セバスチャン・スタン、トランプ再選後の米国に危機感「笑い話では済まされない」
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』でドナルド・トランプを演じたセバスチャン・スタンが、第79回カンヌ国際映画祭で現在のアメリカ社会への危機感を語った。主演作『Fjord(原題)』の会見では、言論や価値観の分断を巡る発言にも注目が集まった。
セバスチャン・スタン、トランプ再選後のアメリカ社会に危機感
セバスチャン・スタンは13日、カンヌ国際映画祭で行われた『Fjord』の公式会見に出席。前回カンヌを訪れた際は、2024年米大統領選を前にした『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』のプロモーションだったが、今回は状況が大きく変化している。
会見では、トランプ大統領への認識がこの1年でどう変わったかを問われたスタンが、険しい表情で「笑い話では済まされない」と発言。「メディアの統合、検閲、脅迫、終わりの見えない訴訟などを見れば、私たちは本当に危険な状況にいる」と語った。
さらに、『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』製作時にも強い圧力を感じていたと明かし、「映画祭の3日前まで、本当に上映できるのか分からなかった」と振り返った。
『Fjord』が描く“価値観の衝突”
『Fjord』でスタンが演じるのは、ノルウェーで暮らすルーマニア系キリスト教徒の父親ミハイ。保守的な価値観を持つ一家と、進歩的な児童保護制度との対立を描く作品で、宗教の自由や言論の自由を巡る議論を呼んでいる。
監督は『4ヶ月、3週と2日』で知られるルーマニアの名匠クリスティアン・ムンジウ。作品は実際の報道をもとに構想され、移民家庭の子どもが当局によって親から引き離されたケースなどを参考にしたという。
ムンジウ監督は、「伝統的価値観と進歩的価値観の衝突は、現代社会における最重要テーマの一つ」と説明。「人々は互いを理解しようとしなくなり、社会は深く分断されている」と語った。
また、「価値観は押し付けるものではなく、説得によって共有されるべきだ」とも訴えている。
スタン、自身のルーツとも重なる役柄
ルーマニア生まれのスタンにとって、『Fjord』は個人的にも特別な作品だったという。幼少期に母親とともにウィーンへ移住し、その後アメリカ・ニューヨーク州で育った彼は、「混乱の中で祖国を離れた」と回想。「映画を通してルーマニアを学び直している」と語った。
撮影にあたっては、共演のレナーテ・レインスヴェとともにペンテコステ派教会を訪問。自身も伝統的なルーマニア文化の中で育ったことから、脚本に描かれた家族観には深く共感できたという。
さらに、恋人アナベル・ウォーリスとの間に第1子を授かったことを公表したばかりのスタンは、「親になることとは何か、今の時代に子どもを育てるとはどういうことかを考えている」と明かした。
「映画は問題を解決しなくてもいい」
会見終盤では、差別や分断に対して俳優として何ができるのかについても言及。「自分は前線に立つ人間ではない」としつつ、「映画を通して議論を生み、多様な視点を提示することが自分の役割だと思っている」と語った。
また、「芸術は問題を解決する必要はない。ただ、問題を正しく映し出すことが重要だ」という言葉を引用し、「恐れずに作品を作り続けることで、社会に対抗できる」と締めくくった。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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