『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』好調スタートの裏側――『スター・ウォーズ』シリーズの未来を徹底分析
『スター・ウォーズ』シリーズ7年ぶりの劇場公開作となる『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』が、ついに日米同時公開を迎えた。その興行収入は早くも好調な滑り出しを見せている。
しかし、それが『スター・ウォーズ』ブランドの支柱となるかどうかは、また別の問題だ。本記事では、話題の『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』と『スター・ウォーズ』シリーズについて、興行面から掘り下げていく。
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』好発進!シリーズの支柱となるか
『マンダロリアン・アンド・グローグー』のヒットについて、ディズニー関係者は自信を見せている。一方で、現在の『スター・ウォーズ』シリーズに物足りなさを感じるコアファンは多い。新たなファン層を取り込めなければ、ブランドイメージを損なう可能性もある。
公開から4日間の世界興行収入は、1億6,000万〜1億7,000万ドル(約255億~271億円)を超えると予測されている。これは、2018年公開の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のオープニング成績(世界興収1億4,800万ドル)を超える数字だ。
ただし北米に限れば4日間で9,500万〜1億ドル(約151億~159億円)程度にとどまる見通しで、『ハン・ソロ』が4日間で記録した1億300万ドルには届かないと見られている。
本作の製作費は、『スター・ウォーズ』映画としては比較的低予算に抑えられており、ルーカスフィルム買収後に製作された作品群の中では最も低い水準だという。とはいえ、決して安価ではない。マーケティング前の製作費はすでに1億6,500万ドル(約263億円)に達しており、世界規模のマーケティングに少なくとも1億ドル以上が投じられたと報じられている。
ディズニーの関係者によれば、ジョン・ファヴロー監督作品が黒字化するためには、世界興収で5億〜6億ドル(約796億~956億円)が必要だという。『ハン・ソロ』の最終世界興収は3億9,300万ドルに終わっている。
映画だけじゃない!“グローグー効果”がディズニー全体に波及
しかし、単純な興行収入の計算だけでは見落としがちな要素もある。それは、本作がディズニーにもたらす“波及効果”だ。
ディズニープラスのドラマ『マンダロリアン』シリーズ(2019年~)は、これまでに10億ドル(約1,593億円)以上の関連売上を生み出している。これは、『スター・ウォーズ』ブランド全体が1年間に生み出す収益と同程度だ。特にグローグー関連商品は、2021年と2022年に『スター・ウォーズ』関連の玩具の中で最高の売上を記録した。
『マンダロリアン・アンド・グローグー』によって、ディズニーはグローグー関連商品のさらなる売上増加を期待している。また、テーマパーク事業やVOD、ディズニープラスの収益にも好調をもたらすと見られている。

あるディズニー幹部はこう語る。「ディズニープラスへの波及効果は、当社にとって非常に重要です。この映画はいずれ配信され、数千万時間もの視聴時間を記録するでしょう。それだけでなく、ドラマ『マンダロリアン』シーズン1〜3の視聴にも好影響を与えるはずです。実際、すでに『マンダロリアン』だけでなく、『スター・ウォーズ』作品全体の視聴数が伸びています」
7年ぶりとなる『スター・ウォーズ』映画が、旧作の視聴を押し上げるのはある意味当然だろう。
『スター・ウォーズ』ブランドが抱える課題――ドラマ連発でコアファン離れ?
レビューに目を向ければ、『マンダロリアン・アンド・グローグー』はすでに『ハン・ソロ』を上回る観客評価を獲得している。批評家評価は賛否が分かれているが、映画レビューサイト『Rotten Tomatoes』の観客スコアは現在88%と好調だ。
同作は、13歳未満の子どもと55歳以上の男性層から特に強い支持を集めている。子どもたちは“ベビー・ヨーダ”ことグローグーに魅了され、ベビーブーマー世代は“宇宙版クリント・イーストウッド”のようなマンダロリアン(演:ペドロ・パスカル)のキャラクターが好評だ。そうした意味で、本作はファミリー層への訴求力を示していると言える。
近年はこうしたファミリー向けPG作品が興行シーンを席巻しており、驚異的なロングランを見せている。同作の木曜プレビューの興収は1,200万ドル(約19億円)だった。これは『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』や『プロジェクト・ヘイル・メアリー』と同程度の数字だ。
しかし、より大きな懸念点もある。本作を好意的に受け止めた観客の中にも、「良作ではあるが、『スター・ウォーズ』らしい壮大なスペースオペラの傑作ではない」と感じた人も少なくない。
2019年公開の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は、批評家・ファンの双方から厳しい評価を受けながらも、スカイウォーカー・サーガ完結編として、世界興収10億ドルを突破した。しかし、多くの観客は「結末を見届けたい」という思いで劇場へ足を運んでおり、映画の内容に失望した人も多い。
ドラマシリーズに目を向けても、『キャシアン・アンドー』(2022年~)や『マンダロリアン』1~2シーズンのように高く評価された作品がある一方、『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021年)、『オビ=ワン・ケノービ』(2022年)、『スター・ウォーズ:アコライト』(2024年)のように、厳しい批判を受けた作品も存在する。

