ホラー界の気鋭映画監督が選ぶ、“最恐”の名シーン6選 ― あの日本作品も!
■マット・ベティネッリ=オルピン&タイラー・ジレット(『アビゲイル』)
『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』(’08)の冒頭の侵入シーン
このシーンでは、誰もが息をするのを忘れている。背後に侵入者が現れた時、観客全員が息を飲み、彼女がブラインドを開けて窓の外で彼の姿を見た時には、全員が叫び声を上げた。
手持ちカメラによる長回しから、不気味な音楽、そしてリヴ・タイラーの完璧な演技まで、見事に構成されたシーンだ。それ以降、映画は観客の喉元を掴んで離さず、それまでのささやき声や私語は完全に消えた。
■リー・ワネル(『透明人間』)
『遊星からの物体X』(‘82)の血液検査シーン
血液検査のシーンは、私にとって恐怖の最高峰。カート・ラッセル演じる主人公は、火炎放射器でワイヤーを熱し、科学調査チームの全メンバーから採取した血液サンプルに突き刺していく。その反応によって誰が「生きもの」に乗っ取られているか判明するため、その緊張感は耐え難いものだ。
初めて観た時は画面から目を逸らさずにはいられなかったが、その後何十回と観ていても、いまだにその効果は健在である。
■ザック・クレッガー(『バーバリアン』)
『シャイニング』(‘80)の双子シーン
強い麻薬を初めて注射する時、誰もがその強烈な感覚を死ぬまで追い求めることになる危険性について警告する。私の場合は注射針からではなく、友人の家で観たレンタルVHSテープからその感覚を得た。
三輪車に乗った少年がホテルの廊下を走り、曲がり角を曲がると、そこには双子の少女が待ち構えている。電気ショックのような衝撃が全身を走った。時が止まったかのような純粋な恐怖。私はそれ以来ずっと、あのスリルを追い求め続けている。
■ロバート・エガース(『ウィッチ』)
『Whistle and I’ll Come to You』(‘68)のシーツのシーン
M・R・ジェイムズの原作をBBCが映像化した本作。最初に観たのは『ウィッチ』の公開後で、友人であり作曲家のロビン・キャロランから勧められた。40分間かけてジワジワと展開する静かな雰囲気のホラーは、おそらく映画史上最高のシーツのような幽霊と金縛りの表現へと導かれていく。私は、この作品を年に1回は見返している。
■パーカー・フィン(『SMILE スマイル』)
『回路』(’01)の空っぽのアパートのシーン
黒沢清監督は雰囲気と緊張感の名手だが、本作はその両方のゾッとするようなケーススタディになっている。矢部というキャラクターが空っぽのアパートを調べるシーンは、完全な静寂の中で展開する。やがて不穏な音が静寂を破ると、暗闇の中にいる女性の幽霊がぼんやりと見える。
その動きは海底を歩いているかのように、不自然で悪夢のよう。矢部は小さなソファの後ろに隠れるが、黒沢監督はまだ私たちを解放してくれない。幽霊がソファの上から覗き込むと、私たちは矢部とともに恐ろしい暗闇の中で叫び声を上げるのだ。
■スコット・ベック&ブライアン・ウッズ(『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』)
『マルホランド・ドライブ』(‘01)のダイナーのシーン
真昼のダイナー、仲間との会話。とても息苦しい雰囲気を作り出すものとは思えない。しかし、なぜパトリック・フィッシュラー演じる男が自分の恐ろしい悪夢を語り始めた瞬間から、一言一句に引き込まれてしまうのか?私たちは、映画の錬金術を目撃しているのだ。
悪夢が真実かどうかを確かめるため、ダイナーの裏へ歩いていく男。カメラは公衆電話を通り過ぎ、ゴミだらけの空き地へと移動する。そこには特別なものは何もないのに、鼓動は限りなく速くなっていく。そして…悪夢が姿を現す。これは史上最も恐ろしいシーンとして、私たちの神経組織の深くに刻み込まれている。デヴィッド・リンチに感謝を。
※本記事は英語の記事から抄訳・要約しました。編集/和田 萌
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