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クリストファー・ノーランが最新作『オデュッセイア』を独自解説!“真のテーマ”と映画哲学、映画批評への持論を明かす

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クリストファー・ノーランが最新作『オデュッセイア』を独自解説
クリストファー・ノーラン 写真:Josh Telles/PMC
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クリストファー・ノーラン監督の最新作『オデュッセイア』が北米などで公開され、大ヒットを記録している。そのノーランは中国でのプロモーション中に、とあるロングインタビューを受けた。

このインタビューは作品を中心に紹介するものではなく、映画芸術やその歴史、物語論、映画批評にまで踏み込んだ内容となった。世界的映画監督の一人であるノーランが、自身の創作哲学をここまで詳しく語る機会は少なく、このインタビューは注目を集めている。

中国の政治哲学講師・ポッドキャスターの鍾書(チョン・シュウ)氏を相手に、ノーランは『オデュッセイア』に込めた哲学や独自の映画術を語った。

クリストファー・ノーラン自ら『オデュッセイア』を解説!「文明の盛衰を描いている」

インタビューは英語で行われた。鍾氏は、ホメロスが古代ギリシャの吟遊詩人であったことになぞらえ、ノーランを「現代の吟遊詩人」と表現した。ホメロスの叙事詩が戦争や英雄を描いたのに対し、ノーラン版『オデュッセイア』は「文明の衰退や喪失を描いている」と分析した。

ノーランは「とても興味深い指摘だ」と応じ、ホメロスが描いた時代と、作品が成立した時代には約400年の隔たりがあることに言及した。

さらに、「ホメロスの時代の人々は、数百年前の文明を、『自分たちの時代より進んでいた』と考えていた」と説明。そのため『オデュッセイア』には「文明の盛衰が繰り返されるという発想が含まれている」と解説した。

またノーランは、青銅器時代の崩壊、具体的には「トロイア戦争とホメロスの時代の間に何が起きたのか」に強い関心を持ちながら、作品づくりを進めたという。

さらに、前作『オッペンハイマー』(2023年)にも触れ、「あの作品は、文明の終焉や世界の終わりを描いた映画だった。その感覚は『オデュッセイア』にも少なからず影響していると思う」と述べている。

『オッペンハイマー』より
『オッペンハイマー』 写真:Universal Pictures

ノーラン作品が映す“贖罪”とは――「それは観客が決めること」

続いて鍾氏は、ノーラン作品でたびたび扱われる「贖罪」というテーマについて質問した。「古代ギリシャやホメロスの叙事詩には『贖罪』の概念そのものが存在しない」とした上で、『オデュッセイア』にその要素を加えた理由を尋ねた。

ノーランは、「哲学的なテーマとして贖罪を意識していたわけではない」と説明。その代わりに重視したのは、「クセニア(客人へのもてなし)」という古代ギリシャの価値観だったという。映画ではこれを「ゼウスの掟」と表現し、「互いを敬意を持って扱うという考え方を軸に描いた」と語った。

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マット・デイモン(オデュッセウス役)、ゼンデイヤ(アテナ役)、『オデュッセイア』より 写真:Melinda Sue Gordon/Universal Pictures

またノーランは、青銅器時代の崩壊に関わる「海の民」の存在にも着目した。作中では、求婚者たちが「ゼウスの掟」を破ったことが、大きな悲劇につながった。ノーランはこの構図に興味を惹かれたという。

一方で、本作で「贖罪」のテーマを描いているかどうかについては、「それは観客が感じて決めるものだと思う」とコメント。「もし贖罪というテーマがこの作品にあるとしても、意図的にキリスト教的な要素を加えたわけではない。『ゼウスの掟』を掘り下げた結果として自然に生まれたものだ」と説明した。

ノーランが現代の映画批評をバッサリ!「物語は観客との対話」

続いて鍾氏は、『オデュッセイア』が「現代の価値観に合わせて、オデュッセウスの英雄像を再解釈しているのではないか」と質問。「本作は、英雄を弁護する物語なのか」と問いかけた。

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マット・デイモン(オデュッセウス役)、『オデュッセイア』より 写真:Universal Pictures/X

これに対しノーランは、映画批評に対する持論を展開した。「映画では、『観客が共感できるキャラクターに作り替えている』と批判されることがある。しかし、物語の仕組みを理解することと、その仕組みが機能しなくなることは別問題だ」

さらに、「これこそが現代の批評における真の問題点だ」とノーランは指摘する。ノーランは、「現代では『自分が受ける影響を理解できるような作品は、巧みな物語ではない』と考える人もいるが、物語とはそういうものではない」と語る。

そのうえで、英雄像を描く際には「作り手の意図」だけでなく、「観客が作品に持ち込む価値観」との相互作用が重要だと説明した。

「物語自体だけでなく、観客もエネルギーを発している。物語とは、常に観客との対話によって成立する

そのうえで、「現代社会では平等を重視する傾向がある。そのため、英雄の偉大さを描くには一定の“気遣い”が必要になることもある」と語っている。

ノーラン独自の映画術を明かす――ルールと“お約束”、その巧みな崩し方

インタビュー後半では、映画批評についてさらに持論を展開した。ノーランは、職業批評家ではなく、主にSNSなどで行われる「一般人による映画批評」を問題視していると説明。「プロの批評家は、映画が用いる物語の技法や演出の役割を理解している」と評価した。

この「技法」について、ノーランは「共通言語」と表して説明した。

「ハリウッド映画は約100年をかけて、“物語の共通言語”を築いてきた。その言語には一定のルールがあり、時には破ったり変化させたりすることもできるが、作り手は常にこの“言語”を意識しなければならない」

また、「トロープ(物語上の定番表現)」についても言及。「ある表現が観客にとって“お約束”になりすぎた場合、新しい形へ変えていく必要がある。一方で作り手は、観客が多くの映画を鑑賞し、『その文法を理解している』ことを前提に作品を作っている。作り手は、その共通言語を巧みに活用しながら、物語を組み立てている」と説明した。

こうした「仕組み」について、ノーランは自身の代表作『メメント』(2000年)を例に挙げた。

「『メメント』では時系列を逆転させたが、物語の基本構造はオーソドックスな三幕構成だった。斬新な要素を成立させるには、土台となる部分は観客に分かりやすくする必要がある。それもまた、物語づくりの重要な考え方の一つだ」とノーランは締めくくった。

『オデュッセイア』は日本で9月11日(金)に公開される。

※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。

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