マーベル作品の例でもわかるように、1本の失敗作だけでブランドが崩れることはない。しかし、厳しい評価を受ける作品が続けば、シリーズ全体の勢いを削ぐ危険がある。ディズニー前CEOのボブ・アイガーも、「『スター・ウォーズ』シリーズは少し多すぎたし、展開が早すぎた」と認めている。
映画館側から見ても、その感覚は同じだ。あるシネコン関係者はこう語る。
「劇場側から見れば、『マンダロリアン・アンド・グローグー』は“中程度の期待値”には到達しています。そもそも、本作が超メガヒットになると考えている人はほとんどいません。現在のファンの反応は、『スター・ウォーズ』が“終わりなきIP工場”に変わってしまった結果とも言えるでしょう。『スカイウォーカーの夜明け』後にしばらく映画制作を休止したのは、正しい判断でした。しかし、その間に7本もの実写ドラマシリーズを作り、一貫して高い評価を維持した作品はわずかでした」
一方、別の大手シアターチェーン幹部は「『マンダロリアン・アンド・グローグー』はファミリー層への訴求力が非常に強い。北米オープニングで1億ドル近くに到達する可能性も十分ある」と語り、前向きな見方を示している。
2027年公開『スターファイター』が『スター・ウォーズ』再生の鍵を握る
ディズニー内部からは、さらに別の意見も挙がっている。2027年公開予定の『スター・ウォーズ/スターファイター(原題:Star Wars: Starfighter)』こそが、本当の意味でフランチャイズの“試金石”になるというのだ。
これは、「『マンダロリアン・アンド・グローグー』は、あくまでディズニープラスの人気シリーズを映画化した作品にすぎない」という見方だ。
あるスタジオ幹部も、「あれは“マンダロリアンの映画”であって、新しい『スター・ウォーズ』映画とは言い難いです。新キャラクターもほとんど登場しないし、“スター・ウォーズ映画”という感じがしないのです」と語っている。
そして、「『マンダロリアン・アンド・グローグー』の成否の責任を誰が負うべきか」については、立場によって意見が分かれている。
本作は、前ルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディの下で企画が承認された。一方で、現在のルーカスフィルム共同責任者であるデイヴ・フィローニが共同脚本を担当している。彼はジョン・ファヴローとともに、『キャシアン・アンドー』を除くディズニープラスの『スター・ウォーズ』ドラマを主導してきた人物だ。
関係者によれば、ディズニー・エンターテインメント会長のアラン・バーグマン氏は、「どんな作品にも満足しないコアファン層が一定数存在する」と語る。これは『スター・ウォーズ』に限らず、7月に最新作が公開される『トイ・ストーリー』シリーズや、マーベル作品にも言えることだ。バーグマン氏によれば、同社の使命はあくまで「観客を楽しませる映画を作ること」だという。
『マンダロリアン・アンド・グローグー』の内容や成否はどうであれ、この後には『スター・ウォーズ/スターファイター』が控えている。
しかも主演は、今年『プロジェクト・ヘイル・メアリー』で批評・興行の双方で成功を収めたライアン・ゴズリングだ。彼を起用したことは、ディズニーにとって大きな追い風と言えるだろう。

ディズニー関係者によれば、『スター・ウォーズ/スターファイター』はすでに撮影を終え、現在は編集作業中だ。「シリーズの次なる展開について、明確な道筋があります。これは長期的に進めてきた戦略です」と彼は語る。
また、ある劇場チェーン幹部も、『スター・ウォーズ/スターファイター』こそが“新たな希望”になると見ている。「ライアン・ゴズリングは今回、スター・ウォーズ版『トップガン』とも言える作品を率いることになります。期待する理由としては十分でしょう」
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は全国の劇場で公開中。
※為替レートは2026年5月23日時点の数値で換算しています。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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