ホーム » NEWS » エミー賞、なぜ海外ドラマは対象外に?

エミー賞、海外ドラマを阻む時代遅れのルール 『ヒーテッド・ライバルリー』などが対象外に

/ /
エミー賞、海外ドラマを阻む時代遅れのルール 『ヒーテッド・ライバルリー』などが対象外に
『ヒーテッド・ライバルリー』など人気作がエミー賞候補にならなかった理由 画像:Illustrated by Brian Taylor
スポンサーリンク

『ヒーテッド・ライバルリー(原題:Heated Rivalry)』をはじめ、今シーズン話題を集めた海外ドラマの数々が、プライムタイム・エミー賞の候補から姿を消した。背景にあるのは、米国との共同製作などを条件とする現行ルールだ。世界中の作品が国境を越えて視聴される時代に、エミー賞の制度が取り残されているとの指摘が出ている。

『ヒーテッド・ライバルリー』がエミー賞の対象外になった理由

今年のエミー賞をめぐる大きな話題の1つは、そもそも賞レースに参加する資格を持たなかった作品だった。カナダで制作され、HBO Maxで配信された『ヒーテッド・ライバルリー』は、ドラマシリーズ部門の候補に選出されなかった。

『ヒーテッド・ライバルリー』海外版予告編

アイスホッケーを題材にした同性同士のロマンスを描く同作は、いわゆる“プレステージドラマ”とは異なる作品だったかもしれない。しかし、昨冬に世界的なブームを巻き起こし、新たなヒット作が少なかった今シーズンにおいて、その存在感は際立っていた。

主演のコナー・ストーリーは、わずか1年ほどで一躍注目を集めた。今年は『サタデー・ナイト・ライブ』での司会デビューにより、同番組への出演を通じてエミー賞候補にも選ばれている。

『ヒーテッド・ライバルリー』のエミー賞対象外という事実は、海外作品がテレビ界最大の祭典で評価される機会を失っている、より大きな問題を浮き彫りにしている。

米国が少なくとも共同製作に関わっていない作品は、原則としてプライムタイム・エミー賞ではなく、別に開催される国際エミー賞の対象となる。韓国ドラマイカゲーム』のように、米国との共同製作として扱われる作品は例外だ。

国際エミー賞も権威ある賞だが、プライムタイム・エミー賞と比べると、その注目度は大きく異なる。

『ムッソリーニ:サン・オブ・ザ・センチュリー』なども対象外に

この問題は、候補作の層が薄かった今年のリミテッド・シリーズ部門で特に際立った。

今年の候補には、『BEAST -私のなかの獣-』『全部、彼女のせい』『BEEF/ビーフ』の続編的シーズン、『ラブストーリー ジョン & キャロリン』、『欲望のセントルイス』などが並んだ。いずれもそれぞれの魅力を持つ作品だが、全体として見ると、競争を盛り上げるだけの厚みが十分だったとは言い難い。

一方、米国外で制作されたため候補入りできなかった作品には、今シーズンを代表するドラマも含まれていた。

『プライドと偏見』『つぐない』で知られ、アカデミー賞候補にもなったジョー・ライトが全8話を監督した『ムッソリーニ:サン・オブ・ザ・センチュリー(原題:Mussolini: Son of the Century)』は、その代表例だ。

イタリアで制作された同作は、ファシズムの台頭を描いた壮大なドラマ。昨秋、ストリーミングサービスのMubiで配信され、批評家から高い評価を受けた。

また、『アナザーラウンド』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したデンマークのトマス・ヴィンターベア監督も、今年のエミー賞で競う可能性があった映画人の1人だ。

ヴィンターベア監督の『ファミリーズ・ライク・アワーズ(原題:Families Like Ours)』は、2024年のヴェネツィア国際映画祭で初披露された後、Netflixが米国での配信権を取得。全7話の同作は、環境災害と、それに続く政治的危機を描いている。

Netflixほど世界的な配信網を持つサービスであっても、エミー賞の厳格なルールを乗り越えることはできなかった。

『ジ・アザー・ベネット・シスター』もエミー賞の対象外に

さらに、エミー賞は『ジ・アザー・ベネット・シスター(原題:The Other Bennet Sister)』という国境を越えたヒット作を評価する機会も逃した。

サラ・クイントレルが脚本を手がけ、ジャニス・ハドローの小説を原作とする同作は、『高慢と偏見』であまり描かれてこなかった妹メアリー・ベネットの人生を描くドラマだ。

英国で視聴記録を更新するヒットとなった後、米国では多国籍ストリーミングサービスのBritBoxで配信され、加入者数の大幅な伸びにもつながった。

BBCの米国部門で最高位の幹部を務めるロバート・シルドハウスは、最近『ハリウッド・リポーター』に「これまで手がけた中で最大の作品と言ってもいい」と語っている。

主演のエラ・ブルッコレリをはじめ、リチャード・E・グラント、インディラ・ヴァルマら実力派キャストが今年のエミー賞で評価される機会を失ったことは、賞そのものにとっても大きな損失となった。

エミー賞の統合協議が変化のきっかけに?

プライムタイム・エミー賞と国際エミー賞のどちらに作品を出品するかについては、必ずしもルールだけで決まるわけではない。戦略的な判断が関わるケースもある。

例えばNetflixは当初、『私のトナカイちゃん』をエミー賞の賞レースに向けて積極的にキャンペーンする予定ではなかったが、作品への高い評価が広がるにつれて方針を変えた。

一方、『ヒーテッド・ライバルリー』のように、ルールによって対象外となるケースもある。

ただし、制度が変わる可能性はある。

プライムタイム・エミー賞を管轄するテレビ芸術科学アカデミーと、国際エミー賞を管轄する国際テレビ芸術科学アカデミーは7月、両組織の統合について「探索的な協議」に入ったと発表した。

両組織が統合について協議するのは1977年以来初めて。もし実現すれば、長年続いてきた「米国作品」と「国際作品」の区分そのものが見直される可能性がある。

Netflixをはじめとする配信サービスによって、テレビ作品の視聴における国境はほとんど意味を持たなくなった。世界各国の作品が同じプラットフォームで並び、国籍を意識せずに視聴される現在、賞の側もその変化に対応することが求められている。

その先例となっているのがアカデミー賞だ。近年は英語以外の作品が作品賞候補に選ばれる機会も増えており、ブラジルの『アイム・スティル・ヒア』や『シークレット・エージェント』、フランスの『落下の解剖学』、韓国の『パラサイト 半地下の家族』など、世界各国の作品が評価されてきた。

『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督は、2020年のゴールデングローブ賞授賞式で、字幕という「1インチの壁」を越えれば、より多くのすばらしい映画に出会えるという趣旨の発言をしている。

その言葉は、映画だけでなくテレビにも当てはまる。エミー賞もまた、国境を越えて評価されるべき作品を、より広く受け入れる時期に来ているのかもしれない。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

【関連記事】

スポンサーリンク

類似投稿