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『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督にインタビュー「ヒンドの物語を届けなければならない」ガザから救いを求めた6歳少女の声を世界へ

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『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
来日したカウテール・ベン・ハニア監督
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パレスチナ・ガザ地区から助けを求めた6歳の少女。その救出に懸命に向き合った人々を描いた実録ドラマ『ヒンド・ラジャブの声』が9月4日(金)より劇場公開される。

ハリウッド・リポーター・ジャパンは、初来日したカウテール・ベン・ハニア監督に、単独インタビューを実施した。

2024年1月29日。人道支援組織「赤新月社」のスタッフは緊急電話を受けた。 パレスチナ・ガザ地区で6歳の少女が助けを求めている。 スタッフたちは少女との通話を繋ぎ止めながら、救出するためにあらゆる手を尽くす…。少女の名前はヒンド・ラジャブ。

【動画】『ヒンド・ラジャブの声』本予告|9月4日(金)公開


本作を手がけたのは、『皮膚を売った男』(2020)や『Four Daughters フォー・ドーターズ』(2023)などで国際的な評価を受けるチュニジア出身のカウテール・ベン・ハニア監督。

市民が乗った車が占領軍の銃撃を受け、親族の遺体に囲まれながら、ひとり生き延びた6歳の少女ヒンド・ラジャブ。パレスチナ赤新月社に助けを求めた実際のヒンドの音声を使用し、フィクションとドキュメンタリーの境界を越えて当時の出来事を鮮明に描き出していく。

単独インタビューでは、実際のヒンドの音声を軸にした理由、パレスチナ人俳優のキャスティング、そしてヒンドの声を世界へ届ける思いについて語ってくれた。

さらに、8月18日に東京・新宿武蔵野館で開催された先行上映会&トークイベントの模様とともに、ベン・ハニア監督が語った本作への思いや日本の観客に向けたメッセージを紹介する。

ガザから届いた6歳の少女の叫び

――インターネットで偶然ヒンド・ラジャブの音声を耳にしたそうですが、本作を制作しようと思った原動力は何だったのでしょうか。

カウテール・ベン・ハニア監督(以下、ベン・ハニア):ヒンドの声を初めて聞いたとき、どうすることもできない無力感を覚えました。その感情を抱えたまま何もしないでいることができなかった。彼女の声を忘れたり、目を背けるのではなく、きちんと向き合って、自分にできることをしようと思いました。私にできるのは映画を作ること。その思いが、本作を作る原動力になりました。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
『ヒンド・ラジャブの声』 写真: ©MIME FILMS — TANIT FILMS

――俳優たちは撮影本番で初めてヒンドの実際の音声を聞いたそうですが、このような撮影方法を選んだ理由を教えてください。

ベン・ハニア:これまでの作品では、何テイクも重ねながら俳優たちと芝居を作り上げていく過程を大切にしてきました。しかし今回は、ヒンドの実際の声を初めて耳にした俳優たちの反応に、演出を加えるべきではないと感じたのです。そこで、彼らの反応をありのまま捉えるため、ドキュメンタリーに近い手法で撮影しました。

俳優たちは撮影本番までヒンドの実際の音声を一度も聞いていません。演じるのではなく、初めて耳にする彼女の声に自然に反応してもらいました。私は、その瞬間に生まれたリアルな反応をカメラに収めることに徹したのです。この方法でなければ、ヒンドの物語を真実に迫る形で描くことはできなかったと思います。

――演出は加えなかったとのことですが、撮影前に俳優陣とはどのような話し合いをされたのでしょうか。

ベン・ハニア:キャスティングでは、パレスチナ人であること、俳優としての実力、そして実在の人物に似ていることを重視しました。最初の話し合いで「役を演じる心の準備はできているか」を一人ひとりに確認しました。重い感情と向き合う作品になることが分かっていたからです。

俳優たちには、それぞれ演じる本人に会う機会を作りました。興味深かったのは、外見だけでなく性格まで似ていたことです。オマールは社交的でエネルギッシュな方ですが、彼を演じたモタズ・マルヒースにもどこか通じるものがあり、その偶然には驚かされました。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
『ヒンド・ラジャブの声』 写真: ©MIME FILMS — TANIT FILMS

