スタジオジブリ、日本テレビの子会社化によって見通せる未来像とは

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日本テレビが、スタジオジブリの株式を取得して10月6日付で子会社化することが21日に発表された。両社が同日に取締役会を開き決議。日テレが議決権の42.3%を所有する筆頭株主となり、同社の福田博之専務執行役員が新社長となって経営を担う。

ジブリの鈴木敏夫社長は同日行った会見で、子会社化の最大の要因は後継者問題と説明。創業者の一人である宮崎駿監督の長男で常務取締役の吾朗氏を推したが、宮崎監督が拒否。吾朗氏自身も固辞したという。

鈴木氏は、古巣である徳間書店の徳間康快元社長とともに日テレの氏家齋一郎元会長を恩師として敬愛していることを公言。日テレはジブリの第1回作品である84年「風の谷のナウシカ」からほとんどの作品を同局系列でテレビ放送し、映画の製作には常に出資してきた。宮崎監督が引退を撤回までして作り上げた「君たちはどう生きるか」以降、ジブリが新たな方向性を見いだすための最適なパートナーになることが期待される。

一方で、その「君たちはどう生きるか」の製作がジブリの経営に与えた影響も少なくない。同作は製作委員会ではなく、ジブリの単独製作。宮崎監督作品は、作画が優に10万枚を超える。これをジブリのスタッフだけで賄うことはできず、作画協力としてスタジオ・カラー、プロダクションI.G.、スタジオ4℃など数多くの名だたるアニメスタジオが名を連ねている。制作には約7年を要した。その間、協力各社ごとに作画スタッフを一定期間雇用し続けることになるため人件費がかさむ。「直接製作費だけで50億円はいっているのでは」と指摘する映画関係者もいる。

同作は9月18日現在で興行収入81億6000万円を超える大ヒットとなっているが、仮に製作費が50億円だとすると配給会社との歩率によっては大きな利益は見込めない。キャラクターや東京・三鷹のジブリの森美術館など多角的なビジネスを展開しているため、これがすぐに経営を圧迫することにはならないが、本来はプロデューサーである鈴木氏から経営をバトンタッチし企業としての安定を目指す狙いもあるだろう。

一方で、ジブリは長く宮崎監督、高畑勲監督の両輪で日本のアニメーション界を牽引してきた。だが、高畑監督は18年に鬼籍に入り、宮崎監督も82歳となり次回作は見通せない。かつては95年「耳をすませば」で監督デビューした近藤喜文監督が後継者として期待されたが、98年に47歳の若さで急逝。その後、ジブリで経験を積み巣立っていったクリエイターはいるが、次なる「ジブリの顔」と呼べる存在は生まれていない。ここはテレビ、配信などプラットフォームを問わずアニメーションの制作は続けるとした鈴木氏の手腕の見せどころである。

取材/記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴⽊ 元

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