Netflix『第10客室の女』原作者が語る制作裏話「セットもキーラ・ナイトレイの演技も原作に忠実だった」

キーラ・ナイトレイ、『第10客室の女』より 写真:Parisa Taghizadeh/Netflix
キーラ・ナイトレイ、『第10客室の女』より 写真:Parisa Taghizadeh/Netflix
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ルース・ウェア原作、サイモン・ストーン監督による映画『第10客室の女』がNetflixで配信開始された。本作はキーラ・ナイトレイが主演を務め、ガイ・ピアースハンナ・ワディンガム、アート・マリク、ググ・ンバータ=ロー、カヤ・スコデラーリオダニエル・イングスらが出演している。

この映画の制作中、ウェアは同時期に続編小説の執筆にも取りかかっていた。読者から「主人公はその後どうなったのか?」と繰り返し質問を受けたことから、ウェアは続編執筆を決めたという。

続編の『The Woman in Suite 11(原題)』では、『第10客室の女』の主人公であり、母親として新たな人生を歩み始めたジャーナリストのローラ(ロー)・ブラックロックが再登場する。億万長者が所有するスイスの高級ホテルで開かれた記者会見に出席したローは、億万長者の部屋に呼び出される。そこである女性から「死の危機が迫っている」と告げられ、再び危険な旅に出ることになる。

ウェアは米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに応じ、『第10客室の女』映画化の経緯や本作のテーマ、そして続編小説について語った。


紆余曲折だった映画化の道のり

――Netflixで『第10客室の女』が映画化された経緯を教えていただけますか?最初から企画に参加されていたのでしょうか?

映画化まではかなり長い道のりでした。まず2016年に映像化権を取得したのは別の会社でした。その後、契約更新されたり、あちこちの会社を転々としたりして、最終的にNetflixが引き受けてくれたのです。しかし、それから2年ほど音沙汰ありませんでした。キーラ・ナイトレイがロー役に決まったという連絡を受けるまで、映像化が実現するとは思いませんでした。

映画化が正式に決定したという連絡を受けた時、実は続編『The Woman in Suite 11』の執筆中でした。この時は2種類のファン層を意識して執筆していました。前作『第10客室の女』の読者と、続編から手に取ってくれる読者です。しかし映画化が決まり、「3つ目のファン層が生まれた」と感じました。

映画の制作には関わっていなかったので、どのような撮影が行われているのか、制作がどこまで進んでいるのかなどはまったく知りませんでした。

――脚本を読んだり、監督や脚本家とストーリーについて相談したりはしましたか?

脚本がほぼ完成した頃に読ませてもらいました。ある意味、それで良かったと思っています。それがきっかけで、続編小説を映画と切り離して完成できたからです。映画ではいくつか原作からの変更点がありました。例えば、原作では生き残る人が映画で死んでしまったりします。原作と映画には共通点もありますが、作品としてはまったく異なるものになっており、原作と映画は「いとこ同士」と言えるでしょう。

もし私が映画制作に関わっていたら、あらゆる点を考慮しなければなりませんでした。私がもっと意見を言うこともできましたが、このプロジェクトに関わる人たちは信頼できると感じました。

キーラ・ナイトレイとガイ・ピアース、『第10客室の女』より 写真:Courtesy of Netflix
キーラ・ナイトレイとガイ・ピアース、『第10客室の女』より 写真:Courtesy of Netflix

著者が語る、原作と映画の違い

――撮影現場に立ち会えましたか?ご自身の物語に命を吹き込まれるのを見て、どう思いましたか?

撮影現場には何度か足を運んだのですが、本当にすばらしかったです。特に船を見学した時は最高でした。実は、クルーズ船に乗ったことが一度もなかったんです。しかし、原作の世界観がここまで正確に再現されていることに驚きました。船中の階段も、スワロフスキーのシャンデリアも想像通りでした。キャビンの細部もこだわって再現されており、原作の描写に忠実だと感じました。

――映画化作品ではオリジナル要素が加えられることも多いですが、想像通りだったシーンや、予想と異なっていたと感じるシーンはありましたか?

映画で特に印象に残ったシーンは2つあります。1つは、ローがプールに突き落とされるシーンです。映画ではローが自ら船から飛び降りますが、これは原作と異なります。プールのシーンは緊迫感を与えており、観ていて本当に楽しく、同時に恐怖も感じました。

また、結末も原作と映画で異なります。ローは正義を果たしますが、その方法がまったく異なるのです。原作ではもっと紆余曲折があります。しかし、ローが信念を貫き、彼女の正しさが証明されるシーンはとても気に入っています。

一方で想像通りだと感じたのは、ローがバルコニーに出て、死体が船外に投げ出された時の水の音を聞くシーンです。私が原作を書いている時にイメージしていた音と、まったく同じだと感じました。

――ロー役のキーラ・ナイトレイについてどう思いましたか?彼女とキャラクターについて何か相談しましたか?

