク・ハーシュマンは、アリゾナ州フェニックスの牧師の家庭に生まれた。幼少期からピアノやギターを習い、学生時代にはアマチュア無線局を立ち上げるほどの熱意を持っていた。
高校卒業後、米陸軍予備役を経て、1950年代後半にロサンゼルスへ渡った。DJを志すも作曲家に転向し、「Hurt So Bad」(リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズ、のちにリンダ・ロンシュタットがカバー)などを手がけてヒットを飛ばした。
その後、作曲家トミー・ボイスと出会い、共作「Come a Little Bit Closer」(ジェイ&アメリカンズ)が全米トップ10入り。やがて音楽プロデューサーのドン・カシュナーに見出され、モンキーズのために「恋の終列車」(原題: Last Train to Clarksville)やテーマソング『(Theme From) The Monkees』を提供することとなる
↓リンダ・ロンシュタット「Hurt So Bad」カバー
遺産と影響
ハートとボイスの楽曲は、ディーン・マーティンからセックス・ピストルズまで幅広いアーティストにカバーされ、ポップスからパンクまで音楽シーンに大きな影響を与えた。
トミー・ボイスは1994年に他界したが、2人の功績は2014年公開のドキュメンタリー映画『The Guys Who Wrote ’Em』で再評価された。ハートは2度結婚し、最後の妻は歌手のメアリー・アン・ハート。最初の結婚で2人の子をもうけた。
ボビー・ハートは、モンキーズを世界的スターに押し上げたヒットメーカーであり、アメリカンポップスの黄金期を象徴する作曲家であった。その音楽は今も世代を超えて愛され続けている。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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