マイケル・ジャクソンの歌声がスクリーンで復活!映画『Michael/マイケル』“ボーカル完全再現”の裏側
映画『Michael/マイケル』では、マイケル・ジャクソン役を実の甥であるジャファー・ジャクソンが演じ、外見や仕草、表情、ダンスの動きまで、マイケルの“再現度”の高さが公開前から大きな反響を呼んだ。特に高く評価されているのが「声」の再現度だ。セリフはすべてジャファー本人と、幼少期のマイケル役を演じたジュリアーノ・ヴァルディが担当した。
マイケルの特徴的な歌声を再現するためには、高度な音響編集が不可欠だった。制作チームは、撮影現場で収録したジャファーとヴァルディによるボーカルと、マイケル本人のボーカルを巧みに融合させた。
マイケル本人の声をどの程度使用するかは、シーンによって変化している。例えば、レコーディングシーンなどではジャファーの歌声が前面に出ているが、実際の録音が存在する場面ではマイケル本人の声が前面に出ている。
この“マイケルの歌声”をスクリーンによみがえらせた立役者が、本作で音楽スーパーバイザーを務めたジョン・ウォーハーストだ。ウォーハーストは『ボブ・マーリー:ONE LOVE』(2024年)、『ホイットニー・ヒューストン I Wanna Dance With Somebody』(2022年)、そして第91回アカデミー賞で録音賞・音響編集賞を受賞した『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)など、数々の音楽伝記映画を手がけている。
米『ハリウッド・リポーター』によるウォーハーストへの取材では、マイケルの歌声をどのように再現したのかが明らかになった。
“本物の声”を再現した映画『Michael/マイケル』――マイケル・ジャクソンの歌声が蘇る
――まず基本的なところからお聞きします。本作でマイケルの歌声はどのように再現したのでしょうか?
これまで数多くの音楽映画に携わってきましたが、ボーカルのアプローチにはいくつかの方法があります。その中でも最も効果的なのは、ライブミュージカルのように撮影する方法です。つまり、俳優が撮影現場で実際に歌うのです。ポストプロダクションでどう仕上げるかは、この段階ではまだ考えません。
録音を使用する場合はまず、「視覚的なキャンバス」のようなものが必要になります。強いパワーを持つ声なら、それに合った表情に乗せなければなりません。俳優は実際に楽曲を覚え、実在のアーティストと同じ力強さで歌い、パフォーマンスとして表現する必要があります。
こうしたシーンでは、レコーディングスタジオのように実際に録音することができます。俳優はヘッドフォンを装着し、目の前には大きなマイクが置かれます。アルバムのレコーディングをそのまま再現するイメージです。

次に重要なのは、音楽を流さない状態で、ライブテイクをできるだけ多く撮影することです。ライブシーンはレコーディングシーンとまったく異なり、「音以外の要素」が増えてきます。
スタジアムでのライブシーンとなると、もっと複雑になります。ジャファーは、ライブシーンでアドリブを多く加えていました。あれほど大規模なセットでは、地面が揺れるような感覚や、スタジアム全体が包み込まれるような空気感をしっかり作り上げる必要があります。
――つまり、彼らのボーカルをステム(個別のトラック)として収録するイメージでしょうか?
その通りです。ふさわしい「視覚的なキャンバス」と録音が揃ったポストプロダクションの段階では、ジャファーやジュリアーノのテイクが15〜20本、そしてマイケルのオリジナル録音が1本という状態になります。そこからブレンドの作業が始まります。
たとえば「今夜はドント・ストップ」のレコーディングシーンで、ジャファーはスキャットを披露しますが、実際のマイケルはスキャットをしていません。つまり、あの部分は完全にジャファー自身のものです。私はこれを「対話」と呼んでいます。
また、ジュリアーノが「帰ってほしいの」の冒頭を歌い、ベリー・ゴーディに「動きすぎだ」と止められるシーンがあります。もし最初のテイクからマイケルの声を使ってしまうと、最終テイクでも同じ声が流れ、コピーしただけのような印象になるでしょう。そこで、最初はジュリアーノの声だけを使い、2度目のテイクで徐々にマイケルの声を加えていきました。
ボーカル再現のプロセス――キャスト決定からポスプロまで
――これらの作業には、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?
作業はキャスティングが決まった時点から始まります。特に歌に関して、私はまず「声の力強さ」を重視しますが、それは2〜3週間で身につくものではありません。相当なボイストレーニングが必要です。
ポストプロダクションの段階でも調整は続きます。修正作業の連続で、あらゆる方法を試していきます。完成したと思った後に、「やはりこのシーンを再編集しよう」と言われることもあります。
――最終的には、マイケルのボーカルがベースとなり、ジャファーとジュリアーノがそれを支える存在という理解でよいでしょうか?
いえ、むしろ逆だと思います。まずジャファーとジュリアーノのパフォーマンスがあり、その上にマイケルの声が乗っているという感覚です。

――AIは使用していないのでしょうか?
はい。私はオーディオに関しては徹底的にこだわっています。最高の声を録音したうえで、イコライザーやコンプレッサー、リバーブ、ピッチ補正といった基本的な処理のみを行い、余計な工程はできるだけ省いています。AIツールは優れていますが、場合によっては不自然なノイズが発生することもあります。
――俳優自身のボーカルを使うのは、リップシンク(口パク)よりもはるかに手間がかかるのではありませんか?
完全に違和感のないリップシンクは不可能です。どれほど優れた俳優でも、大スクリーンで見れば、音と口の動きのわずかなズレは必ず観客に伝わります。
さらに、撮影では一度歌って終わりではなく、1日を通して何度も歌う必要があります。マイケルがツアーでステージに立つ場合に歌うのは一度だけですが、映画ではあらゆるカメラアングルに対応するため、俳優は同じ曲を20回以上歌うこともあるでしょう。そのすべてのテイクで、同じ緊張感を維持しなければなりません。
リップシンクに頼ると、口だけが動いているような不自然な印象になってしまい、パフォーマンスの質も下がりがちです。見た目の説得力が失われると、すべてが機能しなくなってしまいます。
『ボヘミアン・ラプソディ』との違いは“俳優の声”を活かすこと
――『ボヘミアン・ラプソディ』と比べて、プロセスに違いはありましたか?
「視覚的なキャンバス」を作るという点では非常に似ています。ただし、フレディ・マーキュリーと(フレディ役の)ラミ・マレックは声域が異なり、フレディはテノール、ラミはより低いバリトン寄りの声でした。そこで、フレディに似た声の歌手マーク・マーテルが加わり、声のギャップを補いました。

一方で、ジャファーとジュリアーノはマイケルに非常に近い声質を持っていたため、そのような補助は必要ありませんでした。特にジャファーはマイケルの実の甥なので、声域や音色も非常に近かったのです。この点は制作を大いに助けてくれました。「実際にスタジオでジャファーとジュリアーノの声を録音するか」どうかという議論は何度も行いましたが、最終的に実行に移りました。2人にはそれだけの歌唱力があったのです。
またそれ以上に、「観客が本作に何を求めているのか」という作品全体の方針も重要でした。本物のマイケルの存在を感じたいのか、それとも俳優だけで再現したものが観たいのか――作品によって答えは異なりますが、今回は「本物のマイケルの存在を感じてもらう」ことを選びました。
ポストプロダクションでも、「ジャファーとジュリアーノの声だけで成立するか」「マイケルの声を加えるべきか」という議論は何度も行われました。最終的には、シーンごとの一貫性を保つため、マイケルの声を使用する判断に至りました。
『Michael/マイケル』は日本で6月12日(金)に公開される。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。
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