演技へのアプローチについては、先ほどお話ししたように「演じる」のではなく、初めて耳にするヒンドの声に自然に反応してほしいと伝えました。撮影中も私からカットをかけることはせず、もし感情的に限界を感じたら、俳優自身の判断で撮影を止める。そうした形で、一人ひとりの感情を尊重しながら撮影を進めました。

「ヒンドの物語を世界へ届けなければならない」撮影現場を支えた使命感


――俳優たちにとって精神的にも過酷なシーンが続いたと思いますが、現場ではどのように心のケアをされていたのでしょうか。

ベン・ハニア:撮影中はできるだけこまめに休憩を取りました。エキストラを含め出演者全員パレスチナ人を起用しています。それぞれがガザでの占領にまつわる経験や物語を抱えていたため、決して他人事ではありませんでした。

チュニジアでパレスチナ赤新月社のオフィスを再現したセットを組み、撮影を行いました。限られた空間で少人数の撮影だったこともあって、現場には強い連帯感が生まれました。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
『ヒンド・ラジャブの声』 写真: ©MIME FILMS — TANIT FILMS

私たちが繰り返し確認したのは、「どれほどつらくても、私たちは特権的な場所にいる」ということです。パレスチナを離れ難民として暮らしている人もいますが、少なくとも今いる場所ではガザで起きているような状況には直面しません。

アーティストとして映画を作ることも一つの特権です。だからこそ、立場を生かしてヒンドの物語を世界へ届けなければならない。この使命感が撮影を続ける大きな力になりました。


――冒頭でラヤンとの通話が切れた直後に、オマールがショックでしばらく動けなくなるシーンが衝撃でした。セリフは実際の音声を一言一句忠実に再現したとのことですが、オマールの反応も実際の出来事に基づいているのでしょうか。

ベン・ハニア:俳優たちはそれぞれが演じる本人と実際に会い、対話を重ねながら関係を築いていきました。その中で、仕草や話し方や細かな特徴まで丁寧に捉え、役に反映してくれたのです。

オマールが完成した本編を初めて観たとき、モタズの演技に「まるで自分を見ているようだ」と感じたそうです。それほど忠実に人物像を捉えていたからこそ、あの場面で見せる反応も、実際のオマールに非常に近いものになったのだと思います。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督
『ヒンド・ラジャブの声』 写真: ©MIME FILMS — TANIT FILMS

ヒンドとの通話音声は残されていましたが、実際に赤新月社のオフィス内でスタッフがどのように動き、どう反応していたのかまでは分かりません。そこで、当時その場にいたスタッフ全員に会い、どのように振る舞い、何を感じ、どんな反応をしていたのかを聞いていきました。彼らの記憶をたどりながら、当時の動きや感情を脚本に落とし込んでいったのです。本人たちの証言を重ねることで、より真実に迫る描写になっていったと感じます。

「これはフィクションではない」ヒンドの声が世界に問いかけるもの

――監督は以前、「ヒンドの事件を知らない人には、スリラー映画のように映るかもしれない」とお話しされていました。フィクションではなく実際に起きた出来事であることを観客に伝えるために、意識されたことはありますか。

ベン・ハニア:まず最初に、実際に起きたことを時系列に沿って一つずつ書き出していきました。それだけを読めば、アメリカのスリラー映画の脚本のように見えたのです。しかし、これはフィクションではなく現実に起きたことです。だからこそ、ヒンドの物語をフィクションだと思われることには強い危機感を覚えました。

パレスチナの人々はまさにそのことに苦しんできたのです。ガザ地区やヨルダン川⻄岸で起きている現実をありのまま伝えても、「嘘だ」「誇張している」と否定されてきた。

だからこそ本作では、実際に起きた物語であり、聞こえてくるのはヒンド本人の声であることを明確に示す必要があったのです。俳優たちの表情や感情も、ヒンドの声を聞いて生まれた本物の反応です。そうした現実を一つひとつ積み重ねることで、「これはフィクションではない」という事実を観客に届けたかったのです。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
『ヒンド・ラジャブの声』 写真:©MIME FILMS — TANIT FILMS

