殺人鬼×精神科医の心理戦!映画『ネファリアス』主演ショーン・パトリック・フラナリーにインタビュー

映画『ネファリアス』© NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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独房で繰り広げられる殺人鬼と精神科医の息を呑む心理戦を描く超話題のホラーサスペンス映画『ネファリアス』が、いよいよ5月30日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開される。

映画『ネファリアス』ポスター © NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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『ネファリアス』は2023年の全米公開後、熱狂的なリピーターを生み出し、米映画批評サイト「ロッテントマト」で驚異の観客スコア96%(2025年2月20日時点) を記録。圧倒的な支持を獲得し、“2023年最高のホラー”との呼び声も高い。

◆『ネファリアス』あらすじ

映画『ネファリアス』© NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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死刑執行予定の連続殺人犯エドワードの精神鑑定を行うため、刑務所に赴いた精神科医ジェームズ。前任の医師は鑑定結果の提出前に自死しており、“殺人鬼”の生死は今、ジェームズが握っている。

独房で異様な様子を見せるエドワードは、自分がネファリアスという“悪魔”であるとジェームズに打ち明け、「お前は今日、3件の殺人を犯す」と告げる。暗黒の福音を世界に伝える役目として、ジェームズを選んだという悪魔ネファリアス。対話を続けるうちに、精神科医が抱える秘密が、次第に明らかにされていく―――。

◆殺人鬼を熱演!実力派ショーン・パトリック・フラナリー

監督・脚本・プロデュースを務めたのは、チャック・コンツェルマンとケイリー・ソロモン。ダン・エンクロイド主演作『クモ男の復讐』など、30年以上に渡り映画界の最前線で活躍してきた最強コンビだ。

そして謎の“殺人鬼”エドワードを演じたのは、ノーマン・リーダス共演の映画『処刑人』シリーズで知られるショーン・パトリック・フラナリー。そして、精神科医ジェームズにはドラマ『グレイズ・アナトミー』や『BONES ―骨は語る―』のジョーダン・ベルフィが扮した。

以下、本作で2面性のある役柄を怪演したフラナリーが取材に応じ、製作の背景や役作り、そして代表作『処刑人』シリーズの新作などについて語った。

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ショーン・パトリック・フラナリー Photographer: Shawn Wilson
ショーン・パトリック・フラナリー Photographer: Shawn Wilson

――――――新作『ネファリアス』の脚本を読んだ第一印象はいかがでしたか?今作の設定はほとんど刑務所で、あなたの演技力に委ねている部分がたくさんあると思います。

僕が役者になるためにL.Aに車を走らせたとき、(ハリウッドの世界には)金字塔となるような脚本があることは知っていました。本作のような脚本は、そんな当時の僕をL.Aに車を走らせた理由の1つでもありました。もう1つは、90年代に『パウダー』という作品に出演した時も、そんな金字塔と言えるような脚本に出会ったんです。その脚本を読んだとき、「これは一生に一度の役なんだ 」と思いましたね。

そして今回『ネファリアス』の脚本を読んだときも、「誰がこの役を演じようとも(自分も含め)、一生ものの役だ」と感じたのです。俳優は住宅ローンを支払うために、多くの映画に出演します。家を出て、Craiglist(コミュニティーサイト)でルームメイトを見つけ、いつか今まで読んだどんな脚本よりも優れたA級脚本を手に入れられることを期待します。

本作のチャック(・コンツェルマン)とケイリー(・ソロモン)は、僕がこの業界で出会った中で最高の脚本家だと思っています。一音節たりとも変えないような脚本を読むことはめったにありません。彼らは『ネファリアス』でそのような脚本を書いたのです。彼らは、あの脚本を見事に書き上げました。

映画『ネファリアス』© NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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――――――撮影現場でチャック・コンツェルマンとケイリー・ソロモン共同監督は、どのように仕事を分担しているのでしょうか?

彼らは兄弟のようです。まるで以心伝心しているみたいです。1人が立ち止まると、もうひとりに何かを伝えるかのように頷く。見ていて驚かされます。意見が食い違うことはめったにありません。まるで1人の監督と仕事をしている感覚にさせられます。こんなことは見たことがないですね。競争がありません。どちらも他と争うことがないんです。

2人とも、2人の男とはとても思えないような方法でお互いを補い合っていて、僕自身は彼らとはこれが2本目の作品になります。(1度目は、映画『プリゾン・ヴァンパイア』という作品でタッグを組んでいる)

1作目の仕事が終わった際に、彼らに「2人とも大好きだ。『フルート・ループス(朝食の食べるシリアル)のコマーシャルを一緒に撮ろう?』と言われても、ふたつ返事で引き受けるよ」って言ったんです。彼らとの仕事が大好きになりました。

それから15年後、彼らから突如電話がかかってきて、「やぁ、『ネファリアス』というフルート・ルプースのCMがあるが、やってみないか?」と言われました。 だから、チャックとケリーのことをこれ以上高く評価することはできません。2人は人間的にも素晴らしいし、僕がこれまで一緒に仕事をした中で最高の脚本家でもあります。彼らはとても才能があり、個人的にはこの業界で他に類を見ないですね。

映画『ネファリアス』© NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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――――――あなたは当初、俳優ではなく作家(脚本家、舞台作家)になろうとハリウッドに来ました。映画『A Champion, Frank and Penalty(原題)』という作品で脚本を書いていますが、『ネファリアス』のような台詞に大きく依存する映画の場合、監督にどの程度意見を出したり、シーンの台詞を変えたりしたのでしょうか?

