米THRの批評家が選ぶ2024年の映画ベスト10 パルムドール受賞作『ANORA アノーラ』ほか
米『ハリウッド・リポーター』(THR)の批評家が、2024年の映画ベスト10を発表した。
1.『All We Imagine as Light』(パヤル・カパーリヤー監督)
ムンバイで共同生活を送る看護師の女性2人が、同僚の女性が育った海沿いの村へと移住する。場所の変化が3人の女性に心の平穏や連帯感をもたらしていく様子をクローズアップで収め、純粋な詩情があふれている。
2.『Queer/クィア』(ルカ・グァダニーノ監督)
第二次世界大戦後のメキシコシティを舞台に、ダニエル・クレイグ演じるゲイの男性が魅力的なアメリカ人青年(ドリュー・スターキー)との恋に溺れていく。夢のような雰囲気が漂うが、つながりや解放を渇望する描写は生々しく、リアルだ。2025年5月9日公開。
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3.『ブルータリスト』(ブラディ・コーベット監督)
ホロコーストを生き延びたユダヤ系ハンガリー人の建築家、ラースロー・トートの波乱万丈な人生を描く3時間半超えの超大作。エイドリアン・ブロディが圧巻の演技をみせており、長年映画製作において失われていた壮大さ、そしてテーマ的な重みを有している。2025年2月21日公開。
4.『墓泥棒と失われた女神』(アリーチェ・ロルヴァケル監督)
予知能力を持った英国人男性が、イタリアの小さな共同体で墓泥棒たちに協力する姿を描いた抒情的で奇妙な物語。迷信や神話といった要素の上をフワフワとした足取りで歩く本作は、生と死をつなぐ繊細な糸を紡いでいく。
5.『Hard Truths』(マイク・リー監督)
ロンドンに暮らす中産階級の女性、パンジー(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)は憂鬱な気持ちやトラウマを抱え、つねに怒りに駆られている。パンジーに思いやりを持って根気強く向き合うのは、美容師の妹ただ一人だった。リー監督の寛容さは観る者の視点を変え、主人公が鎧の下に抱える脆さへと誘う。共感というものが有する価値を深く考えさせられる1本だ。
6.『ANORA アノーラ』(ショーン・ベイカー監督)
カンヌ映画祭でパルムドール受賞した本作は、ブルックリンでセックスワーカーをしているアノーラが、ロシア新興財閥の息子と衝動的に結婚を決意するという一風変わったコメディー。ユーモラスながら、彼女の悲惨な経験や心優しい悪党の1人との交流が心に刺さる余韻を残している。2025年2月28日公開。
7.『Flow』(ギンツ・ジルバロディス監督)
セリフなし・音楽のみで展開される唯一無二のアニメーション作品。洪水によって半分以上が水没した奇妙な世界で、主人公の猫がカピバラやラブラドールなどの動物たちと信頼を築いていく。困難な時を乗り越えるには、お互いが必要であることを思い出させてくれる魅力的な寓話だ。2025年3月14日公開。
8.『I’m Still Here』(ウォルター・サレス監督)
軍事政権下のブラジルで起きた衝撃の実話を描く本作は、夫が行方不明になり、48歳で法律の学位を取得し不屈の活動家となった女性エウニセの物語。エウニセの晩年は、同監督の出世作『セントラル・ステーション』で記憶に残る演技をみせたフェルナンダ・モンテネグロが演じており、より胸を熱くさせる。
9.『Nosferatu』(ロバート・エガース監督)
ドイツの名匠F・W・ムルナウによる『吸血鬼ノスフェラトゥ』(’22)をリメイクしたゴシックホラー。鮮やかなビジュアル、壮麗な美術、そしてビル・スカルスガルドら俳優陣の圧巻の演技をじっくり堪能できる。グロテスクで美しいラストカットに、あなたも息を吞むだろう。
10.『リアル・ペイン~心の旅~』(ジェシー・アイゼンバーグ監督)
亡くなった祖母の故郷を訪れるため、ニューヨークに住むデヴィッド(アイゼンバーグ)といとこのベンジー(キーラン・カルキン)がポーランドへと向かうロードムービー。奇妙なユーモアから大きな悲しみに至るまで、様々な状況を軽やかなタッチで巧みに描き、印象的な深みと成熟さを備えた作品だ。
選外佳作:『ベイビーガール』、『チャレンジャーズ』、『ダホメ』、『Emilia Pérez』、『悪は存在しない』、『人間の境界』、『Nickel Boys』、『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』、『聖なるイチジクの種』、『Small Things Like These』
※本記事は英語の記事から抄訳・編集しました。翻訳/和田 萌
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