スマートフォンの映像が登場する場面では、実在する本人たちを手前に、その背後に彼らを演じる俳優たちが見える構図にしました。またこのシーンでは途中でカットを挟まず、長回しのワンショットで撮影しています。その瞬間だけ、まるで時間が止まってしまったかのような感覚を表現したかった。

物語の終盤では、ヒンドの物語にまつわる実際の映像も取り入れています。現実の断片をさまざまな形で織り込むことで、スクリーンの中で起きていることが紛れもない現実であることを示したかったのです。

――ヒンドのお母様から彼女の性格や夢についてお話を伺ったそうですが、作品づくりにどのような影響を与えましたか。

ベン・ハニア:ヒンドとの最初の出会いは彼女の音声を聞いたときでした。そこにいたのは、「助けて、死んでしまう」と訴える幼い少女。決して子どもが置かれるべきではない、あまりにも過酷な状況でした。

そして二度目の出会いは、お母様のお話を通して知ったヒンドです。恐怖の中にいる姿とはまったく違う、笑顔あふれるごく普通の6歳の少女でした。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
『ヒンド・ラジャブの声』 写真: ©MIME FILMS — TANIT FILMS

劇中では、ニスリーンとのやりとりの中で、ヒンドが突然応答しなくなる場面があります。安否が分からない中、ニスリーンがガザの海について語りかけると、ヒンドが再び声を返してくれるシーンです。

以前からガザの人々にとって海が特別な存在であることは知っていました。封鎖された環境で暮らす彼らにとって、海は遠くまで開かれた自由を感じられる存在です。そしてヒンドも海が大好きで、「この状況が終わったら、早く海に行きたい」と話していたそうです。

お母様からは、ヒンドの写真もたくさん見せていただきました。ワンピースを着た愛らしい姿や、笑顔で生き生きとした表情。その一枚一枚から、生きる喜びにあふれた少女だったことが伝わってきました。だからこそ、恐怖の中にいるヒンドではなく、本来の笑顔で生き生きとした彼女の姿を観客の記憶に残したかったのです。

『ヒンド・ラジャブの声』先行上映会に初来日したカウテール・ベン・ハニア監督が登壇

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
8月18日に東京で開催された先行上映会に登壇したカウテール・ベン・ハニア監督、プロデューサーのナディム・シェイクルーハ 

カウテール・ベン・ハニア監督は8月18日、東京・新宿武蔵野館で開催された先行上映会に、プロデューサーのナディム・シェイクルーハとともに登壇。満席となった会場で、「ヒンドの声が届いたことに感動しています」と日本の観客へ喜びを伝えた。

上映後のトークイベントでは、作品を観たばかりの観客からの質問に答えながら作品に込めた思いを語った。

実際の赤新月社のスタッフについて質問が及ぶと、完成した脚本も彼らに送り、気になる点があれば意見を求めるなど、「制作の初期段階から深く関わってもらった」と説明。

本編を観てもらった際には、改めて意見を聞くなど制作の最後まで対話を重ねたという。さらに、俳優たちと彼らが演じたスタッフ全員が一堂に会する機会も実現。ハニア監督はその瞬間を振り返り、「とても感動した」と語った。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
先行上映会にサプライズ登場した古舘寛治

さらにイベントには、俳優の古舘寛治がサプライズで登場。試写で本作を鑑賞し大きな衝撃を受けたことを明かすと、「世界中の人に観てほしい映画」と絶賛した。

ベン・ハニア監督は、黒澤明監督の『羅生門』や小林正樹監督の『切腹』をお気に入りに挙げるほど日本映画通。敬愛する古舘の言葉に、「ヒンドの声が世界に、そして古舘さんの心にも届いたことを実感しました」と感激。「感動しすぎて言葉が出ません」と胸を詰まらせる一幕もあった。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監インタビュー
先行上映会に登壇したカウテール・ベン・ハニア監督

最後にベン・ハニア監督は、本作に込めた思いを改めて語った。

「日本には広島や長崎という大きな傷がある。その傷が世界中の人々の心に触れてきたように、ガザで今起きていることも、国や文化を超えて人々の心に届くものだと思っています」