正直なところ、僕は10回中9回は自分の口から出る言葉をすべて変えています。でも本作では違います。冗談じゃなくて、本作ではわずか2つの単語を調整したくらいなんです。それだけです。

それ以外はすべて、彼らが(脚本に)書き留めてくれました。これは彼らの言葉なのです。それだけ彼らの脚本は優れています。読んでみて、これは最高の脚本のひとつだと思いました。いや、おそらく今まで読んだ脚本の中で最高のものだと思います。変える必要がなかったから、ほとんど何も変えなかったんです。

映画『ネファリアス』© NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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――――――あなたが演じたネファリアス/エドワードは、6人を殺害した連続殺人犯で、人を操る達人です。この役を演じるためにどのようなリサーチをしましたか?特に、彼の動きや笑い方、物腰などは連続殺人犯を参考にしたのでしょうか?

演技過程について他の俳優たちは、精神的にも肉体的にも大掛かりで複雑な手順を踏んでいると思いますが、僕にはそれがありません。僕の研究はすべて台本を読むことから始まります。脚本が十分な出来であれば、それはキャラクターの作り方の説明書のようなものだからです。私がやったことはすべて本の中に書いてあります。

まず台本を読んで、「よし、このタイプの人物のマナーはどうだろう?」と考えていきます。僕はただ選択し、実行しただけなんです。自分を拷問にかけるわけでもなく、ただ台本を読み、一言一言を信じて、彼がどんな話し方をするか考え始めます。どんな表情をするだろうか?彼の話し方はどうだろう?そうやって選択していきました。脚本上では、これ以上は説明できないほど丁寧に役柄が書かれていたのです。

映画『ネファリアス』© NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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――――――あなたのアクション演技は、映画全体を通して緊張感を持続させていました。あなたは若い頃、テコンドーに目覚め、ムエタイやブラジリアン柔術、空手を学びました。アメリカ以外の他の国で、俳優としてのキャリアを積むことを考えたことはありますか?そんなアクション技術があれば、日本など他の国で成功する可能性もあるかもしれません。

僕はどこであれ、良い映画に出演することには前向きです。でも、外国映画への出演を打診されたことはないんです。ぜひやりたいですね。僕は日本文化全体の大ファンです。アメリカは日本文化を通して多くのことを学べると思います。90年代に初めて東京を旅行したとき、ソーダの自販機がビールを出しているのを見たんです。地下鉄の中だったのですが、「ちょっと待てよ!」と思ったくらいです。

「10歳の子供でも酒を買いに行けるのか?」と僕は聞きました。すると、彼らは僕がおかしいというような顔をし、「未成年はビールを買えない」って。「でも、コインがあれば誰でも買えるじゃないか」と言うと、「誰もそんなことはしない」と言われました。僕は 「なんてこった、これは優等生制度なんだ 」と思いました。

アメリカでは、未成年者がビールを買うだけでなく、機械を盗むこともあります。日本人は彼らの文化において、とてもとても正しいことをしていると言わざるを得ない。アメリカ人が見習うべきことですね。

映画『ネファリアス』© NEFARIOUS MOVIE, LLC 2023. ALL RIGHTS RESERVED
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――――――さて、あなたの今後のプロジェクト、カルト的な人気を誇る新たな映画『処刑人』シリーズ第3弾について教えてください。

これは、僕とノーマン・リーダスが長い間本当に情熱を注いできたものです。リーダスとは95年からの付き合いで、映画を撮る前から知っています。彼はこの業界で最も親しい友人の1人で、パート3がパート1 よりも良いものになることを本当に楽しみにしています。

――――――本作は、とても興味をそそられるサイコ・スリラーです。『ネファリアス』から観客に何を感じ取ってもらいたいですか?

俳優として、僕は映画が好きなんです。子供ができる前、僕と妻がよく映画館に行ったときのようにね。映画の後に食事に行って、映画の話をするのが好きでした。良い映画でなければ、その会話は5分で終わります。素晴らしい映画だったら、2~3日続くこともあります。僕は、数週間や数ヶ月とは言わないまでも、2~3日続く会話を始めたかったんです。

異なる視点を提供するというアイデアが好きです。人は自分で決断する。本作には何か秘めた動機があるわけではないのですが、僕は本作について強い思いを感じているし、それが人々に影響を与えることを願っています。もしかしたら、本作が人々の心を良い方向に変えるかもしれません。

インタビュー取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki

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映画『ネファリアス』は5月30日(金)、シネマート新宿ほか全国順次公開。

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