キーラが出演するという知らせを受けた時、最初に思ったのは「想像以上にローが美人だ」ということです。ローはごく普通の女性で、驚くほど美人というイメージは持っていませんでした。しかし、キーラが出演する『ブラック・ダヴ』(2024年)をNetflixで観て、彼女はきっとすばらしい演技をしてくれるだろうと感じました。

キーラ・ナイトレイ、Netflixシリーズ『ブラック・ダヴ』より 写真:Netflix
キーラ・ナイトレイ、Netflixシリーズ『ブラック・ダヴ』より 写真:Netflix

実際にキーラはローを完璧に演じてくれました。弱さと同時に強さも感じられ、最後までやり遂げようとする不屈の精神も表現されています。

――原作はかなり前に出版されており、映画で初めてこの作品を知る方もいるでしょう。Netflixで本作を知る新しいファンには、何を感じてもらいたいですか?

この小説を書いた理由の一つは、「言った、言わない」と証言が対立するニュースが多かったからです。特に、SNSなどでは若い女性の証言は信頼性が低いとして扱われ、その事実に私は憤りを感じました。

しかし、若い女性だからといって、物事を直視して真実を伝える能力がないわけではありません。この憤りは原作と映画から伝わると思いますし、映画を観た人にも伝わることを願っています。

10年ぶりの続編はホテルが舞台!続編誕生の背景

――続編小説『The Woman in Suite 11』で、およそ10年ぶりに『第10客室の女』の世界が帰ってきます。今この続編を出そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

実は、読者のおかげなんです。私が他の作品の出版記念ツアーを行った時も、読者から最も多く質問を受けたのが『第10客室の女』の登場人物について「彼らはあの後どうなったの?」というものでした。ローはすでに正義を果たして休息に入ったので、もう何も書くことはないと思っていました。

しかし出版から約10年が経った現在、私自身も人間として、そして作家としてさまざまな変化を経て、子供たちも成長しました。そこで、『第10客室の女』の登場人物たちもこの10年でどう変わったのか、あの船で起こった事件とどう向き合ってきたのか、興味が湧いたのです。そして突然、高級ホテルを舞台にした続編のアイデアが浮かびました。

ホテルは最上のおもてなしを受ける場所である一方、最大の恐怖を感じる場所でもあります。私はよく一人旅をするのですが、ホテルの見知らぬ部屋で夜中に目が覚めると、電気のスイッチやスマートフォンがどこにあるのかとっさに分からなくなります。部屋の外から足音が聞こえるだけで心臓が高鳴り、恐怖を感じます。

しかも、ホテルのスタッフは全部屋の鍵を持っていますから、入ろうと思えば入ってこられますよね。そう考えると、ひどく無防備だと感じます。ホテルの「豪華さ」とそこで感じる「不安」という二項対立が実に興味深く、殺人事件のプロットが浮かんだんです。

――あるインタビューで、『ウェアさんの物語のアイデアは自身の恐怖に根ざしていると読みました『第10客室の女』シリーズで描きたかった恐怖とは何でしょうか?

ホテルの部屋では無防備になるというのもその一部です。そこはプライベートな場でも公共の場でもない、あまり心が落ち着かない場所です。また、続編のプロットの大部分は、ローが子どもたちを置き去りにしてきたという事実が軸になっています。

『第10客室の女』で彼女はかなり無茶なことをしますが、それは自分以外に心配すべき人がいなかったからです。しかし続編では、彼女はあらゆる危機を乗り越え、無事に子どもたちの待つ家へ帰らなければなりません。それがこの続編の核心にある恐怖です。

キーラ・ナイトレイ、『第10客室の女』より 写真:Parisa Taghizadeh/Netflix
キーラ・ナイトレイ、『第10客室の女』より 写真:Parisa Taghizadeh/Netflix

――小説『第10客室の女』では、女性の意見がいかに軽視されているかを描いています。また、ジャーナリストに対する社会的な不信感も掘り下げています。同じような困難に直面しながらも進み続ける彼女を、続編ではどのように描こうと考えましたか?  

続編を書くために『第10客室の女』を読み返して強く感じたのは、ローが皮肉っぽく、面白く、そして大胆な人だという点です。さらにもう一つ思い出したのは、彼女はややメサイアコンプレックス(※)を持っているということでした。ジャーナリストとしての役割ゆえに、問題を人任せにできないのだと思います。

続編でもローは助けを求める人に遭遇し、責任を果たそうとします。『第10客室の女』とはまったく異なる形で、同じ問題に直面するのです。逃げるべきだと思っても、助けを求めている人がいると彼女は逃げられません。このシリーズは、闘志を抱くローという女性の、光と闇の両方を描いているのです。

(※メサイアコンプレックス:自分が他者にとっての救世主であるという願望)

――ウェアさんの他の映像化作品としては、ドラマ『ライイング・ゲーム もうひとりの私』(2011~2012年)が放送され、『The Turn of the Key(原題)』(2019年出版)や『In a Dark, Dark Wood(原題)』(2015年出版)も映像化企画が進行しています。映像化の制作には参加されましたか?

はい。最近ではAmazonとテッド・ゴールド(『ライイング・ゲーム もうひとりの私』のプロデューサー)と話し合いを進めています。どちらの作品が先に完成するか分かりませんが、皆さんも予想しながら待っていてください。


※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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