そして映画が持つ力について、「映画監督としてすぐに世界を変えることはできないかもしれない。でも、一人ひとりがものの見方を少しだけ変えることはできる。それが最初の一歩になるのではないか」と語った。

さらに、「ヒンドの物語を観て感動して涙を流して終わるのではなく、何かを考え、そして行動するきっかけにしてほしい」と観客に呼びかけた。映画を通して一人ひとりの意識に変化をもたらし、その先の行動へとつなげてほしい。そんな力強いメッセージを日本の観客へ送り、トークイベントを締めくくった。

8月19日、イスラエル国防軍が声明を発表

なお、本インタビューおよび先行上映会後の8月19日、イスラエル国防軍はヒンドらが乗っていた車に発砲したことを初めて認め、事件について刑事捜査を開始するという声明を発表した。これまでイスラエル国防軍は、事件現場付近に部隊はいなかったとしていた。

この発表を受け、ヒンドの母ウィッサム・ハマダさんはInstagramでコメントを発表。「あまりにも遅すぎた一歩。しかし、正義への道のりはまだ始まったばかりです」とし、独立した透明性のある調査を求めている。

『ヒンド・ラジャブの声』チャリティT シャツ発売決定!

映画公開記念として、公開初日の9月4日(金)よりチャリティTシャツを発売することが決定した。

胸元にはヒンド・ラジャブさんの写真が大きくプリントされ、「私は忘れない。」というメッセージとともに、「ヒンドラジャブ事件/日時:2024年1月29日/場所:ガザ地区ガザ市テル・アル=ハワ」と本作が題材とする事件と彼女に起こったことについてなどが英語で記されている。

また、カウテール・ベン・ハニア監督が本作に託した「私たちは彼女の記憶を、静寂の中に消し去ってはならない」というメッセージも載せた。背面には、イスラエル軍によって彼女が乗っていた車に撃ち込まれた355発の銃弾をプリント。

この T シャツは、9月4日(金)から一部の上映劇場と配給元であるスターキャットアルバトロス・フィルムのオンラインショップ<albatros-film-shop>にて販売。売上の一部は、ヒンド・ラジャブさんのご家族に直接寄付される。

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
『ヒンド・ラジャブの声』チャリティT シャツ発売決定!

『ヒンド・ラジャブの声』公開記念 チャリティ T シャツ詳細

■商品概要
<黒 ワイドシルエット> サイズ: M / L 価格: ¥3,500(税込)
<赤 レギュラーシルエット> サイズ: L / XL 価格: ¥3,500(税込)
■発売日
9月4日(金)より
■発売場所(8/30までに決定分)
・9月4日公開の一部の上映劇場(新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺、伏見ミリオン座、アップリンク京都、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、札幌シアターキノ)
※9月5日以降に上映開始となる劇場での発売については、上映劇場へお問い合わせ頂くか、
映画公式X(https://x.com/Hindrajab_film)をご確認ください。
・オンラインショップ(albatros-film-shop)
9月4日(金)正午より発売開始
URL https://albatros-film.stores.jp/

【作品情報】

『ヒンド・ラジャブの声』

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督インタビュー
『ヒンド・ラジャブの声』 写真: ©MIME FILMS — TANIT FILMS

監督・脚本︓カウテール・ベン・ハニア『Four Daughters フォー・ドーターズ』(2023)『皮膚を売った男』(2020)
出演︓サジャ・キラニ、モタズ・マルヒース、アメル・フレヘル、クララ・フーリ
エグゼクティブ・プロデューサー︓ブラッド・ピット、ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラ、アルフォンソ・キュアロン、ジョナサン・グレイザー、マイケル・ムーア、スパイク・リー
2025年/チュニジア、フランス/アラビア語・英語/89分/シネスコ/5.0ch/
原題︓The Voice of Hind Rajab/日本語字幕︓松浦美奈/字幕監修︓高橋和夫/提供︓ニューセレクト/
配給︓スターキャットアルバトロス・フィルム/後援︓チュニジア共和国大使館
公式サイト︓hindrajabjp.com ©MIME FILMSーTANIT FILMS

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